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18.冒険者ギルド
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「ロクロは女物の服に興味があるのですか」
ロゼッタが引き気味に聞いてくる。
「やめておけ、ロクロ。そういう趣味はハマると抜け出せなくなるぞ」
エルザも妙な心配をしてくる。
「違うよ、ロゼッタの目隠しにちょうどいいと思ってさ」
呪いを極力漏らさないように不自然な目の動きをするロゼッタには、目隠しが必要だと思ったのだ。
目の細かいレース生地なら目隠しにしても透けて見えるし、盲目という設定にしておけば怪しまれないと考えたのだ。
「なるほど!確かに目を不自然に閉じてたら、怪しまれますよね」
合点がいったように手をポンと打つロゼッタ。
「お客さーん、あったよ」
おばさんがレースを持って店の奥から戻って来た。
「一巻きでいいかい?」
「はい、それとこの服もお願いします」
俺は花柄のワンピースもおばさんに渡す。
「ロクロ、私に女物は……」
「いいんじゃないか。似合うって、ロゼッタもいってただろ?」
「しかし……」
俯いて、もじもじとするエルザ。
「銀貨七枚と銅貨五枚だよ」
おばさんがニコッと笑う。
「銀貨八枚だね。あいよ!」
お釣りの銅貨五枚と、服の入った包みを受け取って店を出る。
「エルザ嬉しそうだね」
先を歩くエルザについて行く後ろで、ロゼッタが小声で話す。
「そうだな。俺も嬉しいよ」
エルザも女性なんだし、無骨な鎧以外の服も必要だと思うのだ。そんなことを話していると冒険者ギルドの前まで来ていた。
「じゃあ、待っていてくれ。冒険者登録してくるから」
俺はレンガ造りの大きな建物に入る。
城で事前にエルザと逃亡計画を立てていた。冒険者になるのもその一環だ。
「私は行かなくていいのですか」
「姫が行っては、騒ぎになりかねませんので」
冒険者ギルドに足を踏み入れた。目の前には俺の背よりも高くて大きな掲示板があり、左側には受付のカウンター、右側には食堂が併設してある。
俺は受付の、線の細い男性職員に話しかける。
「すみません、冒険者登録したいんですが」
「冒険者登録ですね。以前にどこかの国で登録されていますか?」
怪しまれている感じはしないけど、この国の人と顔が違うから聞かれているんだろうか。
「いえ、初めてです」
「……そうですか」
受付の男性が水晶をカウンターの上に出す。
「この水晶でステータスを測ってください。名前とステータスを冒険者カードに刻印すれば登録完了です」
俺は水晶に手を翳す。この世界に召喚された時に見た水晶と同じようなものだろうか。
体力 356
魔力 286
攻撃力 104
防御力 205
素早さ 345
俺が自分で調べたステータスより、だいぶ低い数値が出た。なぜなんだろうか。
「300、200……、なかなか良いステータスですね。お名前は?」
「ロクロです」
「ロクロ様ですね。冒険者カードを作成してきますので、少々お待ちください」
しばらくして、カウンセラー奥の扉から出てきた職員の手には銅色の板が握られていた。
「こちらがロクロ様の冒険者カードになります。冒険者のランクはAからGまでの七段階があります。通常であれば、Gランクからのスタートになるのですが、ステータスが高いのでFランクで作成しています」
俺は冒険者カードを見てみる。タバコの箱ぐらいの大きさの銅色の薄い板に、名前とステータス、冒険者ランクが刻印してある。
「Fランクまでのクエストを受けられるので、死なないようにランクを上げて行ってくださいね。ランクはクエストをクリアしていくとランクアップといって、一つ上のランクに昇格できます。ランクアップしていくと受けられるクエストが増えますので、収入を増やすならランクアップを目指してみてください」
冒険者ギルドのルールは大体わかったので、お礼をいって外に出る。
「無事に作れたよ」
エルザとロゼッタに冒険者カードを見せる。
「Fランクか。あまり強くなさそうだな」
「下から数えて二番目だよ」
「冒険者ってかっこいいわね!」
ロゼッタが興奮気味に冒険者カードを眺める。
「そうなのか?」
掲示板に貼られた依頼書には薬草採取や魔物討伐と書かれたものが多かったけど、俺の中での冒険者のイメージといったら教科書に載っていたマルコポーロだ。かっこいいかといわれると、そうでもないと思う。
「物語りに出てくるんですよ!次々と現れる魔物を倒したり、ダンジョンの奥地から伝説のアイテムを手に入れたりするんです!」
「そうなのか、確かにかっこいいかもしれないな。でも、まだお金に余裕はあるし、しばらくは冒険なんてしないんだけどな」
城中を探し回って、お金を集めてきたしエルザの貯金も結構ある。冒険者になったのは旅をしていても不審に思われないためだ。隣町に荷物を運んでるとかいえば怪しくないはずだ。
