東京浅草、居候は魔王様!

栗槙ひので

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第3章 魔王の参謀と花火大会

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 地上に降りた俺は、厩橋へと急ぐ。橋の入り口付近は交通規制がかかっており、順番に並んで歩かないと進めない状態だ。

 仕方なく俺は列の後ろについて空を見上げ、悪魔達の姿を探した。

 ドドン! ドンドン!

 そうしている間にも、美しい花火が次々と夜空に打ち上がっていく。周囲の人間はそれを見るために空を見上げているのだが、俺はその綺麗な花火を楽しむ事もなく、夜の闇の方にひたすら目を凝らしていた。

 やっと橋の上まで来ると、視界が開けて川が見渡せるようになる。

(いた!)

 二人は花火よりはずっと下、川面から百メートルくらいの高さで追いかけっこを続けていた。

(あの馬鹿、今あんなとこをふらふら飛んでたら花火にぶつかっちまうぞ!?)

 もしかすると花火師さん達も、カラスにしてはデカイ影に気が付いて、今頃驚いているかもしれない。とにかく面倒な事になってからでは遅い。
 俺は焦りながら、人混みを掻き分けて欄干にじりじりと近づいて行った。

 やっとの事で一番端まで来れたものの、ここからどうやってマオに危険を知らせれば良いのか分からない。

 もたもたしていると、これから怒涛の連発スターマイン等が次々打ち上げられてしまう。
 いくら悪魔だって、不意にいくつもの火の玉が直撃したら、怪我くらいしてしまうかもしれない。

 ドンドンドン!

「たーまやー!」

 背後で誰かが叫んだ。

(……どうせ、今ここに居る奴等とは二度と会う事も無いだろう。変な奴だと思われる事ぐらい、どうって事はない)

 俺は覚悟を決めると、大きく息を吸い込んだ。

「マオーーーーっ!!!」

 俺は欄干から身を乗り出すようにして、自分に出し得る限りの大声で叫んだ。川の上を飛ぶ影が、一瞬こちらを振り向いたように見えた。その時、

「いいぞいいぞー! もっと打ち上げろー!」

「ほらアンタ、酔っぱらってんじゃないよ恥ずかしい! ちゃんと前へ進みな!」

「立ち止まらず、ゆっくり進んでくださーい」

「ちょっとー! りょーちゃん待ってよー!」

 何やら背後の人の流れが急に激しくなった。俺の身体はぐいぐいと欄干に押し付けられる。

「えっ?」

 重心を前方に傾けているところを、誰かの荷物でも当たったのか、尻からぐっと持ち上げられて、俺の身体はバランスを失う。

「嘘だろ……?」

 次の瞬間、俺は先日の鞄のように隅田川に真っ逆さまに落ちていた。

「おわああああ!?」

 駄目だ。俺はやっぱり不幸な運命から逃れられないのだ。

 そう思い目を閉じた瞬間、横から何かがものすごい勢いでぶつかってきた。

「なっ!?」

 身体が落下していく感覚が、ぐんと押し上げられる感覚に変化する。

 驚いて目を開けると、俺は厩橋の下を猛スピードで潜り抜けて反対側から空へと急浮上していた。

 ドドドドドド!

 橋の上から歓声が聞こえる。

 目の前には連射された何十発ものスターマインが色とりどりに輝いていた。

「ほう、綺麗なものだな」

 耳の横で知った声がした。俺はマオに背後から抱えられて、空を飛んでいたのだ。


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