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第一章 死に戻りからの婚約破棄と出会い
砂漠に追放(2)
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1876年はガソリンで動く自動車のエンジンができた年だ。それより9年前の1867年現在、父の道楽で我がブランドン公爵家には蒸気自動車があった。街を走る乗り合い自動車の自家用車版だ。
邸宅の前まで自転車でやってきた私の目には、父の蒸気自動車の隣に、王家の馬車が停っているのが見えた。私の心臓は大きく跳ね上がった。
――まさか、アルベルト王太子が追ってきたの?
自転車をそばの樹に立てかけた私は、急いで玄関ホールに身を滑り込ませた。
慇懃な様子の王家からの使者と、ブランドン公爵家の執事のレイトンが睨み合うように立っていた。すぐそばには真っ青な顔をした父が立っている。父の手には1枚の紙が握られていた。
「お父様っ!いかがなさいましたか?」
私はきっとアルベルト王太子に「私を捨ててください」と頼んだことが伝えられたと思い、慌てて父に聞いた。
「ディアーナ……」
父は真っ青な顔で、紙から視線を上げて私の顔を見た。父が無言でいるので私は思わず父の手から紙を取って自分で読んだ。
『ゴビンタン砂漠への追放を命じる。これを回避するには、王太子の要求に応じるように』
私の目に飛び込んだのはそこまでだった。チラッと王妃のサインが目に入った。
「一体、何があった?」
父は私の顔を見つめて、紙を持つ私の肩をそっと抱くようにして、震える声で尋ねた。
「お父様の書斎でご説明します」
私は父に告げた。執事のレイトンに「あとは任せて」という目配せをして、父をそっと書斎の方に導こうとした。
「では、確かにお渡ししましたので、私はこれにて失礼します」
王家からの使者は静かにブランドン公爵家から出て行った。私は父と共に書斎に入りながら、心の中では不安でいっぱいだった。
――ゴビンタン砂漠に追放なんて、死を意味するわ。それが嫌なら王太子と婚約しろというのね。
そんな事を言う王家に嫁げるものか。私の心は不安と反骨心が交互に押し寄せてきた。体が震え始めた。
――私の魔力が砂漠に打ち勝てるなら良いのだけれど。
その日、私は夜会服姿で震えて立つ19歳の無力な公爵令嬢だった。
邸宅の前まで自転車でやってきた私の目には、父の蒸気自動車の隣に、王家の馬車が停っているのが見えた。私の心臓は大きく跳ね上がった。
――まさか、アルベルト王太子が追ってきたの?
自転車をそばの樹に立てかけた私は、急いで玄関ホールに身を滑り込ませた。
慇懃な様子の王家からの使者と、ブランドン公爵家の執事のレイトンが睨み合うように立っていた。すぐそばには真っ青な顔をした父が立っている。父の手には1枚の紙が握られていた。
「お父様っ!いかがなさいましたか?」
私はきっとアルベルト王太子に「私を捨ててください」と頼んだことが伝えられたと思い、慌てて父に聞いた。
「ディアーナ……」
父は真っ青な顔で、紙から視線を上げて私の顔を見た。父が無言でいるので私は思わず父の手から紙を取って自分で読んだ。
『ゴビンタン砂漠への追放を命じる。これを回避するには、王太子の要求に応じるように』
私の目に飛び込んだのはそこまでだった。チラッと王妃のサインが目に入った。
「一体、何があった?」
父は私の顔を見つめて、紙を持つ私の肩をそっと抱くようにして、震える声で尋ねた。
「お父様の書斎でご説明します」
私は父に告げた。執事のレイトンに「あとは任せて」という目配せをして、父をそっと書斎の方に導こうとした。
「では、確かにお渡ししましたので、私はこれにて失礼します」
王家からの使者は静かにブランドン公爵家から出て行った。私は父と共に書斎に入りながら、心の中では不安でいっぱいだった。
――ゴビンタン砂漠に追放なんて、死を意味するわ。それが嫌なら王太子と婚約しろというのね。
そんな事を言う王家に嫁げるものか。私の心は不安と反骨心が交互に押し寄せてきた。体が震え始めた。
――私の魔力が砂漠に打ち勝てるなら良いのだけれど。
その日、私は夜会服姿で震えて立つ19歳の無力な公爵令嬢だった。
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