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16.ウルの街
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「拙者たちは安宿でござるなぁ……」
安全のために人数を固めて泊まるのだが、男子の中でも余った砂沸は、同じく一緒に泊まってくれる人がいない浜和と、白亜亭に泊まる京極と離れた河原と一緒に泊まることなっていた。
砂沸は肩を落として、すきま風が通る木造の冒険者の家という名前のボロ宿に泊まりにきた。
ところどころ朽ちた、ボロい木の扉を開ける。
「ごめんくださいでござるよ」
三人が中に入ると、木の床がギシギシと軋んだ。
「あん?兄ちゃんたち泊まりか?」
少し歳のいった武装髭の男が、水の入ったバケツを運びながら聞いてくる。
「あっ、えっと……」
浜和が小さい声でいいよどむ。
「ちっ」
それに河原が舌打ちをして空気が悪くなる。慌てて砂沸が男と話す。
「そうでござる!連泊するゆえ、食事もつけて欲しいでござる」
いいながら砂沸が、首にかけた王家の紋章が描いてある魔法の金属板を見せた。
「おぉ!冒険者の家にようこそ。俺は店主のジュンクだ、よろしくな!」
王家の紋章を見た途端にジュンクの態度が友好的になった。
「食事付きなら三人で一泊、銀貨一枚にまけとくよ」
気前よく値引きしてくれるジュンクに砂沸は泊まることを伝えて、鍵を受け取った。
ベットが部屋の四隅に置いてあり、天井のレールに目隠しのカーテンがついている。それ以外には、丸いサイドテーブルとイス、衣装棚があるだけの簡素な部屋だ。
「おい、俺は寝るから陰キャ二人は出ていけ」
河原はベットに寝転んで、それに逆らえない二人は外で暇を潰すことにした。
「あの……、拙者オタクでござるが、仲良くしてくれたら嬉しいでござる」
砂沸は浜和に手を差し出す。
「なに?僕は選ばれた人間なんだよ。気安く話しかけないでくれるかな」
「ごっ、ごめんでござるよ。じゃあ、拙者は一人で街を見てくるでござる……」
砂沸は気を使って、どこかへ行った。
「ふんっ、僕にふさわしい冒険の仲間でも集めに行くか」
聖野や京極みたいにステータスが高くない、ほとんどのクラスメイトはダンジョンの低層と外の魔物を倒すのが仕事になるけど、優秀なスキルを持つ僕が、雑魚を相手にすると思ったら大間違いだ。
まずは冒険者ギルドで冒険者になる。ってもう職業は冒険者なんだけど。
僕は冒険者ギルドの扉を開いた。
あれっ?まずは乱暴なムキムキの荒くれ冒険者おっさんに絡まれるはずなのに、そんな人居ないどころか冒険者の数が少ないぞ。僕が片手間に荒くれを吹き飛ばして、それを見たギルドマスターがSSSランクの実力者に違いないとかいって高ランクパーティが僕を取り合って、仕方なく美少女だらけのパーティに入ってやって伝説のドラゴンとかを討伐するはずなのに。
仕方ない、まずは冒険者登録だ。僕は胸の大きい女性職員を選んで話しかける。
「あのー、冒険者登録したんですけど……」
「あなた召喚された勇者の仲間でしょ。冒険者なんかしてないで、魔物を倒してきてください」
キツい口調でいわれて、たじろぐ。
「えっ……、あの……」
「はいはい、出て行ってね」
僕は冒険者ギルドから追い出されてしまった。
◇
サンスロウを目指すロクロたちは、ウルの街に到着した。
「……ロクロ、起きてください」
仰向けで寝ているロクロに、ロゼッタが覆いかぶさって耳元でささやく。
「うおっ」
目が覚めるとロゼッタに床ドンされていた。恋愛ドラマで見たことはあったけど、現実でもやる人いるんだな。
