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ある日ルナがお昼寝から目覚めると、目の前に不思議な世界が広がっていた。
(どこ?ここ)
子供の頃に本で読んだアリスの物語みたいだ。大きな木のふもとで目が覚めたルナは、白うさぎもいないのに、見覚えのない景色をきょろきょろと見回してしてしまう。
(自分の部屋で寝ていたはずよね?ということは…)
そっか。これはまだ夢の続きなんだ。
合点がいき、ならばもっと楽しもうと思って立ち上がる。そのとき、裾がひらひらしているわりに、ぴったりと身体に貼りつく白いワンピースタイプのドレスを着ていることに気がついた。
(……なにこれ。胸元が深いし、太ももが見えそう)
現実では絶対に着ないようなセクシーな衣装に辟易する。夢だからいいけど。
大きな木に背を向け、遠くに見える塔のような建物を目指して、とりあえず森の中を歩いていくことにした。見覚えのない世界をあてもなく歩くというのは、現実じゃないとわかっていてもちょっと不安で、心細かった。
少し行ったところで、背後から呼び止められる。
「どこに行くんだ」
「へ?」
振り返ると、全身黒づくめの、ざんばらの黒髪に金色の瞳をした少年が馬のような生き物から降りるところだった。
なぜ馬のような、なのかというと、現実の馬とはちょっと違う風貌をしていたからだ。口は裂けているし耳が長い、夢だから、色々とアレなんだろう。
少年は少年というより、「美」少年だった。この世のものとは思えないくらい愛らしい顔立ちをしている。
「お前、ルナだろ?」
「あ、はい。鈴木瑠奈です」
可愛いので、初対面で偉そうな態度をとられても怒りすら湧いてこなかった。
「スズキ?なんだそれは」
不思議そうな顔で首をかしげる姿が犯罪的だ。
(か、かわいすぎる……)
そのとき、彼の背後にくねくねと動くものを見た。
「し、しっぽ?!」
先端が矢印のように尖ったそれはまさに、イメージの中の悪魔のしっぽそのものだった。
「ああ。悪魔だからな。なにをそんなに驚いてる」
「いや、あの、悪魔って」
「まったく。魔界に迷い込んだお前を見つけて、月桂樹の下までわざわざ迎えに行ったんだぞ、僕は。なのにひとりで勝手に移動して、どういうつもりだ」
「魔界?迷い込んだ?月桂樹?」
「森は危ない。僕がついていなければ、お前はどんな目にあっても文句は言えないんだぞ」
「はい、あの、ごめんなさい」
どうして自分の夢の中で、子供相手に謝っているんだろう。と思ったが、可愛いからまあいいか、と思い直した。
「名前はなんて言うんですか?」
子供相手に敬語を使ってしまう。そうしなければならないと思わせるような態度のデカさと気品を、少年から感じとったからだ。
「セーレ・L・シュナイダーIII世だ」
ゲームの登場人物のような名前で驚いたけれど、この子にはたしかによく似合うなぁ、と思った。
「セーレは本当に私のことを迎えに来てくれたの?」
「そう言っただろう。そしていきなり呼び捨てか?馴れ馴れしい」
「だって子供だし。態度が大きいから、さっきはつい敬語を使っちゃったけど」
「……まあいいか。お前は僕の友達になるんだからな」
友達。この子と友達になったら私はなにをして遊んであげればいいんだろう?乗馬(馬?)はできないし、球技も苦手だし、まったく思い浮かばない。
「ということは、私を連れて行ってくれるんですか?」
「ああ、城まで。お前にはそこで働いてもらう。そのために拾いに来たんだ」
拾いに?私のことを?
まるで犬や猫のような扱いだ。でもこの夢の世界では他に行くあてもないので、それでもまあいいか、と思った。
「わかりました」
「ほう、もの分かりがいいな」
「ええと、まあ、暇なので……」
解せない、という顔でセーレがこちらを見たけれど、突っ込んではこなかった。そして馬のような生き物の後ろに乗せられて、私は城に連れていかれた。
城、なんて言うから、中世ヨーロッパの華やかなお城なんかを想像していたのに、ついてみるとそこは、どこからどう見ても魔王の住む城だった。
さっき悪魔って言ってたけど……
あながち嘘ではないのかもしれない。
こんなところに足を踏み入れて大丈夫なのだろうか?
