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第二十一話 エルフと戦車と狂信者
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止めて止めてイヤー!どどどどどうも、美しき獣事、エルフ娘です。いえ、悠長に挨拶している場合ではなかった、私、かなーり危険な状態です。
私只今、騎乗のエルフとなっております。正しくは戦車上のエルフ。タンクの戦車ではありませんよ、チャリオットの戦車です。
何故に戦車に乗っておりますと言いますと、、、ヒーッッ!!掠った!少々お待ちを、食らえ必殺エルフ式体当たり!うわっぷッッ、ざまぁ、私の前に出るからですよ!
邪魔者を始末しましたので説明致します。あれは二月ほど前の事でした、、、、
「止めを刺しに行きましょう」
何時ものサメの巣亭に集まりました、帝都支配し隊のメンバーに私は宣言したのであります。今やこの帝都は、裏も表も新エルフ教の氾濫に飲み込まれようとしております。
明日の見えない不安定な世界に、乞食も貴族も不安を抱え、心の隙間は海よりも深い現状、地道な活動と邪教の儀式のお陰もあり、五年程かけた計画は成功裏に終わろうとしています。
狂信者の鎮圧に衛兵隊は東奔西走、疲弊の極み。昨今では、無実の一般信者に対しても締め付けを始める有様、婿殿の後ろ盾が有るからとやり過ぎです。
「煽動を続ける、謎の親玉が暗躍しているからね、彼らも必死さ」
良い様です。婿殿、貴方は何時頃、衛兵隊将軍の任を解かれるのですか?
「第一皇子派が巻き返しを図っているからね、近く、お役御免を言い渡される。後任は第一皇子本人。彼、私が随分と恐ろしいらしい、宮廷工作に走り回っているよ、突き落とそうと必死さ」
ご苦労な事。ですが、遅すぎます。宮廷の有力者は、三分の一近くが邪教の信徒となっている今、自分がなり替わったと言って信徒の撲滅など出来ようも有りません。
「裏町の様子がどうですか?」
「姐さんの酒は随分と高値になってますよ、どいつもこいつもあれに夢中の有様でさぁ。あれが飲めるなら何でもやると言う奴は幾らでもいますよ」
私の質問に答えたのは、商船隊の有力者にまで登り詰めた元船員君です。順調に悪党の道をステップアップしてますね。
「貴方は飲まないので?」
「生憎とあっしは、神様に縁遠い者で」
それが良いでしょう。狂信はいけませんよ、狂信は。神様はそんな物、人間さんに求めてないですからね。人間さんには自分の足で立って貰いたいがあの方のスタンスです。まあ、祈る分には文句はお言いに成らないでしょうから、大目に見てくれるでしょう、、、多分。
「教会の信者の皆さまはどうですか?」
「良いですな、実に良い。迷える人間たちは、近年まれに見る程、神を身近に感じております。無論、これは帝都だけでは有りませんよ。帝都周辺は元より、遠く南方軍団領よりも巡礼が訪れております。正に神の奇跡!」
新エルフ教の指導者である、酔いどれ破戒僧君です。信仰に悩み、酒に逃げていた彼は、今や立派な司教様になっております。何でも、前任者をお目目をグルグルさせた信徒たちと、窓から投擲して教区を奪い取ったとか。狼藉千万な行いですが、帝都の宗教関係者で彼を止められる者は居りません。
「で、皆さんご協力しれくれますよね?」
「勿論です。正しき信仰の為でしたら、例え火の中でも善男善女は進むでしょう。それは、拙僧も同じ事。ですので、貴方様の血酒を拙僧に優先して頂けると嬉しいのですが、、」
「考えておきましょう」
飲んだくれなのは変わっていませんね。燃える信仰の燃料はアルコールとエルフの血、碌な物ではありませんが、異世界ヤン・フスの実力は本物です。彼と信者は第二第三の投擲事件を起こす事など造作もないでしょう。帝都の名物の一つになるかもしれません。
「子供たち、準備の進捗は如何ですか?」
「「出来てる」」
「手が傷だらけになったけどね」
「この借りは焼肉パーティーで返して貰う」
「白ワニが良い。母さん一人で狩ってきてね。兄弟全員分だよ」
マジで!全員分を私一人で狩って来るの?何時の間にそんな話に?まあ、良いでしょう、、、良くないな、でも仕方ないか。
我が子らに頼んだのは、血酒と血で聖別された月光草の大量生産です。これから始まる一大イベントの為には、邪教の呪物が大量に必要となってきますからね。
「それで、お義母さん、どんな悪だくみを考えているんだい?」
悪だくみとは失礼な!これは人間さんを正しき信仰に導き、帝都、引いては帝国を聖なる国家に変える、大いなる計画なのですよ!