俺の計画とは裏腹に、冒険をしたいロゼッタはぷくーっと頬を膨らませて怒っていた。
ロゼッタが引き気味に聞いてくる。
「やめておけ、ロクロ。そういう趣味はハマると抜け出せなくなるぞ」
エルザも妙な心配をしてくる。
「違うよ、ロゼッタの目隠しにちょうどいいと思ってさ」
呪いを極力漏らさないように不自然な目の動きをするロゼッタには、目隠しが必要だと思ったのだ。
目の細かいレース生地なら目隠しにしても透けて見えるし、盲目という設定にしておけば怪しまれないと考えたのだ。
「なるほど!確かに目を不自然に閉じてたら、怪しまれますよね」
合点がいったように手をポンと打つロゼッタ。
「お客さーん、あったよ」
おばさんがレースを持って店の奥から戻って来た。
「一巻きでいいかい?」
「はい、それとこの服もお願いします」
俺は花柄のワンピースもおばさんに渡す。
「ロクロ、私に女物は……」
「いいんじゃないか。似合うって、ロゼッタもいってただろ?」
「しかし……」
俯いて、もじもじとするエルザ。
「銀貨七枚と銅貨五枚だよ」
おばさんがニコッと笑う。
「銀貨八枚だね。あいよ!」
お釣りの銅貨五枚と、服の入った包みを受け取って店を出る。
「エルザ嬉しそうだね」
先を歩くエルザについて行く後ろで、ロゼッタが小声で話す。
「そうだな。俺も嬉しいよ」
エルザも女性なんだし、無骨な鎧以外の服も必要だと思うのだ。そんなことを話していると冒険者ギルドの前まで来ていた。
「じゃあ、待っていてくれ。冒険者登録してくるから」
俺はレンガ造りの大きな建物に入る。
城で事前にエルザと逃亡計画を立てていた。冒険者になるのもその一環だ。
「私は行かなくていいのですか」
「姫が行っては、騒ぎになりかねませんので」
冒険者ギルドに足を踏み入れた。目の前には俺の背よりも高くて大きな掲示板があり、左側には受付のカウンター、右側には食堂が併設してある。
俺は受付の、線の細い男性職員に話しかける。
「すみません、冒険者登録したいんですが」
「冒険者登録ですね。以前にどこかの国で登録されていますか?」
怪しまれている感じはしないけど、この国の人と顔が違うから聞かれているんだろうか。
「いえ、初めてです」
「……そうですか」
受付の男性が水晶をカウンターの上に出す。
「この水晶でステータスを測ってください。名前とステータスを冒険者カードに刻印すれば登録完了です」
俺は水晶に手を翳す。この世界に召喚された時に見た水晶と同じようなものだろうか。
体力 356
魔力 286
攻撃力 104
防御力 205
素早さ 345
俺が自分で調べたステータスより、だいぶ低い数値が出た。なぜなんだろうか。
「300、200……、なかなか良いステータスですね。お名前は?」
「ロクロです」
「ロクロ様ですね。冒険者カードを作成してきますので、少々お待ちください」
しばらくして、カウンセラー奥の扉から出てきた職員の手には銅色の板が握られていた。
「こちらがロクロ様の冒険者カードになります。冒険者のランクはAからGまでの七段階があります。通常であれば、Gランクからのスタートになるのですが、ステータスが高いのでFランクで作成しています」
俺は冒険者カードを見てみる。タバコの箱ぐらいの大きさの銅色の薄い板に、名前とステータス、冒険者ランクが刻印してある。
「Fランクまでのクエストを受けられるので、死なないようにランクを上げて行ってくださいね。ランクはクエストをクリアしていくとランクアップといって、一つ上のランクに昇格できます。ランクアップしていくと受けられるクエストが増えますので、収入を増やすならランクアップを目指してみてください」
冒険者ギルドのルールは大体わかったので、お礼をいって外に出る。
「無事に作れたよ」
エルザとロゼッタに冒険者カードを見せる。
「Fランクか。あまり強くなさそうだな」
「下から数えて二番目だよ」
「冒険者ってかっこいいわね!」
ロゼッタが興奮気味に冒険者カードを眺める。
「そうなのか?」
掲示板に貼られた依頼書には薬草採取や魔物討伐と書かれたものが多かったけど、俺の中での冒険者のイメージといったら教科書に載っていたマルコポーロだ。かっこいいかといわれると、そうでもないと思う。
「物語りに出てくるんですよ!次々と現れる魔物を倒したり、ダンジョンの奥地から伝説のアイテムを手に入れたりするんです!」
「そうなのか、確かにかっこいいかもしれないな。でも、まだお金に余裕はあるし、しばらくは冒険なんてしないんだけどな」
城中を探し回って、お金を集めてきたしエルザの貯金も結構ある。冒険者になったのは旅をしていても不審に思われないためだ。隣町に荷物を運んでるとかいえば怪しくないはずだ。
俺の計画とは裏腹に、冒険をしたいロゼッタはぷくーっと頬を膨らませて怒っていた。
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