喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~

中島健一

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第19話

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~ハルが異世界召喚されてから4日目~ 

 アレックスはハルと過ごした2時限目のことを思い出していた。ショートカットにしている前髪がアレックスの表情を陰らせる。 

「はぁ……つらい……」 

 Aクラスの教室は横一列の長い机が5列並び、1列10名ほどが座れるが、10人しかいないAクラスの生徒はそれぞれが間隔を空けてまばらに広々と座っていた。 

 そんな中、メンヘラ女のように呟くアレックスは次の3時限目の授業を隣に座っているマリアと待っていた。 

 そもそもアレックスがハルの答案用紙をカンニングしていたのもハルに見とれていたからなのだ。 

「はぁ……」 

 アレックスは頬杖をついてため息をもう一度ついた。 

「フフッさっきから溜め息ばかりだねアレックス?」 

「なにぃ~面白がってぇ!!」 

 アレックスの目がギラリと光ると、両手を出してワキワキと嫌らしく何かを掴むような仕草をし始めた。マリアは嫌な予感がしたが、もう遅い。アレックスの手がマリアの胸を揉みしだく。 

「ちょっと!!!」 

 周りの目を気にするマリア。何人かの男子生徒はその光景を見て顔を赤らめていた。 

「ガッハハハ!あの時、マリアが私のこと面白そうに見てたの知ってたんだからねぇ!!」 

「うっ……」 

 2時限目の授業の時、アレックスとハルがぎこちなく会話をしていたのを微笑ましくというか、何というか、自分がゲスい表情で見ていたのをマリアは思い出した。 

 アレックスはいたずらに笑い、少ししてから手を離した。 

「次ハルと会えるのいつになるかなぁ……次のダンジョン講座が終わってぇそれから…あぁ随分先になりそうだなぁ……」 

 頭を抱えるアレックスにマリアは声をかける。 

「ハルくんならBクラスにいるんだし、いつでも会えるじゃない?そんな先のことばっかり考えないで、次のダンジョン講座に集中しよう?」 

「まぁそうだけどさぁ、それよりもダンジョン講座かぁ……」 

「どうしたの?ダンジョン好きじゃなかったっけ?」 

 隣にいるマリアは乱された服を直しながら尋ねた。 

「好きだけどさぁ、座学じゃん。ますますダンジョン探索したくなるじゃん。なのに行けるのは上級生になってからって…」 

 成る程、確かに一理ある。 

「それじゃあ、明日から始まるレベルアップ演習は楽しみなんじゃない?」 

「そりゃあ楽しみだよ!めちゃくちゃにレベルアップしてやるんだから!」 

 マリアはアレックスのモチベーションをなんとか戻すことに成功したのではないかと少し満足げに授業の開始を待っていた。 

 すると、ガラガラと音を立てて横開きの教室の扉が開かれる。 

 先生が教室に入ってきた。みたことのないスキンヘッドの男の先生だ。 

 マリアは思う。 

 ──あれ?ダンジョン講座はサポートを専門とした女性の先生のはずなのに…… 

 スキンヘッドの男は教壇の前に立つと威勢よく言い放った。 

「よぉ!お前ら!これから俺と遊ぼうぜ!」 

 スキンヘッドの男は全身に魔力を込めると、マリアは後ろの席の方から風を感じた。その瞬間、その先生らしき男に何かがぶつかり爆発する。 

 ドーンと大きな音がすると、教室全体を震わせる。マリアは風の発生源だと思われる後ろを振り向くと、レイが得意の光属性魔法を放った後だった。 

「レイ?」 

 何が起きたか理解できないマリアは首を傾げると、反対にレイの表情が曇る。 

「おいおい、いきなりそりゃないぜ」 

 爆煙のたつ中、スキンヘッドの男が言った。 

「お前がブラットベル家の次男か?」 

 未だに事態が飲み込めないマリアと他のAクラスの生徒たちを尻目に、レイと男は臨戦体勢に入った。 

「フン!!」 

 男は何か気合いを入れるかのように発声する。これは拳技『精神統一』による身体強化だ。 

 レイは先程放った光属性魔法、シューティングアローでもう一度攻撃するが、男は直進する光輝く矢を裏拳で弾いた。弾かれた魔法はそのまま教室のドアを破壊し、ドーンっと大きな爆発が起こる。 