「悪だくみですよね?」
そうです。悪だくみです。ではお話しましょう。私が考える一大イベントを!
とっ、その前にお勉強を少ししましょう。私の悪だくみと大きく関係するエルフのお話です。
滅びしエルフ帝国、そしてエルフには騎乗の文化はありません。獣力を利用していない訳ではないですよ。御馬さんに乗る文化が無いと言うだけです。
何故かって?人が馬に乗るのは早い移動の為でしょう?エルフは馬なんかよりもよっぽど早く走れますし、持久力もあるのです。ですので、文明の曙の頃より、エルフには騎乗と言う文化その物が育たなかったのですよ。
代わりに発展したのが、馬車の文化です。流石に大量の荷物やエルフを背中に背負って走る訳には行きませんからね。多種多様ですよエルフの馬車文化は。
馬車を引く獣からして多くの種類があったそうです。お馬さんの他、走り鳥、白獅子、曼荼羅虎、氷原狼、巨人までもが利用されていたそうです。
王族は蜥蜴竜なんかをよく使っていたそうですが、これらの移動手段は戦争にも利用されていました。エルフ帝国が衝撃力の要として使っていたのは、そんな獣たちが引く戦車です。
戦車を引っ張る獣自体が危険で強力ですから、襲われた人間さんの軍隊はさぞ恐ろしかった事でしょう。手綱を握らずとも意志で繋がった獣と正に一心同体になって突撃してくる、白金で身を鎧った戦士は幾度も敵陣を蹂躙した言われております。
そんなエルフ帝国の戦車文化を人間さん帝国も受け継いでおります。人間さんは危険な獣を使役する技術は持ち合わせていませんので、お馬さんオンリーな訳ですが。
戦争に使ってはいません。実際騎乗した方が便利ですからね。この世界の騎乗文化はオークが作り、人が取り入れた形で広まっているのです。髭達磨?それは追々説明する事もあるでしょう。
戦争に使わずどこに戦車を使っているの?と言いますと、競技として使われております。元々は人間さん様のレクリエーション活動の一つとして、エルフ帝国が考案した戦車競技ですが、エルフ帝国が驚いた事に大受けしたのです。
帝国最盛期には各地に人間さん専用レース場が整備され、一部の好事家エルフの間には、専用人間さんの育成も盛んに行われていました。賭け事にしたのも人間さんが始まりです。
賭けの対象になってからは、危険度も爆上がりに上がっていきました。使われる戦車も、安全に考慮された四輪から二輪になり、そのスピードも上がりまくり、クラッシュが当たり前、車軸に棘を生やすやら、車体に鎌を装備するやら、騎手が武器を振り回すやらで、エルフ帝国が想定した、少々危険でも清い汗を流すスポーツから、流血上等のデスレースに変わってしまいました。
そんな白熱デスレースですが、一時はエルフ帝国に禁止され、その発展も、人間さんの大反乱の前に文化事態も廃れていきました。ですが、人類の帝国が覇権を手にした頃より灰の中より大復活。今ではお手頃な流血スポーツとして、崩れかけたコロセウムで絶賛放映中となっております。賭け事大好きなんですよね、人間さんは。
さて、長くなりましたが、私が一大イベントとして利用させて貰いますのはこの大戦車デスレースです。ですDeath。
盛り上がる市民、手渡される無料のエルフ飲料、会場全体に立ち込める怪しいお香。レースは白熱し、流血と歓声が巻き起こり、其処に大番狂わせ、興奮冷めやらぬ競技場では何が起るでしょうか?
考えなくても分かりますよね。大暴動です。疲弊した衛兵隊にこれを止める事等出来る筈もありません。楽しみだなー大混乱。誰も彼もがお目目グルグル、心と魂はあっちの世界に逝きながら、暴れ狂う大群衆、不満のガス抜きとして行われているレースは帝国崩壊の引き金となる。
そこを収めるのが私たち、新エルフ教の愉快な仲間達。婿殿は首班として収まり、形だけの帝国は宗教組織に牛耳られると言う寸法です。
どうです!凄いでしょう!我ながら天晴な悪党ぶり、待ってろよ衛兵隊!特に長年私を追いかける、銭形めいた隊長さん、今では管区司令にまで登り詰めた男。可愛がってやるからな!奥さんの目の前で、寝取ってやる!
