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第1章 東京浅草、魔王降臨す
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(ギリギリ間に合うなんて、今日はついてるぞ!)
そう思いながら、鞄から財布を取り出そうとして、ふと気が付いた。家に置いて来れば良かったのに、例の本をそっくり持って来てしまっていたのだ。
(なんだ、無駄に荷物重くしちまったな。まあ、いっか。唐揚げ買えたし! いつもなら最後の一個が目の前で売り切れたりするのに奇跡だぜ!)
今思えば、そんな嬉しさに気を取られて油断していたのかも知れない。
俺は急いで帰ろうと、自転車に戻った。前かごに留まっていたカマキリに威嚇されたりしたが、今のスーパーラッキーな俺はそんなものにひるまない。
摘んでひょいとカマキリをどけ、荷物を前籠に入れると、さっきの謎の岩も余裕で躱しながら元来た道を辿った。
しかし、次の試練はそうもいかなかったのだ。
「うわっ!?」
何か黒いものが、突然目の前に落ちて来た。直前に岩を避けてバランスを崩していた上に、変なハンドルの切り方をしたので、俺は自転車ごと思い切り倒れてしまった。
ガシャン!
「いっ!」
自転車は斜めに橋の欄干に寄りかかる形になり、俺も肩を手摺りにぶつけたものの、咄嗟に足をついたので大きな怪我は無かった。
「くっそ……」
目の前でカシャカシャと音がする。欄干の上で、大きなカラスが飛び跳ねていた。
どうやらこいつが俺の自転車目掛けて急降下して来たらしい。
「さては唐揚げを狙ったな……こいつ」
そこで前籠に目をやった俺は、ある事に気が付いて、一気に血の気が引いた。
「鞄が……無い」
財布も、今日のバイト代の残りも、唐揚げも、双子へのお土産の絵本も、全て入った俺の鞄が忽然と姿を消していた。
(地面にも無い……って事は……)
俺は手摺りから隅田川を覗き込んだ。鞄は角が少し水面から浮き出た状態でゆっくりと川下へ流されていた。
「うっそだろ……」
諦めきれない俺は、雷光速を立て直し、引き摺りながらリバーサイドへ向かう。
自転車は一旦隅に置いて、川縁に向かうと目を凝らした。
「あった!」
しかし、到底ここから手の届く距離ではない。上手くこちらに流されて来ないだろうか。周囲を見回したが、手頃な棒切れやなんかは落ちていない。
やきもきしている間に、鞄はすっかり沈んで見えなくなってしまった。
「……ああ……」
俺は力なく崩れ落ち、その場に膝を着く。
(もうやだこんな不幸体質……)
唐揚げが買えたのは、その後の不幸を増幅するための演出だったのだとしたら神様って奴は相当にタチが悪い。俺は心底神を呪った。
しかし、不幸はそこで終わらなかったのだ。
急に目の前が明るくなった気がして顔を上げると、川面が紫色に光り輝いていた。ちょうど鞄が沈んだ辺りだ。
「は?」
やがてその光はゲームで見る魔法陣のような紋様を描き始めた。辺りには不思議な煙が立ち込め、紋様の中央から何かがせり上がって来る。
「……なるほど」
ようやく、これまでの経過を話し終え、魔王は顎に手を当てながら深く頷いた。
そう思いながら、鞄から財布を取り出そうとして、ふと気が付いた。家に置いて来れば良かったのに、例の本をそっくり持って来てしまっていたのだ。
(なんだ、無駄に荷物重くしちまったな。まあ、いっか。唐揚げ買えたし! いつもなら最後の一個が目の前で売り切れたりするのに奇跡だぜ!)
今思えば、そんな嬉しさに気を取られて油断していたのかも知れない。
俺は急いで帰ろうと、自転車に戻った。前かごに留まっていたカマキリに威嚇されたりしたが、今のスーパーラッキーな俺はそんなものにひるまない。
摘んでひょいとカマキリをどけ、荷物を前籠に入れると、さっきの謎の岩も余裕で躱しながら元来た道を辿った。
しかし、次の試練はそうもいかなかったのだ。
「うわっ!?」
何か黒いものが、突然目の前に落ちて来た。直前に岩を避けてバランスを崩していた上に、変なハンドルの切り方をしたので、俺は自転車ごと思い切り倒れてしまった。
ガシャン!
「いっ!」
自転車は斜めに橋の欄干に寄りかかる形になり、俺も肩を手摺りにぶつけたものの、咄嗟に足をついたので大きな怪我は無かった。
「くっそ……」
目の前でカシャカシャと音がする。欄干の上で、大きなカラスが飛び跳ねていた。
どうやらこいつが俺の自転車目掛けて急降下して来たらしい。
「さては唐揚げを狙ったな……こいつ」
そこで前籠に目をやった俺は、ある事に気が付いて、一気に血の気が引いた。
「鞄が……無い」
財布も、今日のバイト代の残りも、唐揚げも、双子へのお土産の絵本も、全て入った俺の鞄が忽然と姿を消していた。
(地面にも無い……って事は……)
俺は手摺りから隅田川を覗き込んだ。鞄は角が少し水面から浮き出た状態でゆっくりと川下へ流されていた。
「うっそだろ……」
諦めきれない俺は、雷光速を立て直し、引き摺りながらリバーサイドへ向かう。
自転車は一旦隅に置いて、川縁に向かうと目を凝らした。
「あった!」
しかし、到底ここから手の届く距離ではない。上手くこちらに流されて来ないだろうか。周囲を見回したが、手頃な棒切れやなんかは落ちていない。
やきもきしている間に、鞄はすっかり沈んで見えなくなってしまった。
「……ああ……」
俺は力なく崩れ落ち、その場に膝を着く。
(もうやだこんな不幸体質……)
唐揚げが買えたのは、その後の不幸を増幅するための演出だったのだとしたら神様って奴は相当にタチが悪い。俺は心底神を呪った。
しかし、不幸はそこで終わらなかったのだ。
急に目の前が明るくなった気がして顔を上げると、川面が紫色に光り輝いていた。ちょうど鞄が沈んだ辺りだ。
「は?」
やがてその光はゲームで見る魔法陣のような紋様を描き始めた。辺りには不思議な煙が立ち込め、紋様の中央から何かがせり上がって来る。
「……なるほど」
ようやく、これまでの経過を話し終え、魔王は顎に手を当てながら深く頷いた。
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