「おはよう。ロゼッタ」
「はい、おはようございます!」
ガタガタと揺れる馬車と一緒に、エルザのポニーテールが揺れる。
「そろそろ着くぞ」
エルザの声にロゼッタとともに荷台から顔を出す。
ウルの街が見えてきた。石垣の向こうには、大きな建物が立ち並んでいる。
王都の建物も大きかったけど、ウルの街の建物はさらにデカい。
「おーい、止まれーー」
オラはいつも通り、木の柵の門で手を振った。
馬車の御者台には黒髪の男と、甲冑の頭を被った男?女?が座っている。
「ウルの街へようこそ!行商ですか」
「はい、武器を売っています」
黒髪の男が答えた。
「そうですか。一応荷台の中を確認させてもらいますけど、いいですか」
聞きながら、いつものように荷台を確認する。
「えーっと。武器に防具に……」
「はい、通ってもいいですよ」
オラは柵を開けていつも通り行商人を通した。
「今日もいい天気だなぁ」
◇
「無事に入れたな」
エルザの行商人作戦が功を奏した。
ウルの街の大きな建物には『倉庫』の看板がかかっている。この街は倉庫街なんだろうか。
王都と違い、石畳みの道はなく、土がむき出しだ。
「馬を休ませるのと……、私たちの宿を取ろうか」
エルザのいう通り、宿に向かって馬を走らせる。
厩舎に馬を入れて、鳥籠亭と掲げられた宿に入った。
「おやおや、いらっしゃいませ」
恰幅のいい背の低いおじさんが、カウンターの椅子から立ち上がった。
「三人で二泊お願いしたいんですが」
「三名ですね。お客さんついてましたよ、ちょうど最後の部屋でしたから」
おじさんは帳簿を書きつつ蓄えた髭を撫でた。
「食事は酒場で食べられますので、ぜひ寄って行ってくださいね」
おじさんに銀貨六枚を支払って三階の部屋に入る。
「ロクロ、次はどうするんだ?」
「私、街を見て回りたいです!」
エルザに答える前にロゼッタが前のめりに話す。
「そうだな、まずは街を見に行こう」
「拙者たちは安宿でござるなぁ……」
安全のために人数を固めて泊まるのだが、男子の中でも余った砂沸は、同じく一緒に泊まってくれる人がいない浜和と、白亜亭に泊まる京極と離れた河原と一緒に泊まることなっていた。
砂沸は肩を落として、すきま風が通る木造の冒険者の家という名前のボロ宿に泊まりにきた。
ところどころ朽ちた、ボロい木の扉を開ける。
「ごめんくださいでござるよ」
三人が中に入ると、木の床がギシギシと軋んだ。
「あん?兄ちゃんたち泊まりか?」
少し歳のいった武装髭の男が、水の入ったバケツを運びながら聞いてくる。
「あっ、えっと……」
浜和が小さい声でいいよどむ。
「ちっ」
それに河原が舌打ちをして空気が悪くなる。慌てて砂沸が男と話す。
「そうでござる!連泊するゆえ、食事もつけて欲しいでござる」
いいながら砂沸が、首にかけた王家の紋章が描いてある魔法の金属板を見せた。
「おぉ!冒険者の家にようこそ。俺は店主のジュンクだ、よろしくな!」
王家の紋章を見た途端にジュンクの態度が友好的になった。
「食事付きなら三人で一泊、銀貨一枚にまけとくよ」
気前よく値引きしてくれるジュンクに砂沸は泊まることを伝えて、鍵を受け取った。
ベットが部屋の四隅に置いてあり、天井のレールに目隠しのカーテンがついている。それ以外には、丸いサイドテーブルとイス、衣装棚があるだけの簡素な部屋だ。
「おい、俺は寝るから陰キャ二人は出ていけ」
河原はベットに寝転んで、それに逆らえない二人は外で暇を潰すことにした。
「あの……、拙者オタクでござるが、仲良くしてくれたら嬉しいでござる」
砂沸は浜和に手を差し出す。
「なに?僕は選ばれた人間なんだよ。気安く話しかけないでくれるかな」