盛り上がってますね、ここ会場内の貴賓室にまで歓声が聞こえてきます。計画実施まであと少し、柄にもなく緊張して来ました。もう少しですよ、もう少しで、この帝都はエルフの手に戻って来るのです!ンンン?誰ですか騒々しい!あれどうしたんですか?そんなに息を切らして?娘たちも何ですか?
「姐さん!大変です!俺たちが仕込んだ選手が殺られました!賭けの胴元共も一斉検挙とか言う奴で捕まりました!相手選手も総入れ替えだそうで」
「母さん、第一皇子派が動いた。これを気にレース正常化と収益金を国庫に入れる宣言を出すつもりらしい。暴動警戒の名目で衛兵隊が集まってきてる」
「それは、後付けの理由だね。今更、そんな事して国庫に入る金なんて微々たるものさ。本命はお義母さんの計画阻止だろう」
「やられたね、お義母さん。彼らはそこまで無能じゃなかったらしい。嗅ぎつけていた者もいたのだろう。どうするんだい?このままで行くと選手不在で最終レースはお流れになるよ?」
ぐぬぬぬ!そう言う事しますか、今日と言う大会最終盤に合わせてそう言う事しますか!興奮の最高潮で計画を実施するつもりだったのに!
良いでしょう。受けて立ってやろうじゃありませんか!出来レースを行い、一番不人気の選手の大番狂わせで、会場を混乱に落とし入れる積りでしたが仕方ありません。
誰ぞ出る者は居らんか!子供達よ、エルフと人間さんの実力差を第一皇子派に見せつけてやりなさい!あれ?子供達なんで私の方を見てるの?
「私達は森の兄弟と違う」
「無理、獣と心を通わせるなんて出来ない」
「獣は獲物、食い物であって友達じゃない」
「言い出しっぺが責任を取れ」
ああ!そうでした、忘れてた!この子ら都市特化型エルフで、人間さん以外を操るなんて出来ないんだ!そうなりますと、確実に勝てそうなのは、、、、私しか居ないじゃん!
「何ですか?なんで腕を掴むのですか?姿隠しの襤褸を被せるのですか?止めて乱暴しないで!オラ悪い狸じゃないだ!森に帰してケロ!」
「「「「良いから行け」」」
はい。
私只今、騎乗のエルフとなっております。正しくは戦車上のエルフ。タンクの戦車ではありませんよ、チャリオットの戦車です。
何故に戦車に乗っておりますと言いますと、、、ヒーッッ!!掠った!少々お待ちを、食らえ必殺エルフ式体当たり!うわっぷッッ、ざまぁ、私の前に出るからですよ!
邪魔者を始末しましたので説明致します。あれは二月ほど前の事でした、、、、
「止めを刺しに行きましょう」
何時ものサメの巣亭に集まりました、帝都支配し隊のメンバーに私は宣言したのであります。今やこの帝都は、裏も表も新エルフ教の氾濫に飲み込まれようとしております。
明日の見えない不安定な世界に、乞食も貴族も不安を抱え、心の隙間は海よりも深い現状、地道な活動と邪教の儀式のお陰もあり、五年程かけた計画は成功裏に終わろうとしています。
狂信者の鎮圧に衛兵隊は東奔西走、疲弊の極み。昨今では、無実の一般信者に対しても締め付けを始める有様、婿殿の後ろ盾が有るからとやり過ぎです。
「煽動を続ける、謎の親玉が暗躍しているからね、彼らも必死さ」
良い様です。婿殿、貴方は何時頃、衛兵隊将軍の任を解かれるのですか?
