幻聖魔伝 ～Three world～

第八夜

68

　情報屋達もギルドに、報告した情報に応じた報酬をもらって生計を立てている。

　とはいえ、全部ミルカからの受け売りだけどね。

「……うん、ここ」

　ミルカが酒場の隣の建物の前で立ち止まり、建物を見上げてそう言う。

　そしてさっさと中に入ってしまう。

　俺達も慌てて後に続く。

「ミルカ・ウィーン。情報を聞きにきました」

　俺達が中に入ると既に、ミルカはカウンターの女性にそう言っていた。



　…………なんて、事務的な……。



「ああ、情報屋のミルカさんですね？」

　カウンターの女性は名簿を開いてミルカの名前を探していたものの、どうもすぐ見つかったらしい。

　ギルドは登録している情報屋には、特別価格で情報を提供してくれるんだって。

「本日はどのような情報をお探しでしょうか？」

　もっと言っちゃうと、ミセティルでの情報収集もギルドを利用した。

「三種族の共存する村について」

　……ミルカ、事務的過ぎるよ…………。

　何故だろう？　なんだか悲しくなってきた……。

「……リュカ。今俺、なんだかものすごく悲しいんだけど…………」

　右隣のランディが、何故か俺にそう訴える。

　カウンターの女性は必死になって、『共存する村』について探してくれてる。

「右に同じく……」

　俺もそう訴える。

　誰に訴えているのかはわからない。

「やっぱり右に同じく……」

　ホークの右は俺。つまり、３人して何かに悲しくなって、何かに訴えたいんだ……。

「申し訳ありません。そのような情報はこちらには……」

　カウンターの女性が、情報をまとめてあると思われる紙を見たあと俺達に……というかミルカにそう謝る。