「ごっ、ごめんでござるよ。じゃあ、拙者は一人で街を見てくるでござる……」
砂沸は気を使って、どこかへ行った。
「ふんっ、僕にふさわしい冒険の仲間でも集めに行くか」
聖野や京極みたいにステータスが高くない、ほとんどのクラスメイトはダンジョンの低層と外の魔物を倒すのが仕事になるけど、優秀なスキルを持つ僕が、雑魚を相手にすると思ったら大間違いだ。
まずは冒険者ギルドで冒険者になる。ってもう職業は冒険者なんだけど。
僕は冒険者ギルドの扉を開いた。
あれっ?まずは乱暴なムキムキの荒くれ冒険者おっさんに絡まれるはずなのに、そんな人居ないどころか冒険者の数が少ないぞ。僕が片手間に荒くれを吹き飛ばして、それを見たギルドマスターがSSSランクの実力者に違いないとかいって高ランクパーティが僕を取り合って、仕方なく美少女だらけのパーティに入ってやって伝説のドラゴンとかを討伐するはずなのに。
仕方ない、まずは冒険者登録だ。僕は胸の大きい女性職員を選んで話しかける。
「あのー、冒険者登録したんですけど……」
「あなた召喚された勇者の仲間でしょ。冒険者なんかしてないで、魔物を倒してきてください」
キツい口調でいわれて、たじろぐ。
「えっ……、あの……」
「はいはい、出て行ってね」
僕は冒険者ギルドから追い出されてしまった。
◇
サンスロウを目指すロクロたちは、ウルの街に到着した。
「……ロクロ、起きてください」
仰向けで寝ているロクロに、ロゼッタが覆いかぶさって耳元でささやく。
「うおっ」
目が覚めるとロゼッタに床ドンされていた。恋愛ドラマで見たことはあったけど、現実でもやる人いるんだな。
「おはよう。ロゼッタ」
「はい、おはようございます!」
ガタガタと揺れる馬車と一緒に、エルザのポニーテールが揺れる。
「そろそろ着くぞ」
エルザの声にロゼッタとともに荷台から顔を出す。
ウルの街が見えてきた。石垣の向こうには、大きな建物が立ち並んでいる。
王都の建物も大きかったけど、ウルの街の建物はさらにデカい。
「おーい、止まれーー」
オラはいつも通り、木の柵の門で手を振った。
馬車の御者台には黒髪の男と、甲冑の頭を被った男?女?が座っている。
「ウルの街へようこそ!行商ですか」
「はい、武器を売っています」
黒髪の男が答えた。
「そうですか。一応荷台の中を確認させてもらいますけど、いいですか」
聞きながら、いつものように荷台を確認する。
「えーっと。武器に防具に……」
「はい、通ってもいいですよ」
オラは柵を開けていつも通り行商人を通した。
「今日もいい天気だなぁ」
◇
「無事に入れたな」
エルザの行商人作戦が功を奏した。
ウルの街の大きな建物には『倉庫』の看板がかかっている。この街は倉庫街なんだろうか。
王都と違い、石畳みの道はなく、土がむき出しだ。
「馬を休ませるのと……、私たちの宿を取ろうか」
エルザのいう通り、宿に向かって馬を走らせる。
厩舎に馬を入れて、鳥籠亭と掲げられた宿に入った。
「おやおや、いらっしゃいませ」
恰幅のいい背の低いおじさんが、カウンターの椅子から立ち上がった。
「三人で二泊お願いしたいんですが」
「三名ですね。お客さんついてましたよ、ちょうど最後の部屋でしたから」
おじさんは帳簿を書きつつ蓄えた髭を撫でた。
「食事は酒場で食べられますので、ぜひ寄って行ってくださいね」
おじさんに銀貨六枚を支払って三階の部屋に入る。
「ロクロ、次はどうするんだ?」
「私、街を見て回りたいです!」
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