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33.ルーを探して 2
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足に力が戻るのを待ってからベルクスにルー探しを手伝ってもらう。
と言ってもベルクスには心当たりなんてないようで、ひとまず寮までの道を辿ることにした。
通りに出ると先程道を訊ねたヤンキー達に遭遇した。というかまだ店の前でたむろってた。
嘘を教えられたしこのまま通り過ぎよう、とした所で道を塞がれる。自業自得とはいえヤンキーに絡まれるなんて人生初でちょっとびびる……!なんでこの人達に声掛けたんだよ俺!!
「なんだなんだあ?帰って来てんじゃねーか」
「ドロドロになった頃にヤり行こうと思ってたのによー」
「探してた狼はいなかったんでちゅか?」
そう言って3人はゲハゲハ笑う。最低だコイツら…!
無視して通り過ぎようとすると手首を掴まれた。
「おいおい人のこと無視してんじゃねえぞガキ」
「そ、そんなガキに嘘ついてまで構うなよ…」
思わず言い返すと更に笑われて顔を近付けられる。
「お前なーんかいい匂いすんなあ?俺がちょっと味見してや、た、いたたた!いでえよ!!」
ヤンキーを見るとその頭に誰かの片手がギリギリと爪をくい込ませている。誰かというか、ベルクスの。
「はっはな……なんだよお前!」
俺の手首を離し必死にベルクスの手を退けようと格闘している。
「困るんだよねー俺のお気に入りにそんなおふざけされるとさあ」
いつも眠そうなベルクスの目にギラギラと力が入っている。
「いだい!いだい!わかった!離せ!」
そこでようやくベルクスが手を離し、ヤンキーは半泣きで崩れ落ちる。
「やべえって上位種じゃんあの悪魔!」
「に、逃げるぞ!」
蹲ったヤンキーを無理矢理引っ張り起こし、3人は慌てて去って行った。
「狼サンに誰かと行動しろって言われてなかったぁ?」
これでその理由が分かったか?と暗に聞いてくる。
「……ごめん。ありがとう」
「分かればよろしい。じゃ、ここの店入ってみるか」
ベルクスが指をさした先を見ると、ヤンキーがたむろっていた店。酒の絵が描かれた看板の、ちょっと威圧感のある店。
「……え?いや、なんで酒?」
「いいからいいから。ほら行くぞぉ優希」
ベルクスに連れられて店内に入ると、薄暗い店内にはぽつぽつと人が入っている。
店内にはジャズが流れ、テーブル席には大きな酒樽がテーブルとして使われていた。
バーカウンターのマスターがグラスを拭いたままちらっとこちらを見る。
「お酒もらったらテーブル行くか。マスター、マルガリータとロングランドアイスティー」
アイスティー?紅茶のお酒か?ひょっとして俺に気を使って飲みやすいお酒頼んでくれたのかな。
マスターは何も言わずに様々な酒を並べて注文を作り始める。
店のお客さんがこっちを伺っている気がしてなんだかソワソワしてしまう。
お酒を持って、ベルクスに奥の暗がりの席に連れて行かれる。
「優希バー来たことないの丸分かり。ひょっとして初飲酒かぁ?」
「お、お酒はルーが作ってくれたことがある!」
酔っ払って吐いたけど。
「あっそ。じゃあカンパーイ」
「いただきます」
アイスティーのお酒はほんのり紅茶の味がしてとても美味しかった。
アイスティーにも少しはお酒が入っているのかやがて少し顔が照ってきたような気がする。
「そういえば、ベルクス今日は尻尾ないな?」
「……はははー、優希ってほんとビッチだよなぁ」
「え?」
思わず顔を見ると、全く笑ってない目のベルクスに見据えられる。
「誰にでも分かるような弱点を見せびらかすと思う?腰に巻き付けて隠してる」
「ふーん…」
思わずズボンを見るけど特に膨らみも違和感も見つからない。うまく隠せるもんなんだな。けっこう長かったのに。
「俺の尻尾触りたいなら寮まで我慢しなよ」
「!!そ、そういうことじゃない」
とんだ失言をしてしまったようだ。なんだか体がカッカして思考があんまりまとまらなくなってきた。意外とお酒入ってるのかな?これ。ジュースみたいに飲み尽くしてしまったけど。
「おかわりする?」
「あ、じゃあ、うん」
立ち上がろうとすると、ベルクスに肩を抑えつけられる。
「あー、あーいいから。俺が持ってくるから」
なんだか今日は優しいな?
