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第八話
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魔法は創造魔法と火魔法。 新しく生活魔法。 これは良い……問題は今まで出てなかったスキル。
魔力操作『極』、自然魔力回復『極』、言語理解。
何んだよ、極って! 絶対おかしいだろ!
後で……いや今だ! 情報は早い内が良い。
「魔術学園だからか? めっちゃぶ厚いな」
日本の教科書は多くても三百五十ページだと思う。
「この教科書、五百ページまであるぞ……もう辞書だろ」
パラパラと目的のページまでめくり、魔力操作についての解説を読む内に、いつの間にか日が暮れていった。
親元を離れて寮で生活している生徒が授業を終え帰寮する。 何人かは見慣れない札に気づき、話に花を咲かせる。
階下でまさか自分の話をしているとは思ってもいないトールは、魔力操作だけではなく教科書を最初から読み進めていた。
「なあ、サム。 トール・カグヤって誰だ?」
「知らねえ、初めて聞いた」
「俺の隣の部屋なんだよ」
サムと呼ばれた少年は興味がないのか、帰寮するなり早々に部屋に入ってしまう。
残された少年は寮母さんなら何か知ってると思い、着替えて足早に降りていった。
談話室では既に新しく入った、トールという少年の話で持ち切りだった。
「モルテ、俺の部屋の隣に新しい奴が入ったんだけど、どんな奴なんだ?」
「他の人だっているのに、トイはモルテの事が好きなんだー。 皆、トイがモルテの事好きだってー」
「おい、リーベ!言ってないだろ!」
思わず出た言葉に、恐る恐る振り返る。
「トイは私の事、嫌いなんだ」
「い、いや嫌いとは、言ってないだろ」
その言葉に、リーベと呼ばれた少女が追い打ちをかける。
「好きとも言ってないよね」
そんないつものやり取りをしていると、夕食の時間になり話は自然と消えていく。
◇
「食べながらで良いから聞いておくれ。 明日から学園に新入生が入るよ、一年生だ。 部屋には、いると思うんだけど夕食の時間を伝え忘れちまってね、それで降りて来てないんだと思うよ。 だからトイ、後で持って行ってやりな。 名前は、トール・カグヤ。 時期外れで平民だよ。 仲良くしてやんな」
お腹も体格も大きなガキ大将のような少年が、食堂に響く程大きな声で話す。
「おい聞いたか? 平民だとよ! 平民ならCクラスだな!」
このガキ大将は、貴族であり学園長が話していた、平民を見下している内の一人なのだ。
「ブラット、あんたは確か、Bクラスだったね? 平民だからといって見下すのは良くないよ。 何せトールは、Aクラスだからね」
ブラットと呼ばれたガキ大将の新たな標的が、まさか優秀なAクラスとは思わず食堂は一瞬、静寂に包まれた。
Aクラスという事は、魔術師になる可能性があるという事。 さすがにガキ大将とは言え、貴族としての体面もある。 下手な事は出来ない、とブラットは唇を噛むしかなかった。
◇
コンコン
ようやく教科書の半分にいったところで、休憩をしようと寝具に腰掛けたところでノックが聞こえた。
「どうぞ」
「入るぞー。 初めましてだな、トール。 俺はトイフェル・スタッグ、夕食持って来たぞ」
入って来たのは寮母さんではなく、少し輝いて見える銀髪に薄い紫の瞳をした、世間一般的に見てもイケメンの部類に入る、少年だった。
トイフェルは食事の載ったトレーを受け取るトールに、尋ねてみた。
「何で、二年の授業範囲を開いてんだ?」
「え、これ一冊で一年じゃないの」
「そんな訳あるかよ。 教科書はそれ一冊で三年分だ」
トールが一年分だと考えていた教科書が、まさか三年分だったとは思いもよらず、苦労して読み進めた自分を思い出して乾いた笑い声を出した。
突然笑い出したトールに、若干引き気味になるトイフェルは更に尋ねた。
「何でそんなに笑う事があるんだ?」
「いや、ごめん。 このぶ厚さで一年分だと思って、読み進めてた自分がおかしくて」
それを聞いた彼もまた、トールが苦戦しながらも必死に読み進める様子を考えて、笑った。
「トイフェルだったね。 僕はトール・カグヤ、よろしく」
「トイで良い。 皆そう呼んでる」
僕達は、自然と握手を交わしたのだった。
魔力操作『極』、自然魔力回復『極』、言語理解。
何んだよ、極って! 絶対おかしいだろ!