 男は破壊されたドアを満足げに見た後、ニヤリとしてからレイを見たがそこにレイの姿はなかった。 

「!?」 

 先程破壊されたドアの爆煙からスキル『剣気』による身体強化を済ませたレイが高速で男に迫り、上段蹴りをくらわせる。男はその衝撃で窓側の壁へと吹っ飛び激突した。 

 他の生徒たちはレイに困惑の視線を送っていた。レイの顔色はまだ曇っている。 

「今のは効いたぜ……」 

 男が膝に手をあてながら立ち上がるとおもむろに右手をあさっての方角へ向けた。 

「なんのつもりだ?」 

 レイは嫌な予感がしつつ質問する。男はニヤリと笑うと魔法を放った。 

「ファイアーボール」 

「なっ!?避けろ!!」 

 レイはファイアーボールの行く先にいる女子生徒クライネに向かって叫んだ。 

「え?」 

 事態を見守っていた女子生徒のクライネにファイアーボールが飛んでくる。咄嗟のことに魔法防御もできないクライネは諸にファイアーボールを受けてしまった。 

「アアアアア」 

 燃え盛る炎にもがくクライネ。その様子を見て叫ぶ他の生徒達。 

「きゃぁぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁぁ!!」 

 Aクラスの教室を叫び声と呻き声が満たす。 

 クライネの近くにいたマリアは無我夢中で水属性魔法で消化に当たった後、聖属性魔法を唱えようと魔力を込めた。マリアの懸命な消化によりクライネは一命を取り留める。しかし、その光景をみたスキンヘッドの男はまたしてもニヤリと笑った。 

「よせ!マリア!!」 

 レイが叫んだ。マリアは何が何だかわからなかったが自分に向かってファイアーボールが押し寄せてくるのは理解できた。 

「「マリア!!」」 

 レイとアレックスは叫んだ。 

 マリアは恐怖により声もでず、その場で目をつむった。 

 ──衝撃音が聞こえる。ファイアーボールが当たったんだ…… 

 マリアはそう思ったがしかし、一向に熱と痛みが訪れない。それを待ちきれず恐る恐る目を開けてみると、レイが自分に背中を向け、片膝をついているのが見えた。 

 マリアは自分が庇われたと気付くのに少し時間を要する。 

「レイ……」 

 マリアの消え入りそうな声を聞くと、痛みに耐えながらレイは力なく言った。 

「逃げろ…全員逃げろ!」 

「逃がさねぇよ」 

 男は次にアレックスに向けて手を伸ばし、魔力を込めた。アレックスは足がすくみ動けない。そのとき、 

「大丈夫か!!」 

 Bクラスの生徒である筈のハルがAクラスに入ってきた。 

「ハル!」
「ハル君!」 

 アレックスとマリアが声を揃えて言った。 

──────────────────── 

 ──ダメ…怖い…クライネがレイが。 

 アレックスはクライネが狙われたとき咄嗟に椅子から立ち上がり戦闘体勢に入ったが、足が震え上手く魔力を練れないでいた。マリアが狙われた際も、なにもできない自分が情けなかった。そんなことを思っていると男の掌が自分に向けられた。 

