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全世界の諸君に告ぐ
41_猫たちの冒険
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「ちょっとウズウズしてきたあ!」
「何が?」
「いや、渡り鳥はレーダーに引っかからないなら、猫も引っかからないんじゃないかと思って。」
「そうそう。本当。それ。」
「だね?」
「そりゃ、そうよ。猫はひっかからないさ。」
「ちょっとそこ。いきなり意気投合しない。何を二人で企んでいるの?」
あれほど猫同士でいがみ合っていたソフィとダルマが急に二人で意気投合しはじめたので、私は二人の間に入った。
モニターの向こうで威圧感満載の金髪に赤いスーツを着た女性と、ブラックウィドウみたいないでたちのソフィが急に興奮して意気投合しはじめた。
「だからね。その、私も配達したいなと思って。いや、できるでしょう?人間はレーダーに引っかかるけど、猫は引っかからないなら、猫だって配達できるでしょう?」
「いいこと思いついた!鳥型ドローン5台くらいでハンモックみたいに網をぶら下げて、そこに猫がゴロンとして、敵地を飛んだり紛争地域を飛んだりしても、レーダーに引っかからないんじゃない?」
「はあ?あなたたち、自分も行きたいって言っています?」
私はすっときょうな声をあげてソフィとダルマに言った。
「言っています!」
「言っていま
二人は声を揃えて断言した。トルコにいるソフィと国防長官の飼い猫のダルマは(というか、急にダルマが乱入してきたのだけど)、ついさっきまではいがみあっていた。
「ちょっと待って?」
そこにゴムドリが入ってきた。
「話が見えないんだけど。さっきからなぜネコの話?『私も配達したいな』は、分かるよ?でも、猫ならレーダーに引っかからないという文脈の話をしている理由がわからない。」
ソフィとダルマが猫だと知らないゴムドリは、モニター越しにトルコにいるブラックウィドウみたいなソフィと、ワシントンの国防長官宅にいるダルマを見つめた。
「ああ、白状すると」
と、ソフィがモニター越しにゴムドリを見つめた。
「白状すると?」
固唾を飲んでソフィを見つめていたゴムドリが、おうむ返しをした。
「あー、待って!怖い!なんか怖い!ちょっと待って!」
「今すごいことを俺に言おうとしているよね?」
ゴムドリは椅子から立ち上がり、机の周りを1周駆け足で回って戻ってきた。胸に手を当てている。
「ちょっと待って。水飲ませて。」
そう言って水をペットボトルから飲んで、ゴムドリは首を回した。
「うん。今大丈夫になった。白状というのを、言ってみてください。」
ゴムドリは、ソフィに言った。
「猫よ。」
とダルマが金髪ボブをゆすって、気取って答えた。
「は?」
ゴムドリは、ソフィを見つめていた目をダルマに向けた。
「そうなの、猫なのよ。」
ソフィがトルコからモニター越しに恥ずかしそうに答えた。
「は、だから?何が猫?」
ゴムドリは意味不明なことを言われた様子で、聞き返した。
「あーめんどくさいったら。しゃあないっ!」
いきなり金髪ボブで赤いスーツを着たダルマが、モニターのカメラの前でロシアンブルーの猫の姿になった。
「そうね、面倒だわ。」
ソフィもそう言って、すぐにスコティッシュフォールドの猫になった姿をモニターのカメラに写した。
「え?まって?」
「君たち、猫なの?」
ゴムドリは、自分でそう言って驚いて飛び上がった。
「いや、勘弁してっ!」
そう叫んでいる。
「まあ、そういうことなんで。秘密を漏らしたらダメです。」
ソフィが厳しい口調でゴムドリに言った。
「も、も、も、漏らさない、秘密は漏らさない。俺が変みたいにみられるから、誰にも言えないし。」
ゴムドリはそう言って、椅子に沈みこんだ。
どうやらまだ処理しきれないようだ。
ガールズバンドのワールドツア―は熱狂的な興奮とともに、着々とスケジュール消化されて行っていた。名実ともに世界的大人気のバンドであることを証明しつつあった。
そして、ついに、ソフィとダルマが潜入任務を実行する日がやってきた。
ゴムドリはバタバタとモニターを準備していた。今日は、ガールズバンド“ミッチェリアル”メンバーも全員集合して、ソフィとダルマの冒険を見守ることになったのだ。紛争地域に配達できたことは、大きな喜びをメンバーにもたらした。次は、なんと猫自ら志願したと聞いて、メンバーも是非モニターから見守りたいとなったのだ。
ソフィとダルマは戦闘を仕掛けた側の国の国境沿いに立っていた。
モニターは、その二人の姿をしっかり捉えることができていた。
「そろそろですね。」
ミカエルも、私も、ガールズバンドのメンバーも皆が、二人が猫になり、草むらで待機する様子を見ていた。
「目的地に到着。猫が庭にいるのが見えます!」
渡り鳥に取り囲まれた鳥型ドローンが7つ降りてきた。
七台の鳥型ドローンはそれぞれ網の端をもち、大きな巨大ハンモックのようなものが空に見えた。
高さ三メートルぐらいまで降下してきたら、猫二匹はひらりと飛び乗った。
これより、敵国にいとも簡単に侵入できた、はずだったが問題が露呈した。
「違うわ。このやり方じゃ死人が出る。」
さと子さんがため息をついた。
さと子さんがそういったのとほぼ同時のことだった。
「ダダダダダダダダダダダダダダ!」
猛烈な銃撃が地上から猫を運ぶハンモック状態の網に向かってきた。
「レーダーに引っかかっている!」
「命が危ない!」
「降りれるところに着いたら、降りてひたすら逃げろ!」
見ているメンバーも、メロンも、ミカエルもゴムドリも必死で口々に叫んだ。
「ダダダダダダダダダダダダダダ!」
「うわっ!死んだ!」
「私も死んだわ。ものすごく痛かった。」
モーリー(ソフィ)とダルマの声がリアルタイムで虚しく聞こえてきた。
「ダダダダダダダダダダダダダダ!」
「うわっ!正直にいうけど、今、私死んだわ。」
ダルマの声がもう一度言った。
「死んだわあああ!」
モーリー(ソフィ)の声も悲鳴を上げながら言っているのがみんなの耳に響いた。
全員が涙を浮かべて今にも泣きそうになってモニターを見つめた。
「なんとかできないのっ!」
「ゴムドリっなんとかして!」
涙をこぼしながら、みんなは叫んだ。
「何が?」
「いや、渡り鳥はレーダーに引っかからないなら、猫も引っかからないんじゃないかと思って。」
「そうそう。本当。それ。」
「だね?」
「そりゃ、そうよ。猫はひっかからないさ。」
「ちょっとそこ。いきなり意気投合しない。何を二人で企んでいるの?」
あれほど猫同士でいがみ合っていたソフィとダルマが急に二人で意気投合しはじめたので、私は二人の間に入った。
モニターの向こうで威圧感満載の金髪に赤いスーツを着た女性と、ブラックウィドウみたいないでたちのソフィが急に興奮して意気投合しはじめた。
「だからね。その、私も配達したいなと思って。いや、できるでしょう?人間はレーダーに引っかかるけど、猫は引っかからないなら、猫だって配達できるでしょう?」
「いいこと思いついた!鳥型ドローン5台くらいでハンモックみたいに網をぶら下げて、そこに猫がゴロンとして、敵地を飛んだり紛争地域を飛んだりしても、レーダーに引っかからないんじゃない?」
「はあ?あなたたち、自分も行きたいって言っています?」
私はすっときょうな声をあげてソフィとダルマに言った。
「言っています!」
「言っていま
二人は声を揃えて断言した。トルコにいるソフィと国防長官の飼い猫のダルマは(というか、急にダルマが乱入してきたのだけど)、ついさっきまではいがみあっていた。
「ちょっと待って?」
そこにゴムドリが入ってきた。
「話が見えないんだけど。さっきからなぜネコの話?『私も配達したいな』は、分かるよ?でも、猫ならレーダーに引っかからないという文脈の話をしている理由がわからない。」
ソフィとダルマが猫だと知らないゴムドリは、モニター越しにトルコにいるブラックウィドウみたいなソフィと、ワシントンの国防長官宅にいるダルマを見つめた。
「ああ、白状すると」
と、ソフィがモニター越しにゴムドリを見つめた。
「白状すると?」
固唾を飲んでソフィを見つめていたゴムドリが、おうむ返しをした。
