幻聖魔伝 ～Three world～

第十夜

92

「！？　子どもだと思ってナメてれば…！」

　女の人が呪文の詠唱を始める。……この人、バカだね。詠唱中は無防備になるくらい知ってるでしょうに……。

　あ、ランディが鎌を鎖鎌へ変形させた。

　ランディはその鎖鎌を女の人へ投げる。



　ジャラララララ！



　うるさい金属音をたてながら鎖鎌は女の人を縛り上げて、上手い具合にその女の人の喉元に鎌の切っ先が当たる寸前で鎌は動きを止めた。

　ランディの鎌は、持ち手……あ、さっき『棒』って表現した部分ね……の部分を真ん中から外して鎖鎌に出来る優れものなんだ。

　もとはシェラハさんのだったらしいけど、使いこなせなくてランディにあげたらしい。

「殴りかかる方が、悪いんだろ？」

　ランディはそういうと女性に近寄って鎖鎌を外し、鎌へと戻したあと消してしまう。

「次はここから南の村だって。行こう？」

　いつの間にかミルカに目的地を聞いていたホークが俺達に呼びかける。

「うし。行くか」

　鎌を持ったランディも、結構かっこいいんだけどなぁ～……。






「うわぁ～。デッカイ砂浜だ～！」

「ランディ、これは『砂丘』って言うんだよ」

　俺は呆れてランディに『砂丘』という言葉を教える。

「物知りリュカ～。砂丘って何？」

「……答える前に質問。その『物知りリュカ』って俺の事馬鹿にしてるの？」

　俺はランディを睨む。

　フード越しでも分かったらしく、ランディは明らかに焦ったように

「ち、違うよ。そういうわけじゃ……！　気に触ったんなら謝るよ、ごめん」


　必死に謝ってきた。

「はぁ……。砂丘っていうのは長い年月の間に風にさらわれてきて、堆積して出来た小さな砂の丘だよ」

「かなりデカイけど」

「人間一人の目から見れば、ね」

　俺は砂丘を歩きながらそう答える。