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行き倒れの男
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朝になり、少女は我に返る。
口の中に広がる血の味と、手をついたものを見て、自分が昨日やった事を思い出す。
ベットにぼふんっと顔を埋めた。
「うわぁあ、またやっちゃったーー…。」
少女は自己嫌悪に陥る。
自分が化け物と気がついてから5年ほど経った。
恐らく、自分は「吸血鬼」や「バンパイア」と呼ばれるものの類ではないかと分かった。
人間の中にも血に対して異常な執着を持つ人はいるらしいが、
吸血の直後に目が赤くなる事や、
吸血の直前の自分が人を操ることが出来る事から自分は人間ではないと考えた。
アパートの小部屋で、はぁーーーと長い溜息をつく。
もともと空腹感に我慢できなくなると、1ヶ月に1度、
夜に人気のないところで、人を操って血を吸う。
吸血欲に駆られ、人の血を吸う時、頭がふわふわした気分になって意識が鮮明ではないのだが、意識が戻るとき、ここ半年の間、手にべっとりと男の精液の匂いがついているのだ。
どうやら、吸血鬼の私は
血を取るだけでは飽きたらず精までも搾り取っているのだ。
これが吸血鬼の本能として正しいのかどうかは全くわからない。
でも17歳となった年頃のその少女にとって、その行為はあまりにも恥ずかしかった。
吸血鬼であることを受け止めるのに時間はかからなかった。
1度味わった血の味を覚えてしまえば、人間としての理性など何の役にも立たなかった。
むしろ人間社会で生きていくために、家族に名前、住むところ、人間としての全てを無くさなければいけなかったのだから、吸血鬼の能力を無くしては生きていけなかっただろう。
しかし、最近血を吸う行為が、最低限の血を素早く取ればいいはずなのに、余計な嗜好ができ始めた。
経験もないはずなのに、男を気持ちよくさせる能力がいつの間にか開花してしまった事に酷く自己嫌悪を覚えた。
鏡を見ると、まだ目の赤みは消えていなかった。
血を多く吸いすぎた日は、目の赤みが引くのも遅い。
昨日襲ってしまった男性は、貧血になっていないか心配になる。
もっとも、少女の記憶は鮮明に覚えることは出来ていないはずなので、貧血よりもズボンにべったりついた自分の精液の方が驚きだろう。
夕方になり、また新宿へと繰り出した。
少女はどうしても昨日の男が心配だった。
しかし、あの路地裏には誰もいなかったし、血も精液も残ってない。
「ふぅーー…。」無事帰れたのだろう。
彼にはきっと少女の記憶はないだろう。
そして、襲った証拠も何も無い。
少女が吸血鬼であることは、きっとこの世の誰も知らない筈だ。
やることを果たした少女は、フラフラと街を散歩する。
この人の多さにはどうも慣れないが、少女の正体を隠すにはうってつけだ。
「ん…?」
血の匂い。それもとても大量の。
いてもたってもいられなかった。
血の匂いのする方向へと走り出す。
(この匂いだと、確実に死ぬ量だ。)
匂いの方向には神社だ。
丘の上にできた神社は階段のその先だった。
こじんまりしたそこは、なかなか人が来ない。
殺人事件だろうか、事故だろうか。
少女は階段を駆け上がった。
「…っ!」
神社の片隅で白いシャツから大量の血が溢れ倒れている男がいる。
男には息があった。少し癖のある黒髪で、目までかかるくらい伸びていた。頬は少し痩けているし、目には隈がある。
意識はあるようだが動くこともままならない。 苦しそうに呻くので少女は見過ごせないと思った。
「オジサン、服破くよ。」
傷口を確認するため、
シャツの破れたところを広げた。
「…ぅぅぅ。」
「…なにこれ。」
傷は深い。なにか大きな刃物でえぐり取られたような後が3箇所。
まるで、大きな獣に引っかかれた様な。
血がドクドクと溢れる。
正直、昨日あれほど血を飲んだから向こう1ヶ月は要らないのだが、こうなったら仕方がない。
「オジサン、声我慢してね。痛いと思うけど。」
暴れないよう、腕を押さえ付けようとしたが、その男ははなから抵抗する気などなかったようだ。うっすらと目を開け少女を見るが、意識はあるのかないのか定かではない。
少女はペロリと傷口を舐めた。
なるべく、唾液を塗りつけるように。
「……うっ」
