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其の六
記憶の何処かに
しおりを挟む日が延び暖かい。
今日は再び冬物をしまい、春夏物を引き出しやらクローゼットに入れた。睡眠不足ではないのに眠い。そしてだるい。身体が重くて思うように動けない。爪も薄くなっているし、ささくれも酷い。
真っ青な空と海を思い浮かべる。
空と海は私の故郷。そういえばこの時期は田舎もぼんやり霞がかった、スッキリしない天候だった。
いっせいに咲き萌えいづる春爛漫は四月だった。
ふと思う……
私はもう田舎に行くことはないのだろうなと。よほどの御縁がない限り、彼処へ引き寄せられることはないかな。諦めたわけじゃないけどそんなことを思う。
でも知ってるの。私の心は何時だって思い浮かべたあの時、あの場所へ行くことが出来る。
故郷ってそういうところ。
何も持たずに、身体さへ持たずに行けるとこ……。
だから、遠い遠い昔の故郷が、なんとなく記憶の何処かにある。飛騨高山辺りは私の故郷だったように思う。
見たことも行ったとこもない場所の写真を見て思った。夢で見ていた景色とそっくりだったから。
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