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まくらべがたり
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『……きて』
「う、ん……? 」
『起きて、ジェイダ』
その夜。
深い眠りに落ちていたのに、誰かが起こそうとしている。
(うーん……眠い……)
声の主には悪いが、睡魔と格闘する気もない。
優しく名前を呼ばれるのさえ、子守唄に等しかった。
『ジェイダ』
(ああ、何か落ち着く。このまま寝させて……)
『ジェイ……』
(……すー……)
『~~っ、ジェイダッ!! 』
「は、ははは、はいっっ!! 」
穏やかな声から一変、怒号が飛んだ気がしてガバッと起き上がった。
「……っ!! 何事!? 」
当然ながらジンも、ただならぬ様子に飛び起きた。瞬時に剣を手繰り寄せ、辺りを窺っている。
「……あれ? 」
誰もいない。
誰かに呼ばれたと思ったが、夢だろうか。
「……ジェイダ」
「……ごめんなさい! 」
睡眠を邪魔されたジンが、噛みつかんばかりに唸る。
目を合わせないよう、そそくさと布団の中に戻り――再び身を起こす。
(夢、よね。でも……)
また、ロイが子供の頃の夢。
ジェイダ本人が半信半疑であるのに、彼は言ったのだ。
『ただの夢だとは思わない』と。
(……そろり)
そうっと脱出を試みるが、もちろんそれを見過ごすジンではない。
「夜這いにでも行くつもり? 」
「そ、そうじゃなくて! ……何か、気になって」
どうしてだか、どこかに行かなくてはいけない気がするのだ。
(そういえば、あんなふうに呼ばれるのは初めてだし)
「何もないわよ。こんな夜中に」
本人すらあやふやなのだから、ジンを説得するのは難しい。
「何て言っていいか分からないけど……行かなきゃいけないの。……恐らく」
「何よ、それ。予感? 」
まるで信じていない彼女の目が、暗闇の中疑わしそうにこちらを見ている。
「……………勘」
(う。そんな目で見られても、そうとしか言えない)
「お願い! ちょっとドアの隙間から、覗くだけでいいの」
本当にただの勘だった。
だが、不思議と時間が経つにつれて、焦りを覚える。
早く、早く。
なぜだか分からないけれど、行かなくちゃ。
「ったく、もう。私が開けるから、念の為後ろにいなさい。嫌なら、ベッドに戻って」
「はい! ありがとう、ジン! 」
ブツブツ言いながらも、我儘を聞いてくれる。
彼女に感謝しながら、ジェイダは言いようもなくほっとしていた。
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