「第一皇子派が巻き返しを図っているからね、近く、お役御免を言い渡される。後任は第一皇子本人。彼、私が随分と恐ろしいらしい、宮廷工作に走り回っているよ、突き落とそうと必死さ」
ご苦労な事。ですが、遅すぎます。宮廷の有力者は、三分の一近くが邪教の信徒となっている今、自分がなり替わったと言って信徒の撲滅など出来ようも有りません。
「裏町の様子がどうですか?」
「姐さんの酒は随分と高値になってますよ、どいつもこいつもあれに夢中の有様でさぁ。あれが飲めるなら何でもやると言う奴は幾らでもいますよ」
私の質問に答えたのは、商船隊の有力者にまで登り詰めた元船員君です。順調に悪党の道をステップアップしてますね。
「貴方は飲まないので?」
「生憎とあっしは、神様に縁遠い者で」
それが良いでしょう。狂信はいけませんよ、狂信は。神様はそんな物、人間さんに求めてないですからね。人間さんには自分の足で立って貰いたいがあの方のスタンスです。まあ、祈る分には文句はお言いに成らないでしょうから、大目に見てくれるでしょう、、、多分。
「教会の信者の皆さまはどうですか?」
「良いですな、実に良い。迷える人間たちは、近年まれに見る程、神を身近に感じております。無論、これは帝都だけでは有りませんよ。帝都周辺は元より、遠く南方軍団領よりも巡礼が訪れております。正に神の奇跡!」
新エルフ教の指導者である、酔いどれ破戒僧君です。信仰に悩み、酒に逃げていた彼は、今や立派な司教様になっております。何でも、前任者をお目目をグルグルさせた信徒たちと、窓から投擲して教区を奪い取ったとか。狼藉千万な行いですが、帝都の宗教関係者で彼を止められる者は居りません。
「で、皆さんご協力しれくれますよね?」
「勿論です。正しき信仰の為でしたら、例え火の中でも善男善女は進むでしょう。それは、拙僧も同じ事。ですので、貴方様の血酒を拙僧に優先して頂けると嬉しいのですが、、」
「考えておきましょう」
飲んだくれなのは変わっていませんね。燃える信仰の燃料はアルコールとエルフの血、碌な物ではありませんが、異世界ヤン・フスの実力は本物です。彼と信者は第二第三の投擲事件を起こす事など造作もないでしょう。帝都の名物の一つになるかもしれません。
「子供たち、準備の進捗は如何ですか?」
「「出来てる」」
「手が傷だらけになったけどね」
「この借りは焼肉パーティーで返して貰う」
「白ワニが良い。母さん一人で狩ってきてね。兄弟全員分だよ」
マジで!全員分を私一人で狩って来るの?何時の間にそんな話に?まあ、良いでしょう、、、良くないな、でも仕方ないか。
我が子らに頼んだのは、血酒と血で聖別された月光草の大量生産です。これから始まる一大イベントの為には、邪教の呪物が大量に必要となってきますからね。
「それで、お義母さん、どんな悪だくみを考えているんだい?」
悪だくみとは失礼な!これは人間さんを正しき信仰に導き、帝都、引いては帝国を聖なる国家に変える、大いなる計画なのですよ!
「悪だくみですよね?」
そうです。悪だくみです。ではお話しましょう。私が考える一大イベントを!
とっ、その前にお勉強を少ししましょう。私の悪だくみと大きく関係するエルフのお話です。
滅びしエルフ帝国、そしてエルフには騎乗の文化はありません。獣力を利用していない訳ではないですよ。御馬さんに乗る文化が無いと言うだけです。
何故かって?人が馬に乗るのは早い移動の為でしょう?エルフは馬なんかよりもよっぽど早く走れますし、持久力もあるのです。ですので、文明の曙の頃より、エルフには騎乗と言う文化その物が育たなかったのですよ。
代わりに発展したのが、馬車の文化です。流石に大量の荷物やエルフを背中に背負って走る訳には行きませんからね。多種多様ですよエルフの馬車文化は。
馬車を引く獣からして多くの種類があったそうです。お馬さんの他、走り鳥、白獅子、曼荼羅虎、氷原狼、巨人までもが利用されていたそうです。
王族は蜥蜴竜なんかをよく使っていたそうですが、これらの移動手段は戦争にも利用されていました。エルフ帝国が衝撃力の要として使っていたのは、そんな獣たちが引く戦車です。
戦車を引っ張る獣自体が危険で強力ですから、襲われた人間さんの軍隊はさぞ恐ろしかった事でしょう。手綱を握らずとも意志で繋がった獣と正に一心同体になって突撃してくる、白金で身を鎧った戦士は幾度も敵陣を蹂躙した言われております。
そんなエルフ帝国の戦車文化を人間さん帝国も受け継いでおります。人間さんは危険な獣を使役する技術は持ち合わせていませんので、お馬さんオンリーな訳ですが。