一瞬だけ不安に思ったが、まあいいか、とすぐに取り下げた。だってこれはただの夢なのだから。
(どこ?ここ)
子供の頃に本で読んだアリスの物語みたいだ。大きな木のふもとで目が覚めたルナは、白うさぎもいないのに、見覚えのない景色をきょろきょろと見回してしてしまう。
(自分の部屋で寝ていたはずよね?ということは…)
そっか。これはまだ夢の続きなんだ。
合点がいき、ならばもっと楽しもうと思って立ち上がる。そのとき、裾がひらひらしているわりに、ぴったりと身体に貼りつく白いワンピースタイプのドレスを着ていることに気がついた。
(……なにこれ。胸元が深いし、太ももが見えそう)
現実では絶対に着ないようなセクシーな衣装に辟易する。夢だからいいけど。
大きな木に背を向け、遠くに見える塔のような建物を目指して、とりあえず森の中を歩いていくことにした。見覚えのない世界をあてもなく歩くというのは、現実じゃないとわかっていてもちょっと不安で、心細かった。
少し行ったところで、背後から呼び止められる。
「どこに行くんだ」
「へ?」
振り返ると、全身黒づくめの、ざんばらの黒髪に金色の瞳をした少年が馬のような生き物から降りるところだった。
なぜ馬のような、なのかというと、現実の馬とはちょっと違う風貌をしていたからだ。口は裂けているし耳が長い、夢だから、色々とアレなんだろう。
少年は少年というより、「美」少年だった。この世のものとは思えないくらい愛らしい顔立ちをしている。
「お前、ルナだろ?」
「あ、はい。鈴木瑠奈です」
可愛いので、初対面で偉そうな態度をとられても怒りすら湧いてこなかった。
「スズキ?なんだそれは」
不思議そうな顔で首をかしげる姿が犯罪的だ。
(か、かわいすぎる……)
そのとき、彼の背後にくねくねと動くものを見た。
「し、しっぽ?!」
先端が矢印のように尖ったそれはまさに、イメージの中の悪魔のしっぽそのものだった。
「ああ。悪魔だからな。なにをそんなに驚いてる」
「いや、あの、悪魔って」
「まったく。魔界に迷い込んだお前を見つけて、月桂樹の下までわざわざ迎えに行ったんだぞ、僕は。なのにひとりで勝手に移動して、どういうつもりだ」
「魔界?迷い込んだ?月桂樹?」
「森は危ない。僕がついていなければ、お前はどんな目にあっても文句は言えないんだぞ」
「はい、あの、ごめんなさい」
どうして自分の夢の中で、子供相手に謝っているんだろう。と思ったが、可愛いからまあいいか、と思い直した。
「名前はなんて言うんですか?」
子供相手に敬語を使ってしまう。そうしなければならないと思わせるような態度のデカさと気品を、少年から感じとったからだ。
「セーレ・L・シュナイダーIII世だ」
ゲームの登場人物のような名前で驚いたけれど、この子にはたしかによく似合うなぁ、と思った。
「セーレは本当に私のことを迎えに来てくれたの?」
「そう言っただろう。そしていきなり呼び捨てか?馴れ馴れしい」
「だって子供だし。態度が大きいから、さっきはつい敬語を使っちゃったけど」
「……まあいいか。お前は僕の友達になるんだからな」
友達。この子と友達になったら私はなにをして遊んであげればいいんだろう?乗馬(馬?)はできないし、球技も苦手だし、まったく思い浮かばない。
「ということは、私を連れて行ってくれるんですか?」
「ああ、城まで。お前にはそこで働いてもらう。そのために拾いに来たんだ」
拾いに?私のことを?
まるで犬や猫のような扱いだ。でもこの夢の世界では他に行くあてもないので、それでもまあいいか、と思った。
「わかりました」
「ほう、もの分かりがいいな」
「ええと、まあ、暇なので……」
解せない、という顔でセーレがこちらを見たけれど、突っ込んではこなかった。そして馬のような生き物の後ろに乗せられて、私は城に連れていかれた。
城、なんて言うから、中世ヨーロッパの華やかなお城なんかを想像していたのに、ついてみるとそこは、どこからどう見ても魔王の住む城だった。
さっき悪魔って言ってたけど……
あながち嘘ではないのかもしれない。
こんなところに足を踏み入れて大丈夫なのだろうか?
一瞬だけ不安に思ったが、まあいいか、とすぐに取り下げた。だってこれはただの夢なのだから。
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