好きな人の好きな人

ぽぽ

文字の大きさ
100 / 105

しおりを挟む


あれから数日が経ち、菫と恭弥は相変わらず2人で暮らしているが、恭弥がいつもの様子と全く変わりないことに違和感を覚える。

(恭弥くんって私のこと好きなんだよね…??)

告白してきたことが疑心暗鬼になる程、いつもと変わらない様子だ。
ぼーとしながら洗面台で歯磨きをしていると、突然、背後から手が伸びてきた。

自分の顔の真横に長い腕が通る。それだけで息が止まりそうになり危うく歯ブラシが喉の奥に刺さりそうになった。


「ごめんね、ちょっと邪魔するよ」


恭弥はそういうと、自分専用の歯ブラシを手に取って何事もなかったかのように部屋に戻ってしまった。
菫は歯ブラシを咥えたまま、恭弥の姿を視線で追った。歯を磨き終わり、再び恭弥の告白後の態度について考え込んでいると呼び止められた。


「菫」

「っはい!」


いつもならこんな反応をしないのに、過剰に反応してしまい恥ずかしくなる。


「そんなにびっくりしてどうしたの?」

「いや、特に何もないんだけど…」

「今日帰り遅くなる」

「えっ?仕事が溜まってるの?」

「いーや、プライベートの用事よ」

「プライベートの用事って…」


その続きを言いかけて言い淀む。
頭に浮かんだのは女性とのデートではないのかという疑惑。

恭弥の顔面はかなり整っているのだ。元スポーツマンであり、スタイルもよく高身長だ。そして、性格も優しく包容力がありモテないわけがない。そんなことを今更になって思い知る。
 

「帰り遅くなるから戸締り頼んだ」

「…うん」


恭弥は菫の頭をポンポンと撫でると、そのまま家を出てしまう。
なんだかモヤモヤとした気持ちを抱えつつ、大学へ向かう用意を再開した。

学校が終わり、家に帰るももちろん恭弥はいないためしんとしている。夜は恭弥は用事があるため、菫1人だけだ。そのため、夕飯を用意しなければならない。過保護になりつつある恭弥は菫が火や包丁を使うことをできるだけ避けて欲しいと言っているため、普段から料理はあまりしない。

何を食べようか。いっそのこと食事を抜いてしまおうかなんて考えている時に携帯の受信音が鳴った。なんだろうと通知を確認してみると母からの連絡だった。

料理好きの母が得意なミートパイの画像が添えられており、今日家に食べにこないかという誘いだった。最近家に帰っていなかったことに気づき、晩御飯にもありつけるという絶好のチャンスのため菫はすぐに身支度を整えた。

実家に顔を出すと、愛犬ロディが尻尾が千切れんばかりにふって菫の元に駆け寄る。


「ロディ、ただいまあ!」


菫がしゃがむとロディはこれでもかとばかりに菫の顔をぺろぺろと舐めて歓迎した。
玄関で菫の声を聞きつけた母がリビングから顔を出す。  


「菫~、おかえり~」

いつもとは違う母の弾んだような声に違和感を覚えつつ、娘が久々に帰ってきて気分がいいだけなのかもと思うようにした。
リビングに顔を見せると、母はキッチンで気分よく鼻歌を歌いながら料理をしている。


「ママ、なんかいいことあったの?」

「んー?いいこと??
そうねえ、これから起こるかも」

「ん?なんか占いとかの話?
ママの星座占いが今日は1位だったとか?」

「そんなことじゃないわよ」


そう言いながら相変わらず気分良さそうに夕食を作っていく。テーブルに並んだのは菫の好きな料理ばかりだ。


「それにしてもなんか量多いね?
明日の分に回すの?」

「ん?どうかしらね?
あ、お父さん帰ってきた」


スリッパのパタパタという足音を立てて、玄関で出迎えた。菫もその後をついていくと、父と共に立っていた人に衝撃を受ける。
しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

偽りの婚約者だった私を捨てたあなたへ——今さら何のご用ですか?

usako
恋愛
婚約者に捨てられ、すべてを失ったと思っていた——。 けれど、そこで終わりではなかった。裏切りの記憶を胸に、地道に努力を重ねた主人公は、数年後、仕事でも恋でも頂点に立つ。 そんな彼女の前に、かつて彼女を踏みにじった男たちが現れる。 「あの時とは違う」と縋る声に、彼女は穏やかに微笑んで言う——「今さら何のご用ですか?」 ざまぁ、そして溺愛。冷たく燃える“恋と復讐”のシンデレラ・ラブストーリー。

大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria
恋愛
「私、アマンド様と愛し合っているの。レイリア、本当にごめんなさい。罪深いことだとわかってる。でも、レイリアは彼を愛していないでしょう?どうかお願い。婚約者の座を私に譲ってほしいの」 親友のメイベルから涙ながらにそう告げられて、私が一番最初に思ったのは、「ああ、やっぱり」。 婚約者のアマンド様とは、ここ1年ほど余所余所しい関係が続いていたから。 2人が想い合っているのなら、お邪魔虫になんてなりたくない。 心が別の人にあるのなら、結婚なんてしたくない。 そんなわけで、穏便に婚約解消してもらうために、我儘になってナチュラルに嫌われようと思います! でも本当は… これは、彼の仕事の邪魔にならないように、自分を抑えてきたヒロインが、我儘に振る舞ううちに溺愛されてしまう物語。

私の大好きな彼氏はみんなに優しい

hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。 柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。 そして… 柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。

「好き」の距離

饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。 伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。 以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。

君に何度でも恋をする

明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。 「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」 「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」 そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。

彼の過ちと彼女の選択

浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。 そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。 一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。

処理中です...