「あー、待って!怖い!なんか怖い!ちょっと待って!」
「今すごいことを俺に言おうとしているよね?」
ゴムドリは椅子から立ち上がり、机の周りを1周駆け足で回って戻ってきた。胸に手を当てている。
「ちょっと待って。水飲ませて。」
そう言って水をペットボトルから飲んで、ゴムドリは首を回した。
「うん。今大丈夫になった。白状というのを、言ってみてください。」
ゴムドリは、ソフィに言った。
「猫よ。」
とダルマが金髪ボブをゆすって、気取って答えた。
「は?」
ゴムドリは、ソフィを見つめていた目をダルマに向けた。
「そうなの、猫なのよ。」
ソフィがトルコからモニター越しに恥ずかしそうに答えた。
「は、だから?何が猫?」
ゴムドリは意味不明なことを言われた様子で、聞き返した。
「あーめんどくさいったら。しゃあないっ!」
いきなり金髪ボブで赤いスーツを着たダルマが、モニターのカメラの前でロシアンブルーの猫の姿になった。
「そうね、面倒だわ。」
ソフィもそう言って、すぐにスコティッシュフォールドの猫になった姿をモニターのカメラに写した。
「え?まって?」
「君たち、猫なの?」
ゴムドリは、自分でそう言って驚いて飛び上がった。
「いや、勘弁してっ!」
そう叫んでいる。
「まあ、そういうことなんで。秘密を漏らしたらダメです。」
ソフィが厳しい口調でゴムドリに言った。
「も、も、も、漏らさない、秘密は漏らさない。俺が変みたいにみられるから、誰にも言えないし。」
ゴムドリはそう言って、椅子に沈みこんだ。
どうやらまだ処理しきれないようだ。
ガールズバンドのワールドツア―は熱狂的な興奮とともに、着々とスケジュール消化されて行っていた。名実ともに世界的大人気のバンドであることを証明しつつあった。
そして、ついに、ソフィとダルマが潜入任務を実行する日がやってきた。
ゴムドリはバタバタとモニターを準備していた。今日は、ガールズバンド“ミッチェリアル”メンバーも全員集合して、ソフィとダルマの冒険を見守ることになったのだ。紛争地域に配達できたことは、大きな喜びをメンバーにもたらした。次は、なんと猫自ら志願したと聞いて、メンバーも是非モニターから見守りたいとなったのだ。
ソフィとダルマは戦闘を仕掛けた側の国の国境沿いに立っていた。
モニターは、その二人の姿をしっかり捉えることができていた。
「そろそろですね。」
ミカエルも、私も、ガールズバンドのメンバーも皆が、二人が猫になり、草むらで待機する様子を見ていた。
「目的地に到着。猫が庭にいるのが見えます!」
渡り鳥に取り囲まれた鳥型ドローンが7つ降りてきた。
七台の鳥型ドローンはそれぞれ網の端をもち、大きな巨大ハンモックのようなものが空に見えた。
高さ三メートルぐらいまで降下してきたら、猫二匹はひらりと飛び乗った。
これより、敵国にいとも簡単に侵入できた、はずだったが問題が露呈した。
「違うわ。このやり方じゃ死人が出る。」
さと子さんがため息をついた。
さと子さんがそういったのとほぼ同時のことだった。
「ダダダダダダダダダダダダダダ!」
猛烈な銃撃が地上から猫を運ぶハンモック状態の網に向かってきた。
「レーダーに引っかかっている!」
「命が危ない!」
「降りれるところに着いたら、降りてひたすら逃げろ!」
見ているメンバーも、メロンも、ミカエルもゴムドリも必死で口々に叫んだ。
「ダダダダダダダダダダダダダダ!」
「うわっ!死んだ!」
「私も死んだわ。ものすごく痛かった。」
モーリー(ソフィ)とダルマの声がリアルタイムで虚しく聞こえてきた。
「ダダダダダダダダダダダダダダ!」
「うわっ!正直にいうけど、今、私死んだわ。」
ダルマの声がもう一度言った。
「死んだわあああ!」
モーリー(ソフィ)の声も悲鳴を上げながら言っているのがみんなの耳に響いた。
全員が涙を浮かべて今にも泣きそうになってモニターを見つめた。
「なんとかできないのっ!」
「ゴムドリっなんとかして!」
涙をこぼしながら、みんなは叫んだ。
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