【クラス転移】復讐の剣

ぶどうメロン

文字の大きさ
24 / 49

22.小さな出会い

しおりを挟む
「忠誠のめいと死する者、守護の誓い『アースウォール!!』」

 巨大な岩の壁が棍棒を受け止めるために次々とせり出す。
 バコン!!と一枚目の岩の壁を砕きながら、止まらない棍棒。

 二枚、三枚と次々に粉砕しながら、最後の一枚とぶち当たる。

「止まった……?」
 エルザの隣にいたロゼッタがつぶやく。

 岩の壁にめり込んで、巨大な棍棒は静止していた。

「姫、ここに居てください」
 エルザは抜刀すると、素早くこちらに向かって走ってくる。

「ロクロ、予備の剣だ。受け取れ」
 エルザから剣を受け取って、ギガストロールに接近する。

 ギガストロールは近場の大木を引き抜くと、両手に装備して攻撃を始めた。

「くっ……」
 ロベルトがラッセルを守るが、二人まとめて吹き飛ばされる。

「『フレイムスパイク!』」「『ロックスパイク!』」
 衛兵たちが四方八方を取り囲み、魔法を付与した槍で攻撃する。

「グオオォオオオオオ…………」
 ギガストロールは大木を振り回して応戦するも確実に弱ってきていた。

「我が覇道は魔を滅す『ファイアボール!』」「我が覇道は魔を滅す『ファイアボール!』」
 後方から火の玉がギガストロールに飛んでいく。

「オオオオォ!!」
 ギガストロールは持っている大木で攻撃を受け止めると、木が激しく燃え上がった。

「グオォオオオオオオオォオオオオオオオ!!」
 燃え上がった大木を振り回して攻撃するギガストロール。

「くそっ!厄介な攻撃だな」
 ラッセルがハルバードで受け流しながら転がって避ける。

「オオォォォオオオオオオオオォオオオオォオオォォオオ!!」
 魔法使い目掛けて両手の燃えた大木を投げつけるギガストロール。

「あっ、危ない!」
 俺は飛んで行く大木を見送ることしかできなかった。その先にはロゼッタがいるのに。

「エルザ止めてくれ!」

「無理だ、もう魔力が残っていない……」

 私の目の前には守るべき民が居る。このままでは私もまとめて飛んでくる木に押しつぶされて死んでしまう。そうはさせない、私が守る。物語りの主人公みたいに。

「私にも力を、…………守る力を。お願いっ!」
 祈りが力に変わる。ロゼッタの周りを水流が覆い、それが塊になって飛んで行く。飛翔する燃えた大木を粉砕し、そのままギガストロールにぶつかり、吹き飛んだ。

「グオオォオオオ…………」
 土埃を巻き上げて、ギガストロールは最後の呻き声を上げると力尽きた。

「やっ、やったぞ!!」
 ラッセルが勝ちどきを上げた。

「おおおおおおおおおおおおお!!」
 衛兵たちも槍を掲げて喜ぶ。その数瞬後に街から爆炎が昇った。

「もう一本が……。エルザ、行こう」
 俺たちは急いで街へ戻る。

「『ウォーターシャワー!』」「『ウォーターボール!』」
 街では急いで消火活動が行われていた。

「備蓄の小麦が!!なんてことだ……、あれがなければ我が国は…………」
 商人らしき小太りの男が、青い顔で冷や汗をボタボタと垂らしながら膝をついて項垂れていた。

「街に被害が出たか……。調査の兵が来るぞ」
 エルザが警告してくる。

「ロゼッタ、もう街から出よう」
 俺はエルザの助言通り、街から出る準備を始める。

「ロクロ、街の人が困っています。手伝ってあげましょう?」
 ロゼッタは優しさからか、そんなことをいってくる。

「手伝いたいのは、やまやまだが今は逃げるのが先決なんだよ」
 国の兵士に見つかれば必ず捕まる。わざわざクラスメイトたちと反対の方向に来た意味がない。

「それでも、民を見捨てれないのです!」

「姫、捕まれば元も子もないのです。諦めてください」
 ロゼッタに甘いエルザも、これには賛成できなかった。

「魔法使いが消火してるから大丈夫だよ。だから行こう」
 もう、茶太郎とシュネールツシルトは走る準備を終えている。

「…………」
 ロゼッタは不服そうに荷台に乗った。

 俺は手綱を握り街を出る。そこに、先頭で戦っていた冒険者が話しかけてきた。

「おーい!あんちゃん、さっきは助かったぜ。俺は光の牙のラッセルだ」

「はあ、どうも。すみませんが急いでますので……」
 俺は一刻も早くこの街から出ることしか頭になかった。

「もう発つのか?報酬だけでも貰っていけよ」

「エルザ、ちょっと待っててくれ」
 金か、なら話は別だ。俺は馬車を止めて手早く冒険者ギルドへ向かう。

「おや、ロクロ様とラッセル様」
 冒険者カードを作った時の男性職員が書類を作成していた。

「よお!ギガストロールの討伐金くれよ」
 ラッセルはいつものやり取りといった風に軽い口調だ。

「はいはい、金貨六十枚です」
 ラッセルはサッと革袋にしまうと、俺を見てニイッと笑う。

「あんちゃんにも、ほら」

 職員の男性が金貨をカウンターに出す。

「ロクロ様には金貨十八枚になります」

「あの、ギルドに登録してない仲間でも討伐金って貰えたりしませんか?」
 一応聞いておく、手持ちが増えればそれだけで安心できる。

「戦いでの貢献次第ですが出ますよ」

「それなら大貢献だぜ!街の魔法使いを守っただろ、後ギガストロールにトドメを刺した姉ちゃんも居るんだぜ!」

「あの方たちですね…………、それなら金貨をもう四十五枚出しておきます」

「ありがとうございます」
 俺は合計六十三枚もの金貨を手に入れて踵を返す。

「あんちゃん、また会おうぜ!」

「ご無事で」

「ありがとうございました。いつかまた、どこかで」
 あって間もない、二人見送られて俺は馬車に戻った。

「なんだか嬉しそうだな」
 御者台の隣に座ったエルザがそんなことをいう。

「そうかな?……そうかもね」
 無自覚だったけど、俺は笑っているみたいだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...