 ──く、来る…どうすれば…… 

「大丈夫か!!」 

 BクラスであるハルがAクラスの教室に入ってきた。 

「ハル!!」
「ハル君!」 

 ハルの声に驚いたスキンヘッドの男は手をアレックスからハルに向けた。 

「ハル!!来ちゃダメ!逃げて!」 

「え?もう入っちゃった!」 

 緊迫したAクラスとは正反対にあっけらかんとしたハルは教室に不協和音をもたらす。 

 男は妖しい笑顔と掌をハルに向けて、ファイアーボールを放つ。 

「クタバレバカが!」 

 放たれた火の玉がハルにヒットした。 

「ハル~~!!」
「ハル君!!」 

 アレックスとマリアが叫ぶ。 

 爆煙が立ち込める中、男は自ら唱えた魔法の威力に満足気だったが、途端に眉をひそめる。 

「ん?」 

 爆煙が晴れ、ファイアーボールを諸に受けた筈の少年は片手をブラブラと振りながら、少しだけ痛がっていた。 

「いちぇぇぇ」 

 いてぇとあちぃが混ざった言葉を発するハル。 

 その様子を見たAクラスの生徒と襲撃者の男に疑問が渦巻く。 

「え?」
「へ?」
「は?」 

 マリアとアレックスとスキンヘッドの男は一文字で今の気持ちを表現した。 

 そんな中、ハルは状況を瞬時に整理する。 

 ──Bクラスに来た奴よりパワーあるな…ファイアーボールの威力もあったし……でもミラージュみたいな姑息なことはしなさそうだな。ここも先生だと思ったら違う人が来て生徒を襲ってるのか…… 

 ハルはマリアの前で膝をついているレイを目撃した。きっとマリアを庇ったんだろうとハルは解釈する。 

 スキンヘッドの男は歯噛みし、次の手を考えている。 

 ──あのガキ、俺の魔法を片手で掻き消しやがった…ブラットベルのガキといい厄介だ…… 

 レイはマリアに回復魔法をかけられながら立ち上がる。 

 レイは『剣気』による身体強化をもう一度使った。そして、スキンヘッドの男との間合いを一気に詰め、右ハイキックをスキンヘッドの男に見舞わす。 

 男はそれを片手で受け止め、そして掴んだ。 

「その攻撃ならさっき見たぜ?」 

 レイは無表情で捕まれてない方の足で地面を蹴り上げ、男が掴んでる右足に体重を乗せる。身体を捻りながら右手で男の胴体にシューティングアローを放った。 

「ごぼぁ!!」 

 男は掴んでいたレイの脚を離した。腹の激痛に身体が言うことをきかなかったようだ。 

 レイはそこに追い討ちをかける。 

 光属性魔法で形造られた剣を握るレイ。光輝く剣は波打つように剣の形を保っていた。そしてそれを男の胸に突き刺す。 

「ぐはぁぁぁぁ」 

 ハルはその光景を見て思う。 

 ──なるほど光の戦士ってこのことか…ってか…… 

 ハルはチラッと胸から血を吹き出し、倒れているスキンヘッドの男に目をやった。 

 ──ふつーに殺してません?それなのにこの人ふつーにしてません?そんなんできひんやんふつー? 

 軽くレイに引いてると目があった。レイは光の剣を消すと顔にかかった返り血を拭った。 

 マリアはクライネの回復にあたっている。どうやら彼女は無事のようだ。 

 すると、廊下から激しい足音が聞こえる。 

 ハルとAクラスの生徒達は、身体が強張った。しかし足音の正体を知り安堵する。 

「お前ら無事か!」 

 Aクラス担任のスタンが教室に入ってきたのだ。 

「ソイツは…いやレイ……よくやった」 

 スタンは倒れている男の外傷を観察し、状況を見極めレイを賞賛した。 

「ん?お前は確かBクラスのハル・ミナミノだよな?なんでここにいるんだ?」 

 ハルは説明する。 

「えっと…Bクラスもこの男とは別の人が来て…なんとかその人を倒したらAクラスのほうで大きな音がしたんで駆け付けたんです」 

「そうか…取り敢えず事態は収集した。皆遅くなってすまなかった。ハルはBクラスに戻りなさい」 

抵抗力が1上がった 

【名 前】 ハル・ミナミノ
【年 齢】 17
【レベル】  7
【HP】    83/83
【MP】   76/76
【SP】  100/100
【筋 力】 50
【耐久力】 68 
【魔 力】 64
【抵抗力】 62
【敏 捷】 64
【洞 察】 64
【知 力】 931
【幸 運】 15
【経験値】 600/800 

・スキル 
『K繝励Λ繝ウ』『莠コ菴薙�莉慕オ�∩』『諠第弌縺ョ讎ょソオ』『閾ェ辟カ縺ョ鞫ら炊』『感性の言語化』『第一階級水属性魔法耐性(中)』『恐怖耐性(中)』『物理攻撃軽減(弱)』『激痛耐性(弱)』『毒耐性(弱)』 

・魔法習得
  第一階級火属性魔法
   ファイアーボール
   ファイアーウォール 

  第一階級水属性魔法
   ウォーター 

  第一階級風属性魔法
   ウィンドカッター
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