傲慢な世界よ、私が壊してあげるわ~公爵令嬢に転生したOLは悪の覇道を突き進む

かずまさこうき

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第五章 崩壊編

第96話 挑戦状

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 ペシオ伯爵がミレーヌに隷属したとの情報は、瞬く間に国内の貴族社会を駆け巡った。その理由は、領地を返上する代わりに爵位に応じた多額の年金が貰えるという、あまりにも魅力的な内容であった。
 数日後、新たに二つの男爵家がミレーヌに隷属し、翌日にはドロール子爵、その次の日にはペロー侯爵までが続いた。これらの貴族は、みなラウール商会から借財していた者ばかりだったが、そうした経済的な事実は一切伏せられていた。
 
 その後、雪崩を打つようにミレーヌに隷属する貴族が増え始め、一ヵ月も経たないうちに、大小あわせて百家以上の貴族がミレーヌ隷属した。国内の貴族の約三分一程度がミレーヌの支配下になったのである。
 
 その報を受けたエドワード国王は激怒した。家臣たちの前でこう言い放った。
「ミレーヌ討伐せよ!」と。しかし、誰も賛同しようとしない。そもそも終戦協定を締結していない以上、討伐令は未だに生きており、法的になにかする必要はなかった。そして現実的な問題として、国王の命令に賛同する貴族がほとんど見当たらないからであった。

 家令のジブリルが落ち着いた声で国王に進言した。

「先ほどの出兵で貴族は疲弊しています。まずは、ジュノイー侯爵に相談されてはいかがでしょうか?」

 エドワード国王は、ジブリルの威圧感に圧倒され、「そうだな分かった」と言ったのみで、退室した。

 その日の夜、いつものようにエドワード国王は王妃セリアの体に溺れた。その行為ののち、セリアは、エドワードを慰める。

「陛下も、お疲れのご様子。父も王都に来るのに時間がかかるので、明日は、モラン将軍などを連れて王都の近郊で狩などされてはいかがでしょうか。侍女たちが騎士たちから聞いたところ良い狩場が見つかったという話ですし」
「そうか……ではいってみるかな」

 こうして最後の夫婦の夜を二人は過ごした。

◆◇◆◇

 翌日の夕刻、エドワード国王が行方不明になったとセリアに報告が入った。モラン将軍と狩をしている最中に急に居なくなったとのこと。今八方探索をしているとの報告を受けたセリアは、報告に来た者に向かって「国王陛下をなんとしても探して」と懇願した。

 数日たってもエドワード国王は見つからない。このままでは国王不在という事態が王宮外に漏れるのも時間の問題であった。家令のジブリルはどうしたものかと思案していると、王妃セリアが家臣を招集するので謁見の間に集まるよう伝達があった。

 特に相談もなく家臣をあつめるとはと内心憤慨しながら、ジブリルは謁見の間に向かった。そこには筆頭書記官のマルセルやオーブリー次席書記官などの文官のほか、モラン将軍やアイヤゴン将軍が既に控えていた。なぜ将軍たちがと不審に思った時に、王妃セリアが入室した。皆が跪くと、セリアは宣言した。

「国王の不在は、カッツー王国の危機です。王がお戻りになるまで私が代わりに国事を見ることとします」

 その言葉を聞いた家令ジブリルは真っ先に反意を伝えた。

「失礼ですが、王妃が国事を代行する法的根拠はございません。国事を代行できるのは直系の尊属に限ります」
「わかりました。他に反対のものは?」

 セリアが尋ねると誰も反対はしない。ジブリルは、もしかしてこの女は、自分以外のこの場にいる者すべて手を回していたのかと愕然とした。するとセリアは言い放った。

「ジブリルは体調が悪いようですので、直ちに休ませなさい」

 何か言おうとすると、モラン将軍が指図した衛兵がジブリルの口に布を巻き連行していった。彼はなにをわめいていたが、誰もが何を言ってるのか分からなかった。それを見たセリアは満足気に言った。

「改めて宣言します。エドワード国王がお戻りになるまで、このカッツー王国の国事を私が見ます。異議あるものはいませんね」

 残ったものは、みな跪き、所作で同意した。こうしてセリアは王権を握った。あとは邪魔な貴族を排除するだけだった。

◇◆◇◆

 数日後、セリアの元に報告が入った。ミレーヌが傘下になった貴族に新たな爵位を与えたことが報告される。例えば、ペシオ伯爵には侯爵位を、ペロー侯爵には準公爵位をと、従前の爵位よりも高い爵位を与えた。爵位の授与は王しかできない絶対的な権限であり、これは王家への挑戦状であった。セリアは、使者の前では平静を装ったが、自室に戻った瞬間、その仮面をかなぐり捨てた。

「爵位の授与だと……! あの女、私がやっと手に入れた王の絶対的な権限を、公然と踏みにじったのか!」

 彼女の瞳は、激しい屈辱と怒りの炎で燃え上がり、近くにあった高価な花瓶を掴み、壁に叩きつけた。花瓶は砕け散り、その破片がセリアの足元に散乱する。

「殺す! 絶対に殺してやる! この国の全ては私のものだ。それを壊そうとするあの女は、この世で一番むごい方法で殺してやる」

 執事のアルビンが、そこまで激怒したセリアを見たのは初めてだった。

 そのころミレーヌは、執務室で、アールグレイを優雅に飲んでいた。笑みを浮かべながら。
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