後で……いや今だ! 情報は早い内が良い。
「魔術学園だからか? めっちゃぶ厚いな」
日本の教科書は多くても三百五十ページだと思う。
「この教科書、五百ページまであるぞ……もう辞書だろ」
パラパラと目的のページまでめくり、魔力操作についての解説を読む内に、いつの間にか日が暮れていった。
親元を離れて寮で生活している生徒が授業を終え帰寮する。 何人かは見慣れない札に気づき、話に花を咲かせる。
階下でまさか自分の話をしているとは思ってもいないトールは、魔力操作だけではなく教科書を最初から読み進めていた。
「なあ、サム。 トール・カグヤって誰だ?」
「知らねえ、初めて聞いた」
「俺の隣の部屋なんだよ」
サムと呼ばれた少年は興味がないのか、帰寮するなり早々に部屋に入ってしまう。
残された少年は寮母さんなら何か知ってると思い、着替えて足早に降りていった。
談話室では既に新しく入った、トールという少年の話で持ち切りだった。
「モルテ、俺の部屋の隣に新しい奴が入ったんだけど、どんな奴なんだ?」
「他の人だっているのに、トイはモルテの事が好きなんだー。 皆、トイがモルテの事好きだってー」
「おい、リーベ!言ってないだろ!」
思わず出た言葉に、恐る恐る振り返る。
「トイは私の事、嫌いなんだ」
「い、いや嫌いとは、言ってないだろ」
その言葉に、リーベと呼ばれた少女が追い打ちをかける。
「好きとも言ってないよね」
そんないつものやり取りをしていると、夕食の時間になり話は自然と消えていく。
◇
「食べながらで良いから聞いておくれ。 明日から学園に新入生が入るよ、一年生だ。 部屋には、いると思うんだけど夕食の時間を伝え忘れちまってね、それで降りて来てないんだと思うよ。 だからトイ、後で持って行ってやりな。 名前は、トール・カグヤ。 時期外れで平民だよ。 仲良くしてやんな」
お腹も体格も大きなガキ大将のような少年が、食堂に響く程大きな声で話す。
「おい聞いたか? 平民だとよ! 平民ならCクラスだな!」
このガキ大将は、貴族であり学園長が話していた、平民を見下している内の一人なのだ。
「ブラット、あんたは確か、Bクラスだったね? 平民だからといって見下すのは良くないよ。 何せトールは、Aクラスだからね」
ブラットと呼ばれたガキ大将の新たな標的が、まさか優秀なAクラスとは思わず食堂は一瞬、静寂に包まれた。
Aクラスという事は、魔術師になる可能性があるという事。 さすがにガキ大将とは言え、貴族としての体面もある。 下手な事は出来ない、とブラットは唇を噛むしかなかった。
◇
コンコン
ようやく教科書の半分にいったところで、休憩をしようと寝具に腰掛けたところでノックが聞こえた。
「どうぞ」
「入るぞー。 初めましてだな、トール。 俺はトイフェル・スタッグ、夕食持って来たぞ」
入って来たのは寮母さんではなく、少し輝いて見える銀髪に薄い紫の瞳をした、世間一般的に見てもイケメンの部類に入る、少年だった。
トイフェルは食事の載ったトレーを受け取るトールに、尋ねてみた。
「何で、二年の授業範囲を開いてんだ?」
「え、これ一冊で一年じゃないの」
「そんな訳あるかよ。 教科書はそれ一冊で三年分だ」
トールが一年分だと考えていた教科書が、まさか三年分だったとは思いもよらず、苦労して読み進めた自分を思い出して乾いた笑い声を出した。
突然笑い出したトールに、若干引き気味になるトイフェルは更に尋ねた。
「何でそんなに笑う事があるんだ?」
「いや、ごめん。 このぶ厚さで一年分だと思って、読み進めてた自分がおかしくて」
それを聞いた彼もまた、トールが苦戦しながらも必死に読み進める様子を考えて、笑った。
「トイフェルだったね。 僕はトール・カグヤ、よろしく」
「トイで良い。 皆そう呼んでる」
僕達は、自然と握手を交わしたのだった。
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