【BL】僕(18歳)、イケメン吸血鬼に飼い慣らされる。

猫足

文字の大きさ
33 / 46

33.突然の出来事

しおりを挟む

「私の可愛いウィリーは何をしているんだ?」


ある夜、僕が書斎の机を借りて手紙を書いていると、開けっぱなしのドアから吸血鬼が顔を覗かせてそう言った。


「もう。その"可愛い"っていうのやめてよ、女の子じゃないんだから」
「じゃあなんと言われたい?」
「うーん。賢いとか、勇敢とか?」
「いくら私がウィリーに甘くても嘘は言えないな」
「嘘って。そんなにはっきり言うことないだろ!」


わざと怒ったふりをしたらノアも笑って、ゆっくり室内に入ってきた。こういう他愛もないやりとりが楽しくて、こんな毎日が永遠に続けばいいと思う。


「手紙を書いてたんだ。僕は元気でやってるって家族に伝えたくて」
「だから羊皮紙を欲しがったんだな。家族を安心させられるならそれが一番いいだろう。定期的にやりとりしてもいいし、書き終わったら裏庭にいる伝書鳩に届けさせよう」
「ありがとう」


文章を書いたのは久しぶりだったので、うーんと伸びをして、僕は椅子から立ち上がった。あとは最後の署名をするだけだ。
そして何の気なしに窓の方を見たとき、ある異変に気がついてしまった。遠くを指さしてノアの方を見た僕の顔には、不安がありありと浮かび上がっていただろう。


「ねえノア。あれ……なんだろう」
「どうした?」
「遠くの方でチラチラ赤いものが揺れているような。火かな?」


僕の言葉を聞いて、ノアが隣に寄り添うように立った。目を細め、僕が指差した方向をじっと見つめる。


「軍隊だ。こちらに向かってきている」


悪い冗談だと思いたかったが、声が硬いので冗談なんかではないとすぐにわかった。でも一体どうして軍隊が?ここが吸血鬼の城と知って、命を狙って来ているのだろうか。


「ノアのことを狙ってるの?」


まだ距離が遠すぎて、僕には赤い光が揺れているようにしか見えない。ノアは視力がとてもいいのでもっと詳細な部分まで見えているのだろう。



「……目的はわからない。が、穏やかではなさそうだな」
「どうして!?でもノア、もし攻めてこられても死んだりしないよね」
「さあ。どうかな」


悲痛な願いを短い言葉で跳ね返されて、僕は絶望した。わかっていたけど、うんと言って欲しかった。吸血鬼は長生きだしなかなか死なないが、まったくの不死ではない。たとえば心臓を貫かれたり、炭になるまで火炙りにされたら確実に死ぬ。


「嫌だよそんなの。あの軍隊はハンターなの?僕たち穏やかに暮らしていただけなのに、狙われる理由がわからない。だいたいノアはここ数百年封印されていたのに……」


そこまで言って僕はハッとした。吸血鬼が復活したことを知っている者。軍隊を動かせる力を持っていて、ノアを殺したいほど憎んでいる者。



それは僕の家族なのではないか。



ノアの静止も聞かず、窓を開けた。身を乗り出して遠くを見つめる。馬に乗っているらしく、赤い光はどんどんこちらに近づいて来ていた。もうだいぶそばまで迫っていて、僕の肉眼でも旗の紋章が見える。



「そんな。どうして」



その場に崩れ落ちそうになった。
恐ろしいことに、僕の勘は当たってしまった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵
BL
 主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。  この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。  そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!     ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。  友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?  オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。 ※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。 世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。 「見つけた、俺の運命」 敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。 冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。 食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。 その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。 敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。 世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

学園一のスパダリが義兄兼恋人になりました

すいかちゃん
BL
母親の再婚により、名門リーディア家の一員となったユウト。憧れの先輩・セージュが義兄となり喜ぶ。だが、セージュの態度は冷たくて「兄弟になりたくなかった」とまで言われてしまう。おまけに、そんなセージュの部屋で暮らす事になり…。 第二話「兄と呼べない理由」 セージュがなぜユウトに冷たい態度をとるのかがここで明かされます。 第三話「恋人として」は、9月1日(月)の更新となります。 躊躇いながらもセージュの恋人になったユウト。触れられたりキスされるとドキドキしてしまい…。 そして、セージュはユウトに恋をした日を回想します。 第四話「誘惑」 セージュと親しいセシリアという少女の存在がユウトの心をざわつかせます。 愛される自信が持てないユウトを、セージュは洗面所で…。 第五話「月夜の口づけ」 セレストア祭の夜。ユウトはある人物からセージュとの恋を反対され…という話です。

処理中です...