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人類の進歩⑦
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翌日も、私たちは掃除に勤しんでいた。
「…メアリちゃん、これどこまでやるつもり?俺様たち確かにお世話になってるし、その恩返しや宿賃のつもりでやる分には反対しないけどさぁ…。」
「もう根をあげるのか。」
「違うわ!この屋敷、やってもやってもきりがないって言いたいの!」
徐々に作業範囲は広げられているとはいえ、お屋敷の総面積を考えるとまだまだといったところだ。そのような状態で、一体どこまで続けるつもりなのだと、ロランさんは言いたいのだろう。
「考えてもみろ。俺様たちお尋ね者よ?いくら恩返ししたいって言ったって限度ってもんがあるだろ。このまま滞在させてもらう方が迷惑になるってのも、可能性として十分あり得る。」
「そうだな。」
「だーかーら、適当な所でお暇すんのがいいんじゃないのかってこと。どうなの?メアリちゃん。」
「…もう少し、もう少しだけやらせてください。おじさんとおばさんの思い出を、きれいにして残してあげたいんです。…完全に、私の自己満足なんですが。」
「んもーそういう優しいところも素敵っ!メアリちゃんたらいい子なんだから!」
「お前さっき言っていた内容忘れたのか?」
「黙ってろ!お前にはメアリちゃんの優しさってもんが分からねぇみたいだなぁ。」
「…気持ちは、分からないでもないが…。」
「いいんです。ピカピカにすることなんて、現実的じゃないことは分かっています。だから、もう少しだけ…。」
「…分かった。だが、それなりに覚悟することも必要だろう。」
「はい…。」
「いいのよーメアリちゃん。ギルの野郎はどうか知らないけど、俺様は最後まで付き合うからね!」
「だから分かったと言っているだろう。」
ぎゃいぎゃい言い合う二人を見ながら、静かにため息をつく。正直、ロランさんも心の底から納得はしていないだろう。こう言ってはいても、物事の損得をはっきりと見極める人だ。自分たちの身に危険が及ぶとなれば、早々に切り上げるよう説得してくるだろう。そこまでになったら、私だって食い下がったりせずに大人しく従うつもりだ。だが、それまでは…。
「まぁということは、だ。早いところ動いちまった方が、お互いの意見を満たせるってもんだ。さっさと片づけを進めて、恩返しをして、ここを後にする。そうだろ?」
「…そうだな。」
「…ここにいつまでも滞在できるわけではないことは、私も分かっています。まずは…、不要な物を寄せられるように庭を整備した方が、後々楽かと。」
「昨日と同じ感じで行こうか。」
「あぁ。」
「ちょっと!私を戦力外にしてませんか!?」
確かに私は二人よりも身長もないし力もないけど!
作戦会議もそこそこに主戦力から外されるのも堪えるんですけど!?
そういった必死の説得も虚しく、屋内の整頓に向かうのだった…。悔しい。
「…っと、うわここ、埃がすごい…。」
外の二人がせっせと草刈りを行っている間、少しずつ二階の部屋を回りながら掃除を進めていく。多少配置が違うだけで、どこも同じように物置のようになってしまっていたが、ある部屋に入ってみると、物の多さよりも埃の多さの方が気になった。
口元を覆いながら入ってみると、降り積もった埃の絨毯に私の足跡がくっきりと残った。他に足跡や物を動かしたような跡も見られないため、本当に立ち入ることもなく放置されていたというのは想像に易い。不用意に物に触れないように気をつけながら、部屋の奥に配置されている机に向かう。埃をかぶってしまっているランプは、近づくにつれて綺麗な花の模様が施されたシェードであることが見えた。
もしかしてここは、おばさんの部屋…?
