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桜子と雑誌を交互に見た後、小馬鹿にしたようにクララがプッと吹き出す。
「すぐバレる嘘つかないでよ。この雑誌に載れるのは、選ばれた人気モデルだけ。アンタなんか使われるわけないじゃない」
あはははとクララが大きな声で笑う。取り巻きの女子たちも大袈裟なくらい手を叩きながら、一緒になって笑いだした。
桜子はそれでも表情一つ変えず、「ちょっと貸して」と雑誌を手に取る。
「嘘じゃないわ。表参道で買い物してたら、写真を撮らせてくれないかって声を掛けられたの。私は気が進まなかったけど、一緒にいた許嫁が『いい経験になるよ』って言うから。ほら、このページ」
パラパラとページをめくっていた手を止めて、桜子は写真が良く見えるように雑誌をクララの方に向けた。
「許嫁って何よ。バカみたい」
クララはブツブツ文句を言いながらも、桜子が指さす先を凝視する。
そこには、黒いパフスリーブのブラウスに白いレースのスカート。黒の編み上げブーツを着こなす桜子がいた。
笑顔はなくツンと澄ました表情だが、誰が見ても間違いなく美少女だった。他のスナップ写真より大きく取り上げられていて、桜子だけ明らかに特別感がある。
クララが悔しそうに地団駄を踏んだ。
「な、なにこれ! こんなのインチキよ! ただの読モじゃないっ」
「インチキ? あたしはただ、雑誌に載ってるって言っただけよ。何も間違ったこと言ってないでしょ」
桜子が首を傾げると、黒いサラサラの髪も動きに合わせて揺れた。
クララの後ろから、取り巻きの女子たちも雑誌を覗き込む。明らかに桜子を見る目は憧れへと変わり、「凄い、凄い」と口にした。
それを聞いたクララは、鬼の形相で女子たちを振り返る。
「ちょっと、なに言ってんの?! こんなの全然凄くないじゃない。あたしの方がもっとずっと可愛いのに!」
クララの剣幕に、女子たちは一斉に首をすくめた。その中の一人、髪を高い位置でポニーテールに結んだ活発そうな少女が「まぁまぁ」とクララをなだめる。
「紅楽々なら、表参道歩いてればきっとスカウトされるよ。今度行ってみたら?」
桜子やクララたちの住まう街は、東京の東側に位置する、いわゆる下町と呼ばれるエリアにあった。表参道までは乗り換えもなく電車で一本なので、その気になれば小学生でも行くことが出来る。
「そうね。美優紀の言う通りだわ。私だって、きっと声を掛けてもらえるよね」
美優紀の言葉に気をよくしたのか、クララはふふっと手を口元に添えて微笑んだ。
クララの機嫌が直って女子たちがホッとしていると、教室のドアがガラッと勢いよく開いて、「あー、めっちゃ面白かった!」と口にしながら、男子の集団がどやどやと戻って来る。
その瞬間、クララの表情がパッと華やいだ。
「すぐバレる嘘つかないでよ。この雑誌に載れるのは、選ばれた人気モデルだけ。アンタなんか使われるわけないじゃない」
あはははとクララが大きな声で笑う。取り巻きの女子たちも大袈裟なくらい手を叩きながら、一緒になって笑いだした。
桜子はそれでも表情一つ変えず、「ちょっと貸して」と雑誌を手に取る。
「嘘じゃないわ。表参道で買い物してたら、写真を撮らせてくれないかって声を掛けられたの。私は気が進まなかったけど、一緒にいた許嫁が『いい経験になるよ』って言うから。ほら、このページ」
パラパラとページをめくっていた手を止めて、桜子は写真が良く見えるように雑誌をクララの方に向けた。
「許嫁って何よ。バカみたい」
クララはブツブツ文句を言いながらも、桜子が指さす先を凝視する。
そこには、黒いパフスリーブのブラウスに白いレースのスカート。黒の編み上げブーツを着こなす桜子がいた。
笑顔はなくツンと澄ました表情だが、誰が見ても間違いなく美少女だった。他のスナップ写真より大きく取り上げられていて、桜子だけ明らかに特別感がある。
クララが悔しそうに地団駄を踏んだ。
「な、なにこれ! こんなのインチキよ! ただの読モじゃないっ」
「インチキ? あたしはただ、雑誌に載ってるって言っただけよ。何も間違ったこと言ってないでしょ」
桜子が首を傾げると、黒いサラサラの髪も動きに合わせて揺れた。
クララの後ろから、取り巻きの女子たちも雑誌を覗き込む。明らかに桜子を見る目は憧れへと変わり、「凄い、凄い」と口にした。
それを聞いたクララは、鬼の形相で女子たちを振り返る。
「ちょっと、なに言ってんの?! こんなの全然凄くないじゃない。あたしの方がもっとずっと可愛いのに!」
クララの剣幕に、女子たちは一斉に首をすくめた。その中の一人、髪を高い位置でポニーテールに結んだ活発そうな少女が「まぁまぁ」とクララをなだめる。
「紅楽々なら、表参道歩いてればきっとスカウトされるよ。今度行ってみたら?」
桜子やクララたちの住まう街は、東京の東側に位置する、いわゆる下町と呼ばれるエリアにあった。表参道までは乗り換えもなく電車で一本なので、その気になれば小学生でも行くことが出来る。
「そうね。美優紀の言う通りだわ。私だって、きっと声を掛けてもらえるよね」
美優紀の言葉に気をよくしたのか、クララはふふっと手を口元に添えて微笑んだ。
クララの機嫌が直って女子たちがホッとしていると、教室のドアがガラッと勢いよく開いて、「あー、めっちゃ面白かった!」と口にしながら、男子の集団がどやどやと戻って来る。
その瞬間、クララの表情がパッと華やいだ。
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