幻聖魔伝 ～Three world～

第八夜

73

「……ホーク、これ借りるね？」

　俺が５人目の血飛沫で血塗れになった時、ミルカの声が聴こえた。どうやらホークから何か借りようとしてるみたいだ。

「いいけど……どうするの？　それ」

　ホークはミルカに貸す事になった『ソレ』に疑問があるみたいだ。

　でも俺は６人目の相手で忙しくてそんな場合じゃない。

「剣なんだから、人を斬るのに使うのが普通でしょ？」

　……はいぃ？　剣？？　ミルカが？

「…………まさか、リュカ兄みたく人殺しをするんじゃ……！？」

　なんならホークを斬ってもいいんだよ？

「人殺しまではしない……。とりあえず、しばらく動かないでもらいたいだけ」

　お優しい事で。

　俺は６人目の返り血を浴びる。服が血でべったりだ……。流石に気持ち悪い。着替えたい。

　俺は息も絶え絶えに、７人目の相手を始める。

　そこへミルカがホークの双剣を持って、割って入る。



　あれ？　ミルカ、意外に剣が上手い……。



「リュカ。下がって、少し休んでて」

　ミルカは意外にも７人目の正規兵と対等に……いや、ミルカの方が一枚上手かな……やりあっている。

　息の上がっていた俺はミルカに言われた通り、後ろに下がる。

　いくらなんでも、子ども４人に大人十数人とか頭おかしいし。何考えてんの？　こいつらをけしかけた人は……。

「リュカ兄、大丈夫？」

「大丈夫だから、召喚魔法に集中しな」

　召喚魔法はかなりの集中力と精神力が必要になる。本来なら召喚魔法を使っている相手に話しかける事すらご法度なんだから……。

　ランディも多少息を切らしているけど、どうやら俺程じゃなさそうだ。

　ミルカは自分より一回り程体格の違う相手にも全く動じず、冷静に相手の弱点や剣のクセを見極めて戦っている。



　俺も、頑張らなくちゃ……！