そっと触れた机も、埃まみれでざらついている。艶のあるはずの化粧板もくすんでいるように見える。セットになっているイスの背後に立って部屋を見渡す。部屋に入る際に通ったドアの脇の壁には、おじさんとおばさんが寄り添って立つ小さな絵がかけられている。この絵、おばさんが私に嬉しそうに話してくれたから、よく覚えている。おばさんが想像する貴族って、屋敷に入ってエントランスの正面に家族の絵画を掲げているみたいで、昔からの憧れだったんだって。おじさんに小さなものでもいいからって頼みこんで、やっと描き上げてもらったんだって。でも、おじさんは恥ずかしかったみたいでたくさんの人が見るような場所に飾るのは禁止してた。この絵の中でだって、おじさんは居心地悪そうに口が歪んでいる。ニコニコしているおばさんとは正反対。
やっぱりここはおばさんの部屋なんだ…。おばさんが座っていたところを想像しながら視線を下げると、机の引き出しの一つがかすかに開いているのが目に入った。
「…メアリちゃん、これどこまでやるつもり?俺様たち確かにお世話になってるし、その恩返しや宿賃のつもりでやる分には反対しないけどさぁ…。」
「もう根をあげるのか。」
「違うわ!この屋敷、やってもやってもきりがないって言いたいの!」
徐々に作業範囲は広げられているとはいえ、お屋敷の総面積を考えるとまだまだといったところだ。そのような状態で、一体どこまで続けるつもりなのだと、ロランさんは言いたいのだろう。
「考えてもみろ。俺様たちお尋ね者よ?いくら恩返ししたいって言ったって限度ってもんがあるだろ。このまま滞在させてもらう方が迷惑になるってのも、可能性として十分あり得る。」
「そうだな。」
「だーかーら、適当な所でお暇すんのがいいんじゃないのかってこと。どうなの?メアリちゃん。」
「…もう少し、もう少しだけやらせてください。おじさんとおばさんの思い出を、きれいにして残してあげたいんです。…完全に、私の自己満足なんですが。」
「んもーそういう優しいところも素敵っ!メアリちゃんたらいい子なんだから!」
「お前さっき言っていた内容忘れたのか?」
「黙ってろ!お前にはメアリちゃんの優しさってもんが分からねぇみたいだなぁ。」
「…気持ちは、分からないでもないが…。」
「いいんです。ピカピカにすることなんて、現実的じゃないことは分かっています。だから、もう少しだけ…。」
「…分かった。だが、それなりに覚悟することも必要だろう。」
「はい…。」
「いいのよーメアリちゃん。ギルの野郎はどうか知らないけど、俺様は最後まで付き合うからね!」
「だから分かったと言っているだろう。」
ぎゃいぎゃい言い合う二人を見ながら、静かにため息をつく。正直、ロランさんも心の底から納得はしていないだろう。こう言ってはいても、物事の損得をはっきりと見極める人だ。自分たちの身に危険が及ぶとなれば、早々に切り上げるよう説得してくるだろう。そこまでになったら、私だって食い下がったりせずに大人しく従うつもりだ。だが、それまでは…。
「まぁということは、だ。早いところ動いちまった方が、お互いの意見を満たせるってもんだ。さっさと片づけを進めて、恩返しをして、ここを後にする。そうだろ?」
「…そうだな。」
「…ここにいつまでも滞在できるわけではないことは、私も分かっています。まずは…、不要な物を寄せられるように庭を整備した方が、後々楽かと。」
「昨日と同じ感じで行こうか。」
「あぁ。」
「ちょっと!私を戦力外にしてませんか!?」
確かに私は二人よりも身長もないし力もないけど!
作戦会議もそこそこに主戦力から外されるのも堪えるんですけど!?
そういった必死の説得も虚しく、屋内の整頓に向かうのだった…。悔しい。
「…っと、うわここ、埃がすごい…。」
外の二人がせっせと草刈りを行っている間、少しずつ二階の部屋を回りながら掃除を進めていく。多少配置が違うだけで、どこも同じように物置のようになってしまっていたが、ある部屋に入ってみると、物の多さよりも埃の多さの方が気になった。
口元を覆いながら入ってみると、降り積もった埃の絨毯に私の足跡がくっきりと残った。他に足跡や物を動かしたような跡も見られないため、本当に立ち入ることもなく放置されていたというのは想像に易い。不用意に物に触れないように気をつけながら、部屋の奥に配置されている机に向かう。埃をかぶってしまっているランプは、近づくにつれて綺麗な花の模様が施されたシェードであることが見えた。
もしかしてここは、おばさんの部屋…?
そっと触れた机も、埃まみれでざらついている。艶のあるはずの化粧板もくすんでいるように見える。セットになっているイスの背後に立って部屋を見渡す。部屋に入る際に通ったドアの脇の壁には、おじさんとおばさんが寄り添って立つ小さな絵がかけられている。この絵、おばさんが私に嬉しそうに話してくれたから、よく覚えている。おばさんが想像する貴族って、屋敷に入ってエントランスの正面に家族の絵画を掲げているみたいで、昔からの憧れだったんだって。おじさんに小さなものでもいいからって頼みこんで、やっと描き上げてもらったんだって。でも、おじさんは恥ずかしかったみたいでたくさんの人が見るような場所に飾るのは禁止してた。この絵の中でだって、おじさんは居心地悪そうに口が歪んでいる。ニコニコしているおばさんとは正反対。
やっぱりここはおばさんの部屋なんだ…。おばさんが座っていたところを想像しながら視線を下げると、机の引き出しの一つがかすかに開いているのが目に入った。
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