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第1章 東京浅草、魔王降臨す
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それは川の上に浮かんだまま、不思議そうに首を傾げた。
「本当に、貴様が望んで呼んだのではないのか? この私を?」
「いや、すいません……物のはずみと言いますか……」
俺は尻餅をついた姿勢のまま、もごもごと返答する。
先程から起きている怪現象は、クオリティからしてもドッキリ番組や手品ショーといったものでは無さそうだ。だいたい見ている人間が俺しか居ない。
とは言え、物のはずみでゲームや漫画に出て来るような魔王が、突然目の前に現れたりするだろうか。
光る魔王が突然隅田川から生えて来るなんて、そんな「新生・桃太郎&竹取物語ブレンド」みたいな話が現実に起きるはずがない。
(とりあえず帰そう! 帰ってもらおう!!)
俺は心の中で強く決心すると、もう一度口を開いた。
「……そう言う訳で完全に手違いなので、折角お越しいただいたんですけど、お帰りいただいて大丈夫ですので……」
さっきまでなんか光っていたし、得体の知れない相手だ。俺はなるべく穏便に済ませて早く帰ろうと思った。大分遅くなってしまったし、家で待っている幼い弟妹も心配だ。
「……ふーむ、でも折角抜け出せたしな……」
自称魔王は顎に手を当てると、何やら独り言を呟いた。
「あの……?」
俺が声を掛けると、魔王は再びこちらに向き直って言った。
「……ふむ、魔王が呼び出されて魔界にとんぼ返りというのも面子が立たないものでな。ましてや、人間が手違いで呼び出せる程、召喚の儀式は簡単では無かったはずだ。一体、何があったのか我に説明してみせよ」
彼はそこは王様らしく、偉そうに腕を組んで俺に命令した。
これはそう簡単に帰ってくれそうもない。内心面倒な事になったと思いながらも、俺は仕方無く頷いた。
「……分かりました。ちゃんと説明しますから、いつまでもそんな所に浮かんでないで上陸して下さい」
頭上には高速道路が走っており、対岸からも目を凝らせば、人が川面に浮かんでいるのが見えるはずだ。しかも垂直に。
目撃されて騒ぎになったら、俺まで警察やマスコミに根掘り葉掘り聞かれるかもしれない。
無理だ。俺は明日もバイトで忙しい。
「……分かった」
そんな心配をしていると、彼は意外と素直にこちらまで飛んで来て、ふわりとリバーサイドに降り立った。
「……これでいいか?」
やはり身体にワイヤーなども付いていない。この男はさっきまで本気で空中を飛んでいたのだ。
魔王は俺より少し背が高く、角と羽こそ生えているが、顔や手足は不思議な紋様がある以外、ほぼ普通の人間と変わらなかった。
「……あ、ええ。じゃあ、あそこのベンチに座って話しましょうか……」
観察もそこそこに、俺は手近にあったベンチを示すと、魔王と並んで腰掛けた。
ちなみに、座る直前に彼の羽が輝きながら消えた。
「収納出来るんですね……」
「収納……羽の事か? まあ、普段は割と邪魔だからな」
確かに、その点は想像に難くない。
まあ、羽を仕舞って貰ったお陰で、大分怪しさも抑えられた気がする。
角の生えた男と並んで座っているくらいなら、もし誰かに見られても「遊園地帰りに名残惜しくてベンチでまったりしている人達」くらいに思って貰えるだろう。
「では、説明して貰おうか」
魔王は無表情のまま促した。俺は仕方なく今日一日の記憶を辿る。
「ええと……じゃあ、まずは今朝の出来事から……」
「本当に、貴様が望んで呼んだのではないのか? この私を?」
「いや、すいません……物のはずみと言いますか……」
俺は尻餅をついた姿勢のまま、もごもごと返答する。
先程から起きている怪現象は、クオリティからしてもドッキリ番組や手品ショーといったものでは無さそうだ。だいたい見ている人間が俺しか居ない。
とは言え、物のはずみでゲームや漫画に出て来るような魔王が、突然目の前に現れたりするだろうか。
光る魔王が突然隅田川から生えて来るなんて、そんな「新生・桃太郎&竹取物語ブレンド」みたいな話が現実に起きるはずがない。
(とりあえず帰そう! 帰ってもらおう!!)
俺は心の中で強く決心すると、もう一度口を開いた。
「……そう言う訳で完全に手違いなので、折角お越しいただいたんですけど、お帰りいただいて大丈夫ですので……」
さっきまでなんか光っていたし、得体の知れない相手だ。俺はなるべく穏便に済ませて早く帰ろうと思った。大分遅くなってしまったし、家で待っている幼い弟妹も心配だ。
「……ふーむ、でも折角抜け出せたしな……」
自称魔王は顎に手を当てると、何やら独り言を呟いた。
「あの……?」
俺が声を掛けると、魔王は再びこちらに向き直って言った。
「……ふむ、魔王が呼び出されて魔界にとんぼ返りというのも面子が立たないものでな。ましてや、人間が手違いで呼び出せる程、召喚の儀式は簡単では無かったはずだ。一体、何があったのか我に説明してみせよ」
彼はそこは王様らしく、偉そうに腕を組んで俺に命令した。
これはそう簡単に帰ってくれそうもない。内心面倒な事になったと思いながらも、俺は仕方無く頷いた。
「……分かりました。ちゃんと説明しますから、いつまでもそんな所に浮かんでないで上陸して下さい」
頭上には高速道路が走っており、対岸からも目を凝らせば、人が川面に浮かんでいるのが見えるはずだ。しかも垂直に。
目撃されて騒ぎになったら、俺まで警察やマスコミに根掘り葉掘り聞かれるかもしれない。
無理だ。俺は明日もバイトで忙しい。
「……分かった」
そんな心配をしていると、彼は意外と素直にこちらまで飛んで来て、ふわりとリバーサイドに降り立った。
「……これでいいか?」
やはり身体にワイヤーなども付いていない。この男はさっきまで本気で空中を飛んでいたのだ。
魔王は俺より少し背が高く、角と羽こそ生えているが、顔や手足は不思議な紋様がある以外、ほぼ普通の人間と変わらなかった。
「……あ、ええ。じゃあ、あそこのベンチに座って話しましょうか……」
観察もそこそこに、俺は手近にあったベンチを示すと、魔王と並んで腰掛けた。
ちなみに、座る直前に彼の羽が輝きながら消えた。
「収納出来るんですね……」
「収納……羽の事か? まあ、普段は割と邪魔だからな」
確かに、その点は想像に難くない。
まあ、羽を仕舞って貰ったお陰で、大分怪しさも抑えられた気がする。
角の生えた男と並んで座っているくらいなら、もし誰かに見られても「遊園地帰りに名残惜しくてベンチでまったりしている人達」くらいに思って貰えるだろう。
「では、説明して貰おうか」
魔王は無表情のまま促した。俺は仕方なく今日一日の記憶を辿る。
「ええと……じゃあ、まずは今朝の出来事から……」
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