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第一章

2.名無しのスライム

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『すみません、理由はお教えできません』

 え、えぇー!!
 めっちゃ親切そうに登場しておきながら、教えてくれないの?!
 あんなに思わせぶりなこと言っといて?!

『ボクすっごく困ってるのに! いじわる! オニ! あくま!』

『ぅぐっ……!!』

 あ……泣かせちゃった……。
 わ、悪いことしたかな。

『私も……お教えしたいのは山々なのですが……制約があってですね……ううっ』

『そ、そうなんですか。いじわるとか言ってごめんなさい……』

『いえ、いいんです。貴方は事情も分からないのですから、理不尽だと怒るのも当然ですよね……』

 ありゃ、ホントは良い人っぽいな……。
 情緒不安定なヤンデル美形かな~とか思ってたけど訂正しておこう。

『じゃあ、あなたはどうしてボクの前に?』

『先程尋ねられた理由《・・》はお教えできませんが、せめて私の説明できる範囲で状況などをお教えできればと思いまして……。貴方は今、知識はあるけれど記憶は無い。そのような状態ですよね?』

『そうなんです。気がついたらスライムになってて……。ボク、元からスライムってわけじゃないですよね?』

『はい、そうです。ですが今は元の生を忘れ、スライムとして生きていかなければいけません』

 や、やっぱりそうなのか……。
 スライムになったこと自体は良いとしても、「強くなって勇者を倒せ!」とか言われたらイヤだなぁ。
 絶対経験値にされちゃうもん。

『生き方に制限はありません。たくさん子を作るも良し、一人で世界を回るのも良し。貴方の好きに生きてください』

 な~んだ、よかった!

『出来れば強くなることをお勧めします。そして生き延びてください』

『死なないことが目標?』

『目標ということではありませんが……私の個人的なお願いです。貴方の苦しむ姿はあまり見たくないので……。それに、スライムはとても弱く死にやすい生き物ですから』

『そっかぁ……心配してくれてありがとうございます』

 ――ぷにょりん

 ペコリとお辞儀を……したつもりだったけど、体が上下に揺れただけだった。

『くぅ、かわッ……!』

 ちょっと変な呟きが聞こえた気がしたけど、ここはスルーしておこう。

『……コホン。私に丁寧に話す必要はありませんよ。気楽にしてくださいね』

『えっと、そうなの? じゃあ、あなたの名前とか、ボクとの関係? とかも聞きたいんだけど……聞いてもいいのかな?』

『私の名前はリーリオ。天使《・・》です。今は貴方のガイド役といったところでしょうか』

 えっ、天使?!
 やたら美形な人だなーとは思ってたけど、この人(?)天使だったのかぁ。
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