ベルクスを見送り、店内を見渡す。
また誰かと目があったような気がするような、しないような。
戻ってきたベルクスと学校とかの他愛ない話をして3杯ほど飲んだ頃、ベルクスがふと少しだけ大きめな声で
「そういや最近狼達が随分騒がしいよなぁ?夜出歩くの怖くなるから大人しくしててほしいんだけど」
誰にともなくそう言った。
それってルーのことかと聞こうと口を開いた瞬間、
「なにキスしてほしいの?」
と勝手に舌を潜り込ませられる。
「ん!?ふ!んん!」
何を考えてるんだとか、ここは店内だとか、人の目を気にしろとか、言いたいことは色々あったはずだけど。
なんだか体は敏感になっててキスにビクッと反応してしまうし、反抗しようにも力が入らないし、声が出ないよう必死になることしかできなかった。
店内から口笛とか舌打ちとか聞こえたような気がするけど、とにかく俺はベルクスの器用に動く舌に翻弄されていて全く頭が働かなかった。
ようやく口を離してくれた頃にはへとへとになっていて、ベルクスに体を預けてようやく一息ついた。
そこでふと話し声が聞こえ出す。
「実際、人狼族きな臭いよなあ最近」
「昨日の集会で一悶着あったんだろ?獣人族がなんか言ってたぜ」
はっとベルクスを見ると、「しー」と指を唇に当てている。
「あー、あれだろ。ガルの若者が花嫁の相手になったことで騒がれてるやつ」
「はあ?何で今更揉めてんだ?花嫁って3年前から居ただろ」
「さあな。今まで相手にされてなかったから看過されてたんじゃねえのか」
「これだから苗字持ちは面倒くせえな~家柄に誇り持ってる奴ばっかでしょっちゅう揉めてる」
「おい!俺も苗字持ちだがガルの一族が変にプライド高いだけだ!一緒にすんなよ」
そこからはもう狼の話題は出なかったし、その会話だけで充分だった。
ルーは、俺のせいで一族の面倒事に巻き込まれている。それで帰ってこれない可能性が高い。
「出ようか」
と呟くベルクスに頷き、立ち上がろうとした所で腰が抜けた。
「あ、あれ」
「あー腰に来たかあ。まあ度数高いからねーあれ。酔わせる目的で頼んだんだけど美味しそうに飲んでくれてよかったよ」
「え?紅茶のお酒ってそんな度数高いのか……?」
わけが分からず呟くと、ベルクスがぷっと吹き出す。
「ぷはは!あれ紅茶一滴も入ってないって!入ってるのはジン、ウォッカ、テキーラ、ラムに甘いシロップ達。美味しかったか?」
目をキラキラさせながら笑顔で聞いてくる。
「な、なんでそんなのを……?」
「部屋に連れて帰るために決まってんだろお。はい帰ろうねー」
そのまま簡単に背負われてしまい、店を出る。
揺られると急に酔いが回るため思わず背中に顔を埋める。
ほろ酔いのホワホワした感覚と疲れからだんだん瞼が重くなり、やがて意識が覚醒したのはベルクスの部屋のベッドに降ろされた時だった。
と言ってもベルクスには心当たりなんてないようで、ひとまず寮までの道を辿ることにした。
通りに出ると先程道を訊ねたヤンキー達に遭遇した。というかまだ店の前でたむろってた。
嘘を教えられたしこのまま通り過ぎよう、とした所で道を塞がれる。自業自得とはいえヤンキーに絡まれるなんて人生初でちょっとびびる……!なんでこの人達に声掛けたんだよ俺!!
「なんだなんだあ?帰って来てんじゃねーか」
「ドロドロになった頃にヤり行こうと思ってたのによー」
「探してた狼はいなかったんでちゅか?」
そう言って3人はゲハゲハ笑う。最低だコイツら…!
無視して通り過ぎようとすると手首を掴まれた。
「おいおい人のこと無視してんじゃねえぞガキ」
「そ、そんなガキに嘘ついてまで構うなよ…」
思わず言い返すと更に笑われて顔を近付けられる。
「お前なーんかいい匂いすんなあ?俺がちょっと味見してや、た、いたたた!いでえよ!!」
ヤンキーを見るとその頭に誰かの片手がギリギリと爪をくい込ませている。誰かというか、ベルクスの。
「はっはな……なんだよお前!」
俺の手首を離し必死にベルクスの手を退けようと格闘している。
「困るんだよねー俺のお気に入りにそんなおふざけされるとさあ」
いつも眠そうなベルクスの目にギラギラと力が入っている。
「いだい!いだい!わかった!離せ!」
そこでようやくベルクスが手を離し、ヤンキーは半泣きで崩れ落ちる。
「やべえって上位種じゃんあの悪魔!」
「に、逃げるぞ!」
蹲ったヤンキーを無理矢理引っ張り起こし、3人は慌てて去って行った。
「狼サンに誰かと行動しろって言われてなかったぁ?」
これでその理由が分かったか?と暗に聞いてくる。
「……ごめん。ありがとう」
「分かればよろしい。じゃ、ここの店入ってみるか」
ベルクスが指をさした先を見ると、ヤンキーがたむろっていた店。酒の絵が描かれた看板の、ちょっと威圧感のある店。
「……え?いや、なんで酒?」
