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第1章 迷子の子狐とたまごサンド

11.妖怪の子ども

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『あの、誰か居ますか? 大丈夫ですか?』

 藪の前に屈んで声を掛けると、中から「うー」と小さな呻き声が聞こえた。

(子どもの声!?)

 私は慌てて藪の中に両腕を差し入れ、何か小さくて温かいものを掴むと、そっと引っ張り出した。

『ちょっと、君大丈夫?』

 それはまだ二、三歳くらいの幼児だった。ぐったりとしているが、目は薄く空いており意識はあるようだ。

 私はその子を横たえると、髪や服についていた葉っぱや小枝を取り払う。
 そして、普通の子どもとは違うある特徴に気が付いた。

『え、これってもしかして……』


 やけに毛量の多い頭だと思っていたら、小枝を取り除いた瞬間にぴょこんと三角形の毛の塊りが飛び出してきた。ぱっと見それは、猫などの動物の耳のように見える。
 また、服装は小さく簡素なものだが、着物のような形をしていた。ちなみに、この辺りで最近お祭りなどは催されていない。

(うーん、これは……)

 私が嫌な予感に包まれていると、その子はもぞもぞと手足を動かして寝返りを打った。すると、その後ろ姿は先程のパン屋のパンのような色をした、何かふわふわとしたもので遮られる。

『……尻尾、ですね』

 認めたくないが、認めざるを得ないだろう。

『ふむ、妖狐の子どものようじゃの』

(やっぱり妖怪かー!)
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