傲慢な世界よ、私が壊してあげるわ~公爵令嬢に転生したOLは悪の覇道を突き進む

かずまさこうき

文字の大きさ
81 / 124
第五章 崩壊編

第81話 出陣式

 討伐令が発令されてから八週間後。王都の城門外に広がる練兵場には、グラッセ公爵家討伐のため、総勢二万三千人の兵士と従者が整列していた。その内訳は、王直属の騎士と従者一万五千人、そして貴族の兵八千人である。
 これは、摂政である王太子エドワードの臨席のもと、東方面軍の後詰となる本軍が出発する前の、出陣式を執り行うためだった。 
 練兵場の指揮壇上に王太子が立った瞬間、怪訝そうな顔をした。彼の目には、集まった貴族の数は多いものの、率いる兵の数が極端に少なく見えた。

(貴族たちの兵は、王直属の軍と同程度と聞いていたが、半分程度ではないか)

 そう思った彼は、後ろに控えるドガ将軍に問いただした。

「将軍よ。なぜ兵が少ないのだ?」
「直属の兵一万五千はすべて揃っておりますが」
「違う、貴族達の兵だ。直属の兵と同程度の動員を期待していたが、実際は半分程度しかいないぞ。本軍は三万ではなかったのか?」
「どうやら、貴族たちは兵の出し渋りをしたようでして」
「ブローリのせいか?」

 編成会議時に、ブローリ公爵が北方守備のため動員できる全軍では参戦できない旨を言い放ったことを思い出したエドワードは、思わず公爵の名を出した。

「殿下、めったなことをおっしゃいますな」

 ブローリ公爵が貴族たちに厭戦気分を示唆したと解釈されかねない王太子の発言は、あまりにも拙速だった。この発言が広まれば、貴族たちの間で王家への不信感が決定的になると即座に悟ったドガ将軍は諫言したが、王太子の怒りは増すばかりであった。

「なぜだ! 余はカッツー王国の王太子であり、摂政であるぞ。余の命令になぜみな逆らうのだ!」
「逆らってはおりません。ただ、貴族たちにも都合というものがありまして」
「王命に逆らう理由になるか!」

 指揮壇上の王太子は、ドガ将軍を怒鳴りつけ、声を荒げた。その感情的な姿は、二万三千もの将兵の目の前で晒された。皆が沈黙する中、ロバン・タレーラン侯爵がエドワードの前で跪き、沈黙を破って進言した。

「摂政殿下、ご心配あそばされるな。我がロバンは、動員できる兵三千全てをもって参陣いたしました。我が兵は精鋭ぞろい。必ずやミレーヌの首を上げてみませす」

 タレーラン侯爵は、先代から侯爵になったばかりで国王派貴族の中では立場が低い。そして、甘い言葉ばかり言う王太子のお気に入りの貴族として有名であった。

「おお、ロバン! 卿だけが頼りだ!」
「万事お任せください」

 タレーラン侯爵のご機嫌取りに全く気が付かない王太子を苦々しく見ていた家令のジブリル。すると、エドワードが振り返って彼に言い放った。

「北と東の方面軍の兵がどの程度集まったのか後で報告せよ」
「承知しました」

 各方面軍は、侵攻ポイントの手前で集結して攻め入る手はずとなっており、王都に立ち寄る必要はない。ジブリルは、貴族たちが兵を出し渋っていることは想定の範囲内であったが、それを王太子に報告した際、どのように怒りを鎮めるか、悩みの種は尽きなかった。


 その後、王太子は集まった兵士たちに向けて、この戦いの意義について演説を始めた。彼は、自らの正義は絶対であり、演説によって将兵が感激し、戦意が盛んになるのが当然だと信じ込んでいた。指揮壇上で繰り広げられた醜悪な茶番劇が、兵たちの士気にどう影響したのかなど、まったく気にすることなく。
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています