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第五章 崩壊編
第94話 崩御
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続く春の陽光のもと、レイモン王はついに崩御した。その「病死」は、セリアの厳命により、医師団によって周到に管理されたものだった。外部の疑念を避けるため、王の最期は極めて静かに、そして彼女の計画通りに執り行われた。
ここに、エドワード王太子がカッツー王国の新たな国王として即位した。
本来ならば、国を挙げての即位式と国葬を執り行うべきところであった。しかし、ミレーヌとの休戦協定が結ばれていないため、形式上は戦時下にある。密葬の手配を済ませた家臣たちは、恐る恐る、エドワード国王に国葬について確認した。すると新国王は信じられないことを言った。
「ミレーヌの首を父上に捧げることが何よりも供養となる。余は宣言する。グラッセ公爵家を討伐したのち、葬儀をしたうえで即位式を行うと」
その言を聞いた家臣たちは、国葬の準備は諦め、密葬を滞り無く行うことだけを考えた。
一方、王妃となったセリアは、王の崩御という最大の関門を乗り越え、ようやくここまでたどり着いたことに微かな安堵を覚えた。しかし、その感情は一瞬で消える。彼女は、老執事のアルビンに矢継ぎ早に指示する。そう、セリアがカッツー王国を掌握するための最終計画は、着々と進んでいた。
◇◆◇◆
そんなセリアであっても、まだ知らないことがあった。ミレーヌが新たに発行した銀貨の影響であった。
先月末にミレーヌが発行した高純度の新銀貨は、グラッセ公爵家の領地はもちろん、近隣の諸侯の領民の間でも流通しはじめている。
銀貨よりも高額貨幣である金貨は王家のみが発行しているため、国内経済に大きな混乱はまだ生じていないが、少額決済や納税に不可欠な銀貨が王家の支配下から離れつつある。
目ざとい王都の商人たちは、公爵家の銀貨を集め始めた。公爵家の新銀貨は公爵家の旧銀貨しか交換を受け付けないということもあり、公爵家以外の銀貨は見向きもされず、その信用は急激に低下した。価値が異なる通貨において、信用の低下は貨幣価値の下落につながるのは当然の理屈である。
対陣が長引き財政難に陥っていた貴族たちは、価値が下落する手持ちの銀貨から新銀貨に交換しようとするも敵対している公爵家と表立っては交渉できない。
彼らは懇意にしている商人に依頼したが、依頼主が貴族だと判明した途端、公爵家が交換を拒否しているとのことであった。
公爵家御用達商人であるラウールの商会を頼る貴族もいたが、銀貨以外の商談に応じると連れない返事をうける。そこで他の商人か、闇ルートに頼らざるを得ない状況になるも、そこでの交換比率は公爵家が表明しているレートよりも数段悪い。交換に手間取る間に、旧銀貨の価値はさらに下落していき、彼らは資産を目減りさせ続けるという八方ふさがりの状況に陥っていた。
一部の貴族たちは思った。信頼できぬ王家などよりも、今必要としている銀貨を融通してくれるミレーヌを頼った方がいいのではないかと。
そんな中、ある貴族の行動が注目を集める事となる。その貴族の名前は、ソアン・ペシオ伯爵。グラッセ公爵領と隣接した地方貴族であった。
ここに、エドワード王太子がカッツー王国の新たな国王として即位した。
本来ならば、国を挙げての即位式と国葬を執り行うべきところであった。しかし、ミレーヌとの休戦協定が結ばれていないため、形式上は戦時下にある。密葬の手配を済ませた家臣たちは、恐る恐る、エドワード国王に国葬について確認した。すると新国王は信じられないことを言った。
「ミレーヌの首を父上に捧げることが何よりも供養となる。余は宣言する。グラッセ公爵家を討伐したのち、葬儀をしたうえで即位式を行うと」
その言を聞いた家臣たちは、国葬の準備は諦め、密葬を滞り無く行うことだけを考えた。
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◇◆◇◆
そんなセリアであっても、まだ知らないことがあった。ミレーヌが新たに発行した銀貨の影響であった。
先月末にミレーヌが発行した高純度の新銀貨は、グラッセ公爵家の領地はもちろん、近隣の諸侯の領民の間でも流通しはじめている。
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目ざとい王都の商人たちは、公爵家の銀貨を集め始めた。公爵家の新銀貨は公爵家の旧銀貨しか交換を受け付けないということもあり、公爵家以外の銀貨は見向きもされず、その信用は急激に低下した。価値が異なる通貨において、信用の低下は貨幣価値の下落につながるのは当然の理屈である。
対陣が長引き財政難に陥っていた貴族たちは、価値が下落する手持ちの銀貨から新銀貨に交換しようとするも敵対している公爵家と表立っては交渉できない。
彼らは懇意にしている商人に依頼したが、依頼主が貴族だと判明した途端、公爵家が交換を拒否しているとのことであった。
公爵家御用達商人であるラウールの商会を頼る貴族もいたが、銀貨以外の商談に応じると連れない返事をうける。そこで他の商人か、闇ルートに頼らざるを得ない状況になるも、そこでの交換比率は公爵家が表明しているレートよりも数段悪い。交換に手間取る間に、旧銀貨の価値はさらに下落していき、彼らは資産を目減りさせ続けるという八方ふさがりの状況に陥っていた。
一部の貴族たちは思った。信頼できぬ王家などよりも、今必要としている銀貨を融通してくれるミレーヌを頼った方がいいのではないかと。
そんな中、ある貴族の行動が注目を集める事となる。その貴族の名前は、ソアン・ペシオ伯爵。グラッセ公爵領と隣接した地方貴族であった。
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