東京浅草、居候は魔王様!

栗槙ひので

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第3章 魔王の参謀と花火大会

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「悪魔の年齢を見た目で判断されるおつもりですか?」

 サマエルはくすくすと笑う。

「私はクラース様が、そら様やうみ様と同じような容姿をされている頃から存じております」

 確かに悪魔ってやつは相当長生きなのだろう。人間と同じ感覚は通用しないか。

「ふーん……、お前ら随分長い付き合いなんだな」

 俺が呟くと、マオが心なしかうんざりした表情を見せた。やっぱりサマエルの事は少し苦手なようだ。

「ご馳走さま! 美味かったよ」

 朝食を終えて、俺が皿を洗いに流しへ向かおうとすると、サマエルが皿を取り上げた。

「お片付けもお任せください」

「え、でもお前まだ朝飯食ってないだろ? 洗い物くらい俺が……」

 俺の言葉を遮るように、サマエルがパチンと指を鳴らす。
 すると、台所スポンジと洗剤がふわりと浮かび上がり、蛇口から水が流れて桶に溜まった。

「ご安心下さい。節水モードです」

 俺が呆然とそれを眺めていると、洗剤を垂らされたスポンジは、勝手に飛び回ってサマエルが投げた皿とフォークを次々に磨き上げた。

 空飛ぶ食器達はめいめい水を浴びると、待ち構えていた布巾に拭かれて流し台の上に重なり、やがて静かになる。

「マジか……」

 食器や道具達が自発的に動いているような一連の動作は、まるでアニメーションでも観ているようだった。

「マジカ……ルですね。魔法でやってしまえば、まさに朝飯前なのですよ」

「サマエルすごーい!」

「おさらとんでたよ!」

「お前達は絶対に真似しちゃダメだぞ?」

 双子が皿を投げ割る未来が見えて、俺はすかさず注意した。
 サマエルは可笑しそうに笑う。

「さあ、お食事が終わられたら、クラース様はお二階でお仕事の続きを。幸也様は食材の買い出しにお付き合いいただきたいのですが? 食料庫には食材がほとんど残っていないようでして……」

「あ、そーか。そういや冷蔵庫ほぼ空だったな。じゃあ、そらとうみも一緒にスーパー行くか」

「いくー!」

 揃ってはしゃぐ双子の後ろで、マオが恨めしそうにこちらを見ていた。

「お仕事頑張れよ。お土産買ってきてやるから」

 マオは口をへの字に曲げたまま黙っている。

「マオおるすばん?」

「いいこでまてて!」

 双子にも励まされて、マオはようやく立ち上がった。
 すると、洗面所から電子音のメロディが流れてくる。

「あ、洗濯してたんだった。出掛ける前に干しちまうから、ちょっと待ってて」

 俺が洗濯機へ向かうと、サマエルも後ろからついてくる。蓋を開けて籠に洗濯物を出していると、サマエルが腕を組みながら言った。

「こちらも言って下されば手伝いましたのに。これから完全に乾燥させてシワをお取りしましょうか?」

「お前そんな事も出来るのか!?」

「勿論」

 なんだかこいつには悪魔の宰相というより、最強チート主夫としての凄みを感じる。

「……でもなんか、お前の力に頼りすぎると、どんどんダメ人間になっていく気がするわ……。出来る時はなるべく自分でやるようにする」

「ふふ、幸也様は苦労性ですね。利用出来るものなら、大いに利用すれば宜しいのに」

 サマエルはまた笑っている。

 俺は二階のベランダに洗濯物を干すと四角く切り取られた浅草の空を見上げた。今日も真っ青だ。

 俺は双子と一緒に着替えを済ませると、買い物に出掛ける準備を整えた。

 玄関に向かうと、サマエルがドアの前で待っていた。
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