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しおりを挟む「あ!蒴ちゃん!
おはよう」
「おはよう」
菫が学校に行く時間、部屋の扉を開くと蒴も部屋から出てくる。
蒴のキチッと決められたスーツ姿にうっとりとしながら、蒴との距離を縮め抱きつく。
蒴は昔から何度も繰り返されるその行為に特に違和感を覚えることはない。
いつも通り、菫の背中に腕を回し抱きしめ返した。
「蒴ちゃん、いい匂いする…」
「そう?どんな匂い?」
蒴の胸元に顔を寄せて、匂いを嗅ぐ菫を見下ろしながら蒴は口元に笑みを浮かべる。
菫が胸元から顔を上げたと同時に、菫の耳にかけていた髪がはらりと顔にかかる。
蒴は指先を伸ばして、その髪を菫の耳元にかけなおした。
「んーとね、石鹸みたいな香りと優しい香り」
菫は花が咲いたような柔らかい笑みを朔へと向けると、蒴も菫を見て微笑み返す。
「そっか」
「今日もかっこいいね、大好き」
「ありがとう」
幼い頃、初めてした告白は見事に振られてしまい、それ以来、何度となく告白を試みても振られる連続。
それでも諦めきれず、息を吐くように蒴への愛を伝えるが、このように軽く流される。
さらにきつく抱きつくも、蒴に両肩を押されて2人の間に距離ができる。
「そろそろ仕事に行かないと」
「嫌だ、行かないで」
口元をへの字に曲げて、明らかに不機嫌そうにする菫に朔は眉を曲げて困ったような笑みを浮かべる。
「菫も学校行くんでしょ
行かないでなんて言ってらんないんじゃない?
いくら学校近いからって言ってももうすぐ時間でしょ」
菫と蒴が住むマンションは菫の学校からは徒歩で30分もかからない場所にある。
そのため、菫は毎日徒歩で学校に通っていた。
「え?大丈夫だよ
今日は早めに準備終えたもん」
得意げに話す菫に朔は自分の腕時計を菫に向けて見せると、時計の針が示す時間を見て菫は目を見開き自然と開いた口を片手で塞いだ。
「え!!遅刻かも!」
今すぐにでもマンションの廊下を駆け出していきそうな菫の腕を蒴が掴む。
「菫、車で送って行こうか?」
「え…いいの…?」
「いいよ、俺も今日は車で出勤するつもりだったし」
「ありがとう!朔ちゃん大好き!!」
「はいはい」
菫は蒴に勢いよく抱きつくと、蒴はそれを簡単に受け止めた。
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