好きな人の好きな人

ぽぽ

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洗面所で一旦髪を乾かそうと思った瞬間


「菫、風呂あがったの?」


後ろから突然声をかけられてびくんと体が跳ねる。


「びっくりした…
恭弥くん寝ちゃったのかと思った…
何してたの?」

「ああ、ちょっと電話が来たから話してた
それと仕事」


菫は胸元を押さえながら恭弥を見上げると、普段は見かけることのない眼鏡をかけていた。
眼鏡をかけるだけで普段の爽やかな印象とはまた違う知的で落ち着いた男性のイメージが倍増される。


「恭弥くん、眼鏡…」

「ああ、これ?
さっきまで残った仕事してたから外すの忘れてた」


恭弥が眼鏡を外そうとするため、菫はその手首をつかんで止めにかかる。


「何?」

「あの、すごく似合ってます…」


菫が下を俯くと髪の隙間から赤く染まっていく耳が恭弥からみえた。


「そう?ありがと、菫ちゃん」


恭弥が菫の赤くなった耳を引っ張ると、菫は硬直する。


「ちょ、菫?
大丈夫?」

「はい、大丈夫です」


まるで機械音のようになってしまった菫の声に恭弥は吹き出し、菫の背中を押してソファの方へと連れ出す。


「菫、髪乾かそっか」

「はい、今乾かしにいくところでした」

「じゃあ、俺が乾かしてもいい?」

「へ??」


機械のように返事していた菫が我に戻って恭弥の方を見る。


「だから俺が乾かしてもいい?
だめ?」

「いや、むしろご褒美なんじゃ…」

「お前やっぱおっさん臭いわ
ドライヤー持ってくるからここに座ってて」


菫は大人しくその場に座って待っていると、恭弥がドライヤーを持って戻ってきた。
正座をしながらまつ菫に違和感を覚えつつ、菫の後ろに座る。

ドライヤーの電源が入り、暖かい風が菫の髪を包み込む。そして、恭弥が指で菫の髪をすきながらつぶやいた。


「そういや、菫、髪」

「え?何?」


ドライヤーの音が大きく、恭弥の声がかき消されてしまい、菫は恭弥の方へと背中を預けて聞き返す。


「髪染めましたかー?戻したの??」


耳元でだいぶ大きな声で話されて、菫は両手で耳を塞いだ。


「うるさい!」

「はいはい、ごめんね」

「髪ね、染めたよ
元の髪色に戻した
いつまでも、蒴ちゃんカラーなんて引きずってるみたいで嫌だもん」

「うん、いいんじゃない?」

「反応、適当~」

「別に適当じゃねえって
本当にいいと思ってるよ」


髪の毛が乾かし終わると、恭弥は菫の髪を適当に整えてドライヤーをかたしにいく。


「恭弥くん、ありがとう!」

「どういたしまして」


その日は菫の部屋が片付いていなかったこともあり、恭弥が寝室のベッドを貸してくれることになった。
だが、菫はベッドにある違和感を覚える。


「なんでベッドがこんなに大きいの??」


恭弥のベッドはなぜかクイーンサイズのベッドだった。1人で寝るには十分過ぎるほど大きい。


「んー、まあ、俺は広いベッド派なの
いいから早く寝ろよ」

「恭弥くん、体も大きいし寝相悪いからベット大きくしたんでしょ??」

「寝相悪いとかいつの話してたんだよ
ガキの頃だろ?」

「今も悪いからこんなに大きいんでしょ?」

「まあ、そういうことにしとくわ
じゃあ、俺はリビングで寝るから」

「え??一緒に寝ないの??」

「はあ??お前マジで言ってんの??」


恭弥はため息をつき、訝しげな瞳で菫を見る。


「え、だって恭弥くんのお家だし…
私がベッド占領するのもおかしいかなって」

「だからって男と簡単にベッドで寝るとかいうな、阿呆。電気消すぞ」


恭弥は寝室の電気を消して部屋を出て行く。
菫はフカフカの布団に包まれながら眠りについた。
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