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落涙
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しおりを挟む戻った先で、待っていたのは――。
「エミリア様!! 」
「おや。貴殿は親戚という設定ではなかったか」
揶揄する国王を、男は演技をやめて睨みつける。
「貴様、よくもそんなことを……!! 」
「控えなさい! 」
仮にも国王への暴言にエミリアは叫んだが、そこは特段気にならなかった。
無表情を装う理由は他にあるが、それに辿り着く前に思考を停止させた。
「エミリア様、騙されてはなりません。その男は、平和主義の甘い男などではない……! 」
その先を言わせぬこともできた。
だが、隠す必要も、隠すべきものでもない。
「非情な男だ。そうして顔色ひとつ変えず」
――舅を殺したのだから。
「……目論んだことを思えば、当然のことよ」
僅かに間を置いただけでそう答えたエミリアに驚いたが、くらりと傾いた体を支える権利は自分にはない。
「な……お気は確かですか、エミリア様!? 貴女の父君ですよ!!」
辛い思いをしただろう。
ここに乗り込んできたのも、彼女の判断ではあっても彼女自身の意思ではない――そんな思いが過ったのに気づき、アルフレッドはぐっと掌に爪を立てた。
「……エミリア」
詫びることはできない。
仮に――仮に初めて会った時よりも、彼女に情があるのだとしても。
同じことが起きれば、何度でも同じ決断を下すと断言できる。
それでも、彼女の方へ体が向くのだ。
罪人とはいえ、父殺しの仇である男を責めもせず――必死で泣くまいとしている妻の方に。
「それくらいにして頂きましょうか」
冷たい声に振り向くと、そこには同じく信用していなかった男がひとり。
「卿は北に討たれたのです。事が露見したのを悟り、早々に手を打ったのでしょう。あなた方は、使い勝手のいい駒にすぎなかった」
「……っ、何だと!? 」
「やめなさいと言っているでしょう! 」
北がバレたのに気づき、口封じを謀った。
その事実の他に、何か意味があるにしろないにしろ、ゴールウェイが取れる手段はひとつだけだ。
「陛下のご恩情を噛み締めて過ごしなさい。でないと、今度は私が手を下します。北に頼むまでもなく」
脅しなどとは微塵も思えない、はっきりとした発音でキースは告げた。
「二の舞になりたくなければ、おかしな気は起こさないことだ。……確かに私は、非情にならねばならぬ時もある」
男は恨み言を吐きながらも、出ていくことにしたようだ。
我が身に代わるほどの、忠誠心はないということだろう。
「これから更に忙しくなる。……宿下がりでもしたらどうだ」
「……陛下!? 」
キースが非難の声を上げる。
それは想定内ではあったが、驚きのあまりかエミリア自身の反応はない。
「反逆という大罪ですよ。そのような者を逃がすおつもりですか。せめて、警備の厳重な……」
「……逃げはしません。叶うなら……」
「ふざけたことを。陛下を陥れようとした者をお側におくなど……」
至極もっともな意見を遮り、アルフレッドはどうにか声を振り絞った。
「……その時は、私が殺す」
至極もっともな意見を遮り、アルフレッドは声を絞り出し、部屋を後にした。
茫然としたキースを放り、迷った末にエミリアに後を追わせながら。
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