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外の世界は新鮮
しおりを挟む元から少ない荷物は時間もかけずに簡単にまとまった。
普段はあんな簡単なことで泣くのに、いざとなったら頭の中は空っぽになって何も考えずひたすら荷物をしまう手を動かす。
嫁ぐ際に持ってきたものなんて、伊織に少しでも可愛いと思って欲しくて気合を入れて準備した着物くらい。
あとはちょっとした小物や化粧品
結局、可愛いや綺麗なんて褒め言葉は一切言われないまま役目を終えてしまった。
いくら興味がないといっても、面倒を見てもらった身だ。
何も言わずに家をでるのは、さすがに気を悪くするかもしれない。
その気持ちの中には自分の存在があった証拠を少しでも残したいと感じていたのかもしれない。
引き出しからメモを取り出し、一言だけ添えたメモを離婚届の横に行き、恵麻は片手に大きなカバンを持ち家を出た
荷物は少ないはずだが、か弱い恵麻には重く感じる鞄。
片手で持っていると体のバランスが偏ってしまうため両手で持つ。
門を出ると、なんだか不思議な感覚に襲われる。
伊織には1人で出かけることが禁止されていたため、外で1人きりになるのは伊織と結婚して以来初めてだ
家を出たがいいが、何も計画せずに家を出て来てしまったため、家の付近をウロウロとしながら今後の予定を考える
実家に帰るという選択肢はない
すでに金剛家からは実家へと連絡がいっていると思われるため、実家では離婚したことを咎められ余計に自分の居場所がなくなるに違いない。
それか、すぐに他の家の嫁に行かされるかもしれない。
"私の旦那様は伊織様しかありえないんだから、他の家の嫁になんて行かないわ"
恵麻にはそんな固い意志があるため、伊織と離婚したからには生涯独身を誓ったようなものだ。
だからといって宿などに毎日泊まれるような金があるわけでも無い。
伊織が稼いできた金で生活をしてきた恵麻には貯金というものがなかった。
そのため、嫁入り前に溜めていたほんの少しの金しかない。
「どうしようかな…」
そう呟いたとき、ある人物の顔が頭に浮かぶ。
「あ、そうだ!」
恵麻は近くの公衆電話に向かい、ダメ元でその人に電話をかけた
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