楽しいスライム生活 ~お気楽スライムはスライム生を謳歌したい~

杜本

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第一章

33.雫に濡れたスライム

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 湧き水で傷を洗って、もう一度ちゃんとした手当を施したものの、やっぱりクリスの状態は良くなさそうだった。
 包帯を肩にぐるぐると巻いて壁にもたれるクリスは、かなり辛そうだ……。

「クソッ……悪い、オレのせいだ。スカウターなのに、一度通った道だからって油断した」

「シーロだけの、せいじゃ……ない。俺の、力不足……だ」

「……オメーは喋んな。少しでも体力を温存しとけ」

「……あぁ」

 どうしよう。このままじゃクリスが危ないかもしれない。
 でも5階ここからじゃ外に出るだけも時間がかかるし、モンスターだって出る。
 怪我人のクリスを運びつつ、盾役を欠いたメンバーで戦って……どう考えても厳しい。

 どうしよう……どうしたら……。

「……ぅ……」

『ん、フェリ? どうしたの?』

 すぐ側に立っていたフェリを見上げると、今にも泣き崩れてしまいそうな青い表情かおをしていた。

「ぼく……かば、って……」

 あ、しまった!
 クリスはフェリを庇って傷を負ったんだ……フェリは絶対に自分のせいだと思ってる。
 すぐに声を掛けてあげなきゃいけなかった!

『フェリは悪くないんだよ! これは誰のせいでもないから!』

「で、でも……ぼくが……いた、から……」

 本当にフェリのせいなんかじゃないのに!
 でも、いくらボクがそう言ったところで何の慰めにもならないよぉ……。

 ボクがおろおろしていたら、ハッキリと通る声が響いた。

「――フェリ、君のせいじゃない」

 大きな怪我を負っている人間のものとは思えないぐらい、きっぱりとした声だった。

「で、でも……」

「何度でも言うよ。君のせいじゃない」

「ぼく、が……無理に、ついて……来なかったら……」

「連れて行くと、判断したのは俺だ。メンバーを守るのが……俺の、役目だ」

 クリスの声が、少しずつ弱くなってきている。
 やっぱり怪我がキツいんだと思う。

「ぼく、でも……ちゃんとした、仲間じゃ、ない……です……亜人、だし……」

「関係ない……フェリは、れっきとした……なか、ま……だ…………」

 そこでクリスの声が途切れる。

 クリスはとっても真剣に、フェリのことを考えてくれていたんだ。
 半ば押しかけ状態のポーターだったのに。

 意外なことに……次に口を開いたのはシーロだった。

「当たり前だろ」

「……え……?」

「オメーはオレらのパーティーに入った。仲間になった」

「で、でも……ぼくが、弱いせい……で」

「パーティーには役割ってモンがある。それに弱いってんなら、そこのセシリアだって似たようなもんだしな」

 弱いって言われても、セシリアは何も言わなかった。
 ただ、少し困ったように笑ってた。

「敵の攻撃から仲間を守るのはクリスの役割だ。だから、お前を庇うのは当たり前なんだよ」

「……」

 フェリは、とても戸惑った顔をしてる。
 出会って数日の、大して役に立たない子供の、亜人の自分を……仲間だと言ってくれること。
 命がけで守っても、当たり前だと言ってくれること。
 そういう言葉を、上手く受け取れないんだ。

「……ねぇ、フェリ君。私たち、仲間だよ」

「ぁ……」

「だからさ、一緒に考えよ? ここから、みんなで無事に帰る方法。……ね?」

「は……はい……」

 大粒の雫がボクの体を濡らしていった。
 でもそれは温かかったから……ちっとも気にならなかった。
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