幻聖魔伝 ～Three world～

第一夜

１４

「可哀想に……」

　俺は猫の死体を抱いて、そう呟く。

　既に死んでいたのを切断されたのか、悪戯の為に切断されたのかはわからない。どちらにしても、むごすぎる。

　既に血を出しきってしまったのか、足の切られた部分から血は出てない。でもきっと、足を切断した時には血が吹き出した事だろう……。

　幻魔や人間、魔族の死体を見たって俺は可哀想、だなんて思わない。でもそれ以外の動物には可哀想だな、て思う。



　やっぱり、俺は悪魔だ。

　だって、同族の死体を見てもなんとも思わないどころか、平気で同族を死体に変える事が出来るんだから……。



　とりあえず、この猫のお墓でも作ってこよう。

　あ、菊の花もあるからお墓に供えてあげよう。






「じゃあ今日は、召喚した幻魔とタッグを組んで模擬戦をしましょう！　みんな、早速幻魔を召喚して」

　魔法担当の先生がそう言ってる。まだやっと３時間目。あ～あ、やってらんない。だいたい俺、召喚出来る程魔力ないし。

　召喚、ていうのは『召喚魔法』の略ね。召喚魔法は幻魔が得意とする魔法で、かなり高位にあたる魔法。

　シーズさんがあれこれ頑張ってくれたおかげで、少しくらいなら魔法を使えるようにはなったけど…………。

「先生！　召喚の出来ない人はどうするんですか～？」

　あ、この声は色んな『プレゼント』をくれる人の一人だ。何が面白いのか笑ってる。まぁ、だいたい想像はつくけど。

　ちなみに、毎日色んな悪戯をされてる事はおじいちゃん達には内緒。

「え、ええっと……そういう子は見学していて下さい」

　そういえばあの先生、新人なんだよね。あんなに焦っちゃって……。



　猫のお墓？　ちゃんと作ったよ。さっき捨てた前足と一緒に埋めて、紙コップの水を新しいのにして、菊の花も供えた。拾った木の枝で十字架を作って建てて、一応お墓参りもした。