「いいからいいから。ほら行くぞぉ優希」
ベルクスに連れられて店内に入ると、薄暗い店内にはぽつぽつと人が入っている。
店内にはジャズが流れ、テーブル席には大きな酒樽がテーブルとして使われていた。
バーカウンターのマスターがグラスを拭いたままちらっとこちらを見る。
「お酒もらったらテーブル行くか。マスター、マルガリータとロングランドアイスティー」
アイスティー?紅茶のお酒か?ひょっとして俺に気を使って飲みやすいお酒頼んでくれたのかな。
マスターは何も言わずに様々な酒を並べて注文を作り始める。
店のお客さんがこっちを伺っている気がしてなんだかソワソワしてしまう。
お酒を持って、ベルクスに奥の暗がりの席に連れて行かれる。
「優希バー来たことないの丸分かり。ひょっとして初飲酒かぁ?」
「お、お酒はルーが作ってくれたことがある!」
酔っ払って吐いたけど。
「あっそ。じゃあカンパーイ」
「いただきます」
アイスティーのお酒はほんのり紅茶の味がしてとても美味しかった。
アイスティーにも少しはお酒が入っているのかやがて少し顔が照ってきたような気がする。
「そういえば、ベルクス今日は尻尾ないな?」
「……はははー、優希ってほんとビッチだよなぁ」
「え?」
思わず顔を見ると、全く笑ってない目のベルクスに見据えられる。
「誰にでも分かるような弱点を見せびらかすと思う?腰に巻き付けて隠してる」
「ふーん…」
思わずズボンを見るけど特に膨らみも違和感も見つからない。うまく隠せるもんなんだな。けっこう長かったのに。
「俺の尻尾触りたいなら寮まで我慢しなよ」
「!!そ、そういうことじゃない」
とんだ失言をしてしまったようだ。なんだか体がカッカして思考があんまりまとまらなくなってきた。意外とお酒入ってるのかな?これ。ジュースみたいに飲み尽くしてしまったけど。
「おかわりする?」
「あ、じゃあ、うん」
立ち上がろうとすると、ベルクスに肩を抑えつけられる。
「あー、あーいいから。俺が持ってくるから」
なんだか今日は優しいな?
ベルクスを見送り、店内を見渡す。
また誰かと目があったような気がするような、しないような。
戻ってきたベルクスと学校とかの他愛ない話をして3杯ほど飲んだ頃、ベルクスがふと少しだけ大きめな声で
「そういや最近狼達が随分騒がしいよなぁ?夜出歩くの怖くなるから大人しくしててほしいんだけど」
誰にともなくそう言った。
それってルーのことかと聞こうと口を開いた瞬間、
「なにキスしてほしいの?」
と勝手に舌を潜り込ませられる。
「ん!?ふ!んん!」
何を考えてるんだとか、ここは店内だとか、人の目を気にしろとか、言いたいことは色々あったはずだけど。
なんだか体は敏感になっててキスにビクッと反応してしまうし、反抗しようにも力が入らないし、声が出ないよう必死になることしかできなかった。
店内から口笛とか舌打ちとか聞こえたような気がするけど、とにかく俺はベルクスの器用に動く舌に翻弄されていて全く頭が働かなかった。
ようやく口を離してくれた頃にはへとへとになっていて、ベルクスに体を預けてようやく一息ついた。
そこでふと話し声が聞こえ出す。
「実際、人狼族きな臭いよなあ最近」
「昨日の集会で一悶着あったんだろ?獣人族がなんか言ってたぜ」
はっとベルクスを見ると、「しー」と指を唇に当てている。
「あー、あれだろ。ガルの若者が花嫁の相手になったことで騒がれてるやつ」
「はあ?何で今更揉めてんだ?花嫁って3年前から居ただろ」
「さあな。今まで相手にされてなかったから看過されてたんじゃねえのか」
「これだから苗字持ちは面倒くせえな~家柄に誇り持ってる奴ばっかでしょっちゅう揉めてる」
「おい!俺も苗字持ちだがガルの一族が変にプライド高いだけだ!一緒にすんなよ」
そこからはもう狼の話題は出なかったし、その会話だけで充分だった。
ルーは、俺のせいで一族の面倒事に巻き込まれている。それで帰ってこれない可能性が高い。
「出ようか」
と呟くベルクスに頷き、立ち上がろうとした所で腰が抜けた。
「あ、あれ」
「あー腰に来たかあ。まあ度数高いからねーあれ。酔わせる目的で頼んだんだけど美味しそうに飲んでくれてよかったよ」
「え?紅茶のお酒ってそんな度数高いのか……?」
わけが分からず呟くと、ベルクスがぷっと吹き出す。
「ぷはは!あれ紅茶一滴も入ってないって!入ってるのはジン、ウォッカ、テキーラ、ラムに甘いシロップ達。美味しかったか?」
目をキラキラさせながら笑顔で聞いてくる。
「な、なんでそんなのを……?」
「部屋に連れて帰るために決まってんだろお。はい帰ろうねー」
そのまま簡単に背負われてしまい、店を出る。
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