痛がって男が呻く。
しかし、唾液の塗られたところから、血が止まり始めた。
口の中に広がる血の味と、手をついたものを見て、自分が昨日やった事を思い出す。
ベットにぼふんっと顔を埋めた。
「うわぁあ、またやっちゃったーー…。」
少女は自己嫌悪に陥る。
自分が化け物と気がついてから5年ほど経った。
恐らく、自分は「吸血鬼」や「バンパイア」と呼ばれるものの類ではないかと分かった。
人間の中にも血に対して異常な執着を持つ人はいるらしいが、
吸血の直後に目が赤くなる事や、
吸血の直前の自分が人を操ることが出来る事から自分は人間ではないと考えた。
アパートの小部屋で、はぁーーーと長い溜息をつく。
もともと空腹感に我慢できなくなると、1ヶ月に1度、
夜に人気のないところで、人を操って血を吸う。
吸血欲に駆られ、人の血を吸う時、頭がふわふわした気分になって意識が鮮明ではないのだが、意識が戻るとき、ここ半年の間、手にべっとりと男の精液の匂いがついているのだ。
どうやら、吸血鬼の私は
血を取るだけでは飽きたらず精までも搾り取っているのだ。
これが吸血鬼の本能として正しいのかどうかは全くわからない。
でも17歳となった年頃のその少女にとって、その行為はあまりにも恥ずかしかった。
吸血鬼であることを受け止めるのに時間はかからなかった。
1度味わった血の味を覚えてしまえば、人間としての理性など何の役にも立たなかった。
むしろ人間社会で生きていくために、家族に名前、住むところ、人間としての全てを無くさなければいけなかったのだから、吸血鬼の能力を無くしては生きていけなかっただろう。
しかし、最近血を吸う行為が、最低限の血を素早く取ればいいはずなのに、余計な嗜好ができ始めた。
経験もないはずなのに、男を気持ちよくさせる能力がいつの間にか開花してしまった事に酷く自己嫌悪を覚えた。
鏡を見ると、まだ目の赤みは消えていなかった。
血を多く吸いすぎた日は、目の赤みが引くのも遅い。
昨日襲ってしまった男性は、貧血になっていないか心配になる。
もっとも、少女の記憶は鮮明に覚えることは出来ていないはずなので、貧血よりもズボンにべったりついた自分の精液の方が驚きだろう。
夕方になり、また新宿へと繰り出した。
少女はどうしても昨日の男が心配だった。
しかし、あの路地裏には誰もいなかったし、血も精液も残ってない。
「ふぅーー…。」無事帰れたのだろう。
彼にはきっと少女の記憶はないだろう。
そして、襲った証拠も何も無い。
少女が吸血鬼であることは、きっとこの世の誰も知らない筈だ。
やることを果たした少女は、フラフラと街を散歩する。
この人の多さにはどうも慣れないが、少女の正体を隠すにはうってつけだ。
「ん…?」
血の匂い。それもとても大量の。
いてもたってもいられなかった。
血の匂いのする方向へと走り出す。
(この匂いだと、確実に死ぬ量だ。)
匂いの方向には神社だ。
丘の上にできた神社は階段のその先だった。
こじんまりしたそこは、なかなか人が来ない。
殺人事件だろうか、事故だろうか。
少女は階段を駆け上がった。
「…っ!」
神社の片隅で白いシャツから大量の血が溢れ倒れている男がいる。
男には息があった。少し癖のある黒髪で、目までかかるくらい伸びていた。頬は少し痩けているし、目には隈がある。
意識はあるようだが動くこともままならない。 苦しそうに呻くので少女は見過ごせないと思った。
「オジサン、服破くよ。」
傷口を確認するため、
シャツの破れたところを広げた。
「…ぅぅぅ。」
「…なにこれ。」
傷は深い。なにか大きな刃物でえぐり取られたような後が3箇所。
まるで、大きな獣に引っかかれた様な。
血がドクドクと溢れる。
正直、昨日あれほど血を飲んだから向こう1ヶ月は要らないのだが、こうなったら仕方がない。
「オジサン、声我慢してね。痛いと思うけど。」
暴れないよう、腕を押さえ付けようとしたが、その男ははなから抵抗する気などなかったようだ。うっすらと目を開け少女を見るが、意識はあるのかないのか定かではない。
少女はペロリと傷口を舐めた。
なるべく、唾液を塗りつけるように。
「……うっ」
痛がって男が呻く。
しかし、唾液の塗られたところから、血が止まり始めた。
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