護堂先生の芋掘り怪奇譚

栗槙ひので

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5.ご挨拶

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 すると、奥から返事が聞こえた。しばらく待つと、80歳は超えていそうな皺々のお爺さんが、覚束ない足取りでゆっくりと出てくる。

『こんにちは。西森中学校の者ですが、芋掘りで使わせていただく畑の件で伺いました』

『Nice to meet you!!!』

 私が玄関先で挨拶していると、横から西園寺先生が体をねじり込んで握手を求めた。とても邪魔だ。

『ええ、ええ、聞いとるよ。学生さんに掘ってもらう畑の下見じゃろ』

 お爺さんは、西園寺先生を華麗に無視すると続けた。

『見ての通り、わしはもう歳でな。畑の管理は息子に任せているんじゃ。案内も息子がする予定だったんじゃが、今朝近所の畑が荒らされていたと連絡があって、飛び出して行ったきりまだ帰ってこんでな……』

『え、それは大変ですね……』

 意外な展開に戸惑っていると、お爺さんはおもむろに手書きのメモらしきものを取り出して言った。

『悪いが畑はこの辺りにあるから、勝手に見てきてくれんかの。息子も畑の辺りにおるかもしれん。代わりに案内してやりたいが、わしゃちょっと足を痛めてしまってな……』

『いえ、ご無理なさらず! それでは我々だけで、下見させていただきます』

 この時の私は、何の迷いもなく二人で行くと承諾してしまった。
 中山家から畑までの距離は、さほど遠くないだろうし、畑のような広い土地であれば、遠目にも分かりやすいだろうと、高を括っていたのだ。
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