幻聖魔伝 ～Three world～

第八夜

71

　さぁアストリア国に入ろうって時に、全く知らない声が聞こえた。

「いたぞ！」

「逃がすな！　殺せぇ！！」

「リュカ兄、あの声なに？」

「さぁ？」

　ホークの質問を俺はそう流す。

　俺が聞きたいくらいだし。

　程無くして俺達の周りを十数人の兵士達が取り囲む。

「手配書のハーフの女だ！」

「！？　俺は男だ！！」

　思わず俺は兵士達にそう怒鳴った。



　人を勝手に女と間違えるなよ！！



「え？　あ……！？　し、失礼しました！」

「謝ってどうする！」

　新人らしき一人が俺に謝るが、すぐに別の兵士に怒られる。

「おいおい……」

　ランディが呆れて、ため息をつく。

「リュカ兄、この人達アストリア兵だよね？　殺しちゃマズイんじゃない？」

「いい。殺す。第一人を勝手に間違えて謝ったの、あの人だけだし」

　俺は兵士達を睨みながら剣を抜く。

「……止めた方が……」

　ミルカもそう言いかけるけど俺は無視する事にする。

「待て、緑髪の女以外全員ハーフだ！？」

「緑髪の女以外を皆殺しにしろ！」

「あ～あ、バレちまったのね……」

　ランディが欠伸を噛み殺しながら退屈そうにしている。

「どうする？　ランディ兄」

　決まってるでしょホーク。殺すんだよ。

「とりあえず気絶、だな」

　ランディが構える。だから殺すんだってば。

「手伝う……。リュカ達を殺させたり、させない…………！」

　ミルカがムチを持つ。

　ちょうどその時、兵士達が俺達を殺しにかかってきた。

「召喚・ドラゴン！！」

　ホークの周りに黒い魔方陣が描かれて、貴族達の家並の大きな黒いドラゴンが召喚される。

　ホークの契約した幻魔・ドラゴンだ。ドラゴンはかなり上級の幻魔。流石ホーク。