君と出逢ったあの時から

月待

文字の大きさ
上 下
114 / 309
其の六

記憶の何処かに

しおりを挟む


日が延び暖かい。

今日は再び冬物をしまい、春夏物を引き出しやらクローゼットに入れた。睡眠不足ではないのに眠い。そしてだるい。身体が重くて思うように動けない。爪も薄くなっているし、ささくれも酷い。




真っ青な空と海を思い浮かべる。

空と海は私の故郷。そういえばこの時期は田舎もぼんやり霞がかった、スッキリしない天候だった。

いっせいに咲き萌えいづる春爛漫は四月だった。





ふと思う……

私はもう田舎に行くことはないのだろうなと。よほどの御縁がない限り、彼処あそこへ引き寄せられることはないかな。諦めたわけじゃないけどそんなことを思う。




でも知ってるの。私の心は何時だって思い浮かべたあの時、あの場所へ行くことが出来る。

故郷ってそういうところ。

何も持たずに、身体さへ持たずに行けるとこ……。





だから、遠い遠い昔の故郷が、なんとなく記憶の何処かにある。飛騨高山辺りは私の故郷だったように思う。

見たことも行ったとこもない場所の写真を見て思った。夢で見ていた景色とそっくりだったから。









しおりを挟む

処理中です...