幻聖魔伝 ～Three world～

第三夜

２４

　～ランディside～



「リュカ……リュカ……！！」

　いない……！　チクショウ、どこへ…………！？

「ランディ！　そっちは見つかったか！？」

「お袋、ダメだ！　どこにもいねぇ！！」

　俺はそう叫ぶ。

　お袋は膝裏までの長い黒髪を振り乱し、黒のマーメイドドレスにハイヒールとかいう凄く動きづらそうな格好で俺の所まで走ってきた。



　チクショウ、なんで気付いてやれなかったんだ……！？



　どうして家出なんか……！！



　俺は朝起きてすぐ、リュカの部屋へ行った。この城にいる時は、朝は必ずリュカの部屋で一緒に食べる。



　でも、その日は違った。



　リュカが『いなかった』……！

　リュカの愛用の剣も一緒になくなってた。

　その時ようやく、リュカが家出をした事が発覚した。

　そして俺や親父、お袋も勿論の事ルイおじさんやアーリアおばさん、デュランさんやシーズさん、ホークだって必死に探してる。



　ダメだ、城下町は通ってないっぽい……。



「ランディ、一旦城へ戻ろう。町は通ってないみたいだ……」

「わかった…………」

　俺はお袋と一緒に城へ戻った。






「……一体、どこへ……！？」

　昨日俺に小遣いをくれたばかりのルイおじさんが項垂れてそう呟く。アーリアおばさんなんかもう、泣き出しちまってる……。

「この幻界では、どこに行ってもリュカには敵だらけ……。安息の地を求めたなら人間界へ行ったのかもしれない……」

　シーズさんは静かに、冷静にそう言う。

　その短いブロンドの髪に隠れて他の人からは見づらいけど、俺のいる位置からははっきり見える。シーズさんのスカイブルーの目は、どこか淋しそうだ。



　人間界……か…………。



「じゃあ、俺が探しに」

「俺が行く！」

　デュランさんの言葉を遮って、俺はそう言った。

「『俺が行く』って、アンタねぇ……！　旅がどんだけ大変か知らないくせに何を……！！」

「でも俺は『リュカを守る』って約束したんだ！！」

　お袋はそれを聞いて黙る。黒髪と同じ黒い目は、苦しそうに床に向いている。



　そう……。いつの時の約束かは憶えてないけど、俺は確かに『リュカを守る』て約束したんだ……！！　その為だけに、俺は強くなったんだ…………！！