海の小舟と君と僕

ふくまめ

文字の大きさ
6 / 20

トモダチ

しおりを挟む
「そう言えばさ、良太君は友達と遊びに来ているところだったんだっけ?」
「そうですけど…。」
「けど?」
「…友達かって言われると、ちょっと微妙かなって。」
「えぇ?どうしてだい?」
「多分僕、人数合わせか何かで呼ばれたんですよ、きっと。」
「…その友達は、どうでもいいような人を遊びに誘うような人なの?
 遊びに行くのだって、タダじゃないだろうに。」
「ロイさんもお金の事とか考えるんですね、意外です。」
「何だか今馬鹿にされたような気が。」
「そんなことは…。ともかく、今どきの友達ってのは案外適当なもんだってことですよ。
 誘ってきた奴は何と言うか…、金持ちみたいで。一般家庭の金銭感覚とは違うんじゃないですかね、はは。」
「ふぅん…。」

そうだ、友達なんてそんなものだ。その瞬間に必要な人数さえそろえばいい。
その程度の人数合わせのために、オトモダチなんて文句で誘われる。
毎日の生活の中ではいたっていなくたっていい。だけど何かあった時には都合よく呼ばれる存在。それが友達だ。
皆が互いに騙し合って利用し合っている。
そして僕も。

「みんながみんな、そういう人ばかりじゃないとは思いますけど…。
 …瞬介は、そんなこと思ってないといいな。」
「…仲がいい人がいたの?」
「仲がいいというか…、同じ高校に通ってて進学先が一緒だったんですよ。
 少なくとも、大学で出会った人たちと比べたらって感じですかね。本人も良い奴ですし。」
「向こうもそう思っているのかなぁ。」
「え?」
「その相手、瞬介君だっけ?彼も良太君のことを親友のように思っていてくれているのかなってことさ。」
「…そんなこと。」
「君だって言ってただろ?『今どきの友達ってのは案外適当なもんだ』ってさ。」

確かに言ったけども…。
龍治に数合わせで呼ばれていることは受け入れられるけど、
瞬介が適当に相手しているんじゃないかってことは、何となく受け入れがたい。
他人に対して期待しないように、分かったような考えをして予防線を張っていたって、誰かには正直に向かい合っていてほしい。
僕も大概自分勝手な人間なんだな…。

「良太君、俺は別に君を責めるつもりはないよ。もちろん、その友達もね。
 人間ってのは、良くも悪くもお互い様だよ。お互いが適当に利用し合って生きていく。
 それなら、個人個人に固執する必要なんてないと思うけどなぁ。」
「…。」
「ね、良太君。旅に出て知らない人に出会うことも、大して変わらないと思わないかい?」
「…随分とそこにこだわりますね。」
「俺からしてみれば、君たちの方がこだわっているように見えるけどね。」

旅をしていれば、出会う人はその時限りの人たちばかりだろう。
そういった人たちの方が、いわゆる余所行きの態度で優しく接してくれるってこともあるかもしれない。
他人にどう見られているか、周りからの評価を気にして当たり障りのないように行動する。
純粋に優しさで接してくれている人なんて、どれだけいるのだろうか。
そういう感じで何となく社会が回っていると思えば、表面上問題なく過ごしている生活も何だか悲しくすらある。

「世界は白か黒で分けられることばかりじゃない。
 それはみんな知っているのさ。見ないふりをしているだけ。
 正面からその事実を見てしまうと、気が滅入るだろう?
 嫌なことや汚い部分から目を背けて何かに肩代わりさせるのは、人間の特徴だよね。」
「それは…。」
「そんなことないって、言い切れるかい?何となく、適当に生きている君に。」

ロイさんは相変わらず笑顔のまま。だけど、何だろうか、どこか冷え込んだ眼をしている。
確かに僕は人様に自慢できるような生き方をしているとは思っていない。
だけど、他の人たちだってそうじゃないか。僕が周りと大きくずれた生活をしているとも思えない。
それなのに、僕と正直に向かいあってくれる誰かがいることを諦めきれないでいる。
その自分勝手な矛盾を見せつけられて、僕は何も言えなくなってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

処理中です...