戦争に使ってはいません。実際騎乗した方が便利ですからね。この世界の騎乗文化はオークが作り、人が取り入れた形で広まっているのです。髭達磨?それは追々説明する事もあるでしょう。
戦争に使わずどこに戦車を使っているの?と言いますと、競技として使われております。元々は人間さん様のレクリエーション活動の一つとして、エルフ帝国が考案した戦車競技ですが、エルフ帝国が驚いた事に大受けしたのです。
帝国最盛期には各地に人間さん専用レース場が整備され、一部の好事家エルフの間には、専用人間さんの育成も盛んに行われていました。賭け事にしたのも人間さんが始まりです。
賭けの対象になってからは、危険度も爆上がりに上がっていきました。使われる戦車も、安全に考慮された四輪から二輪になり、そのスピードも上がりまくり、クラッシュが当たり前、車軸に棘を生やすやら、車体に鎌を装備するやら、騎手が武器を振り回すやらで、エルフ帝国が想定した、少々危険でも清い汗を流すスポーツから、流血上等のデスレースに変わってしまいました。
そんな白熱デスレースですが、一時はエルフ帝国に禁止され、その発展も、人間さんの大反乱の前に文化事態も廃れていきました。ですが、人類の帝国が覇権を手にした頃より灰の中より大復活。今ではお手頃な流血スポーツとして、崩れかけたコロセウムで絶賛放映中となっております。賭け事大好きなんですよね、人間さんは。
さて、長くなりましたが、私が一大イベントとして利用させて貰いますのはこの大戦車デスレースです。ですDeath。
盛り上がる市民、手渡される無料のエルフ飲料、会場全体に立ち込める怪しいお香。レースは白熱し、流血と歓声が巻き起こり、其処に大番狂わせ、興奮冷めやらぬ競技場では何が起るでしょうか?
考えなくても分かりますよね。大暴動です。疲弊した衛兵隊にこれを止める事等出来る筈もありません。楽しみだなー大混乱。誰も彼もがお目目グルグル、心と魂はあっちの世界に逝きながら、暴れ狂う大群衆、不満のガス抜きとして行われているレースは帝国崩壊の引き金となる。
そこを収めるのが私たち、新エルフ教の愉快な仲間達。婿殿は首班として収まり、形だけの帝国は宗教組織に牛耳られると言う寸法です。
どうです!凄いでしょう!我ながら天晴な悪党ぶり、待ってろよ衛兵隊!特に長年私を追いかける、銭形めいた隊長さん、今では管区司令にまで登り詰めた男。可愛がってやるからな!奥さんの目の前で、寝取ってやる!
盛り上がってますね、ここ会場内の貴賓室にまで歓声が聞こえてきます。計画実施まであと少し、柄にもなく緊張して来ました。もう少しですよ、もう少しで、この帝都はエルフの手に戻って来るのです!ンンン?誰ですか騒々しい!あれどうしたんですか?そんなに息を切らして?娘たちも何ですか?
「姐さん!大変です!俺たちが仕込んだ選手が殺られました!賭けの胴元共も一斉検挙とか言う奴で捕まりました!相手選手も総入れ替えだそうで」
「母さん、第一皇子派が動いた。これを気にレース正常化と収益金を国庫に入れる宣言を出すつもりらしい。暴動警戒の名目で衛兵隊が集まってきてる」
「それは、後付けの理由だね。今更、そんな事して国庫に入る金なんて微々たるものさ。本命はお義母さんの計画阻止だろう」
「やられたね、お義母さん。彼らはそこまで無能じゃなかったらしい。嗅ぎつけていた者もいたのだろう。どうするんだい?このままで行くと選手不在で最終レースはお流れになるよ?」
ぐぬぬぬ!そう言う事しますか、今日と言う大会最終盤に合わせてそう言う事しますか!興奮の最高潮で計画を実施するつもりだったのに!
良いでしょう。受けて立ってやろうじゃありませんか!出来レースを行い、一番不人気の選手の大番狂わせで、会場を混乱に落とし入れる積りでしたが仕方ありません。
誰ぞ出る者は居らんか!子供達よ、エルフと人間さんの実力差を第一皇子派に見せつけてやりなさい!あれ?子供達なんで私の方を見てるの?
「私達は森の兄弟と違う」
「無理、獣と心を通わせるなんて出来ない」
「獣は獲物、食い物であって友達じゃない」
「言い出しっぺが責任を取れ」
ああ!そうでした、忘れてた!この子ら都市特化型エルフで、人間さん以外を操るなんて出来ないんだ!そうなりますと、確実に勝てそうなのは、、、、私しか居ないじゃん!
「何ですか?なんで腕を掴むのですか?姿隠しの襤褸を被せるのですか?止めて乱暴しないで!オラ悪い狸じゃないだ!森に帰してケロ!」
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