東京浅草、居候は魔王様!

栗槙ひので

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第4章 欲望の悪魔と煌めきのカーニバル

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「うっ……、そ、それはクラース様に美味しい人間界の料理を召し上がっていただくために……」

 サマエルは明らかに焦っている。彼がここまで追い込まれるとは、やはりメレクは只者ではないのか。

「サマエルの欲望はさっき覗かせて貰ったからね。僕には誤魔化せないよ? で、クラースはどうして人間界に居残りたいのかな?」

 メレクがマオに近付こうとすると、マオはじりじりと後ずさった。
 その様子を見たメレクは、それ以上間合いは詰めず、大きなため息を吐く。

「ま、大体察しはつくからいーけど……君ももう子どもじゃないんだから魔王としての自覚は持ってよね? 後、その服微妙だからちゃんとお洒落なの着なよ?」

(……間接的にディスられた……)

 俺は不意打ちでファッションセンスを悪魔に駄目だしされ、少し不機嫌になったものの、メレクはお構いなしに話を進めた。

「じゃ、お店が閉まらない内に僕原宿見て帰るから! またねー!」

「メ、メレク様!?」

 メレクはサマエルの制止を無視して、楽しそうに笑顔を浮かべたまま溶けるように消えてしまった。

 しばらく呆然とする一同だったが、そらが俺のシャツを引っ張った。

「にいちゃ、あのひとだれ?」

「……マオの知り合いらしい」

「マオはたくさんおともだちがいるのね!」

 うみはにっこりとマオに微笑んだ。しかしマオは苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「厄介な事になりましたな……。あまり人間界に干渉し過ぎないように、メレク様には改めてお願いしてみますが、このような事が続くようなら、やはりクラース様も人間界にそう長居は出来ますまい……」

 サマエルは悩まし気に眼鏡を正す。
 マオの表情は益々暗さを増していた。

「さあ、皆さまお腹が空いていらっしゃるんじゃないですか? 気を取り直して夕飯にしましょう。今日はとびきり美味しいハンバーグをご用意しましたよ!」

「はんばぐ!」

「やったー!」

 双子は一気に大はしゃぎだ。

「サマエルの作ったハンバーグなら確かに美味そうだな。どーりでいつも飯の完成度が高いと思ってたけど、そんなに人間界の飯に興味があったなんて全然気付かなかったぜ……さ、行こうぜマオ」

 俺は浮かない顔をしているマオの背中を叩くと卓袱台に向かった。

 俺達は美味しいハンバーグで腹を満たし、その後は双子と一緒に風呂に入ってゆっくりした。

(さっきのピンク頭、確かに態度はデカかったけど、そんなにすごい悪魔なのかなぁ……)

「っぶっ!!」

 湯船に浸かって考え事をしていたら、そらに水鉄砲を喰らわされた。

「おい、そら!」

「そらやめてよー!」

 そらはケラケラと楽しそうに笑っている。うみはお湯に漬けると髪の毛の色が変わるお人形と、大人しくお湯に浸かっていたところをやられたようだ。

 俺達がきゃっきゃと騒ぎながら風呂から上がると、夕飯の片付けを終えたサマエルが魔界に引き上げるところだった。

「あ、お疲れ様。今日も飯美味かったわ」

「いえいえ、お粗末様です。あ、クラース様、お着替えはお待ちですか?」

「ああ……」

 俺達と入れ替えに、マオが風呂に入って行った。

「……なあ、あのメレクって奴そんなに凄いのか?」

 俺はそらの頭をゴシゴシと拭きながら、気になっていた事を尋ねた。

「ええ……まあその、私がクラース様のお目付役というお話はさせていただいたと思いますが、メレク様は先代のお目付役をされていたのです」

「え、先代ってつまりマオの父さん!?」

「……はい、ですので宰相の身でもメレク様には頭が上がりません。それはクラース様も同じかと……」

 俺は悪魔の見た目年齢が益々分からなくなった。

「彼の動向は私も注視しますが、私の居ない間はクラース様を宜しくお願い致します」

 サマエルはそう言って俺に一礼すると、静かに闇に消えていった。
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