35 / 92
第3章 魔王の参謀と花火大会
33
しおりを挟む
「保育園に延長かけられるか聞いてはみますが……」
「出来る限りでいいから、お願いしますっ!」
予定からは遅れてしまうが、それならなんとか花火には間に合いそうだ。
「わかりました……なんとか頑張ります!」
それから、俺とマオは昼前から外でフランクや飲み物を売り始めた。さすがにまだ花火を観に来たという感じの客は少ないが、何人か浴衣姿のお客さんも見かけた。
「いつもお前達が着ている衣服とは雰囲気が異なるな?」
マオは浴衣を見ながら首を傾げた。
「ああ、浴衣だよ。日本の伝統的な衣装……は着物になるのか? ん~、改めて考えるとどう説明したらいいか分かんねーけど、この国の人間は昔あんなような格好をしてたんだ。着物ってやつのもっと涼しくてペラペラしたやつだな」
専門の人が聞いたら怒られそうな雑な説明だが、俺にはそのくらいの言葉しか浮かばなかった。
「涼しいのか……確かにここはちと暑いな……」
いつもは涼しげな表情のマオも、さすがに真夏の直射日光は堪えるらしい。
「もう少しこっち来て傘の下に入ってろよ。熱中症になる前に、ちゃんと休憩貰おうぜ。そうだ、俺の浴衣どっかにしまってある気がするんだよな~。今夜お前着てみるか?」
「興味はあるが、これを売らねばならんのだろう?」
マオは冷静にホットショーケースを軽く小突いた。
「だよな~。双子とも約束しちまったし、せめて花火の開始時間には間に合うと良いんだけど……」
そう話している間にも、昼飯を買いに来た近所の会社員が数本買ってくれたが、バックヤードにはまだ山のようにフランクフルトがある。
「もし時間までに売り切れなければ、お前だけ先に上がらせて貰え。俺が代わりにお前の分も売っておいてやろう」
マオは真顔でさらりとそう言った。悪魔の王からこんなに自然に、親切な台詞が飛び出してくるものだろうか。
「お前……さては本気のイケメンだな?」
「? いけめんとはなんだ?」
マオはきょとんとしている。魔王ってやつは、人間を苦しめて喜ぶような極悪非道の代名詞ではなかったのだろうか。
この一週間一緒に暮らしていても、彼から邪悪さは微塵も感じられない。むしろマオはとても素直な性格をしていた。
(コイツ、本当に魔王なのか……? なんか普通に良い奴なんだよな……)
ジリジリと太陽に照りつけられながら、俺達は屋台に立ち続けた。
午後からは客足も増え始めた。店長と相談して、数本まとめて買うと安くなるように価格設定を工夫したりしたので、一気に十本近く売れる事もあった。花火大会に合わせて、家族や親戚が集まっている家もあるのだろう。
「あ、こっち無くなってきたな……」
「ほいほい、追加分でござるよ!」
ホットショーケースの中身が減ってくると、すぐに店内から補充分が運ばれて来る。
午後から斉藤さんが焼き担当に加わったので、店内でフランクも焼き鳥もどんどん量産してくれていた。
「拙者、正直接客より黙々と作業する方が得意でござるよ。焼き作業は任せるでござる!」
「斉藤殿は頼もしいな」
「いやいや、客集めと販売は拙者には向きませぬ故、其方はマオ殿を頼りにしているでござる」
実際、イケメン店員が居るという噂でも広がったのか、徐々に女性客が増えてきていた。
(このままいけば、時間までに売り切れるんじゃないか……?)
俺は淡い期待に胸躍らせながら、先頭の客にフランクを手渡した。
「出来る限りでいいから、お願いしますっ!」
予定からは遅れてしまうが、それならなんとか花火には間に合いそうだ。
「わかりました……なんとか頑張ります!」
それから、俺とマオは昼前から外でフランクや飲み物を売り始めた。さすがにまだ花火を観に来たという感じの客は少ないが、何人か浴衣姿のお客さんも見かけた。
「いつもお前達が着ている衣服とは雰囲気が異なるな?」
マオは浴衣を見ながら首を傾げた。
「ああ、浴衣だよ。日本の伝統的な衣装……は着物になるのか? ん~、改めて考えるとどう説明したらいいか分かんねーけど、この国の人間は昔あんなような格好をしてたんだ。着物ってやつのもっと涼しくてペラペラしたやつだな」
専門の人が聞いたら怒られそうな雑な説明だが、俺にはそのくらいの言葉しか浮かばなかった。
「涼しいのか……確かにここはちと暑いな……」
いつもは涼しげな表情のマオも、さすがに真夏の直射日光は堪えるらしい。
「もう少しこっち来て傘の下に入ってろよ。熱中症になる前に、ちゃんと休憩貰おうぜ。そうだ、俺の浴衣どっかにしまってある気がするんだよな~。今夜お前着てみるか?」
「興味はあるが、これを売らねばならんのだろう?」
マオは冷静にホットショーケースを軽く小突いた。
「だよな~。双子とも約束しちまったし、せめて花火の開始時間には間に合うと良いんだけど……」
そう話している間にも、昼飯を買いに来た近所の会社員が数本買ってくれたが、バックヤードにはまだ山のようにフランクフルトがある。
「もし時間までに売り切れなければ、お前だけ先に上がらせて貰え。俺が代わりにお前の分も売っておいてやろう」
マオは真顔でさらりとそう言った。悪魔の王からこんなに自然に、親切な台詞が飛び出してくるものだろうか。
「お前……さては本気のイケメンだな?」
「? いけめんとはなんだ?」
マオはきょとんとしている。魔王ってやつは、人間を苦しめて喜ぶような極悪非道の代名詞ではなかったのだろうか。
この一週間一緒に暮らしていても、彼から邪悪さは微塵も感じられない。むしろマオはとても素直な性格をしていた。
(コイツ、本当に魔王なのか……? なんか普通に良い奴なんだよな……)
ジリジリと太陽に照りつけられながら、俺達は屋台に立ち続けた。
午後からは客足も増え始めた。店長と相談して、数本まとめて買うと安くなるように価格設定を工夫したりしたので、一気に十本近く売れる事もあった。花火大会に合わせて、家族や親戚が集まっている家もあるのだろう。
「あ、こっち無くなってきたな……」
「ほいほい、追加分でござるよ!」
ホットショーケースの中身が減ってくると、すぐに店内から補充分が運ばれて来る。
午後から斉藤さんが焼き担当に加わったので、店内でフランクも焼き鳥もどんどん量産してくれていた。
「拙者、正直接客より黙々と作業する方が得意でござるよ。焼き作業は任せるでござる!」
「斉藤殿は頼もしいな」
「いやいや、客集めと販売は拙者には向きませぬ故、其方はマオ殿を頼りにしているでござる」
実際、イケメン店員が居るという噂でも広がったのか、徐々に女性客が増えてきていた。
(このままいけば、時間までに売り切れるんじゃないか……?)
俺は淡い期待に胸躍らせながら、先頭の客にフランクを手渡した。
0
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる