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春は出会い……
昨日の約束とタンク脱着
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昨日は、窓口ばかりで大変だったけど、今日の放課後はまた部に復帰できるね。
え? なんか嬉しそうだって? そんな事ないやい! 結衣、おかしくない? 私はこの部に対して、そんな意気込みなんかないからね。
単に、初代部長だっていう称号が魅力的なだけだから。
おおっ! 悠梨班、エッセの外装終わったの? 超イケてるじゃん! これってカッティングシートだけで仕上げたんでしょ?
凄いよ! 元のオレンジもさ、ちょっと冴えない感じの色合いだったけど、この灰色のカッティングだと、互いに主張が均衡してて、嫌らしくないよ。それでいてさ、後ろのドアが、チェッカーフラッグ模様になってて、レースカーって感じだよー! これって、外装だけなら、ウチが優勝じゃね?
よし、S14の整備も終盤か、ミッションオイルの交換もやりたいけど、なんか、水野がペール缶で買ったらしいんだ。
それが届くのが、月曜日らしいから、今日は昨日買ったライトのバルブと、ワイパーのゴム交換だね。
ワイパーのゴム交換は、結構楽勝だよね。
普通は、ワイパーゴム交換くらいの軽作業から入っていくのに、ウチは、ブレーキのオーバーホールの方が先なんて、なんちゅう部だろうね?
じゃぁ、1、2年生のみんな、説明するね。
ワイパーゴム交換の注意点は、失敗すると窓を割っちゃう可能性があるから、必ず厚めの雑巾を用意する事だよ。
まずはアームを立てて、ブレードをアームから引き抜く、ブレードの根元にボタンがあるから、押しながらアームの根元の方に向かって引っ張ると抜けるからね。
そしたら、アームの先端を、雑巾でぐるぐる巻きにして、そっと、ガラスの上に戻しておく、ここで、うっかりして、雑巾を巻かない状態で、アームを立てっ放しとかにしておくと、なんかの拍子に、アームが倒れたらガラスを直撃して割れちゃうからね。フロントガラスが割れると、修理代は余裕で10万円くらいするからね。
そして、ブレードについてるゴムを引き抜くんだけど、ゴムをよーく見ると、引き抜く方向が分かるからね。
そう、ブレードの爪が引っ掛かってるゴムの溝の、長くなってる方向に向かって引き抜くんだよ。そして、逆の要領で取りつけていくんだ。ちなみに、古くなったゴムの中に入ってる鉄芯は、配線を室内に引き込む時なんかにも使えるから、みんなも自分の車を持った時、いくつか持ってた方が良いよ。
よし、これでワイパーゴム交換は終わった。
あとは柚月に任せて、私はS14班から離脱して、GTE班のヘルプに入るよ。
どう? 結衣、優子。
浮きサビは大半削り落としたから問題なしか、アームとかを、どうするかって?
アームに関しては、交換できるものはして、無理なところは、サビ転換剤塗って、処理するしかないね。
私さ、思うんだけど、1回ショック外して、サスの取り付け部分の辺りまで、サビ落としとサビ止め作業やった方が良いと思うんだよね。
あの、サスの取り付けの隙間とかに、なんか隠れてるサビがありそうでさ、ここまできたら、やっちゃった方が良いと思う。
……そして、私は、ある1点をに目が行った。そして、思わず言っちゃったんだけど、その時の声のトーンが、思いの外、低くて、みんな驚いちゃったらしいよ。
「タンク、降ろしちゃおうよ」
「ええっ!?」
結衣が、物凄いトーンで驚いた。
そして、すぐさま、私に喰ってかかってきた。
「何言っちゃってんのよ、マイ、あれって燃料タンクだよ?」
「分かってるよ」
「分かってるって……どんだけ重くて、大変な作業だか分かってるの?」
「ある程度はね」
結衣は、はぁ~っと、重いため息をつくと言った。
「大体、外してどうするのよ!」
結衣さ、ネットで見たけど、R32と、S13系の燃料タンクの直上は、タンクに隠れてサビが進行してるケースが多いらしいよ。その上で、この車は表面サビとは言え、あれだけサビてたんだから、きっと、タンク外したら、同じようにサビてると思うんだよ。
今、ここで、タンク降ろすの億劫がって、それ以外を処理しちゃってさ、半年後にタンクの所が腐って抜けたら、今日までの作業が勿体無くね? 私が言ってるのはそういう事だよ。それにさ、もしタンクの上もサビ酷かったら、タンクも交換しなくちゃ……だしさ。
「ううっ……」
ここまで理論立てて言うと、結衣は何も言えなくなるのは知ってるんだ。だから、理論武装の上で臨んだんだけどね。
「私は、やらないからね!」
結衣ったら、我儘言い始めちゃったよ。だからツンデレは困っちゃうね。
……だったら、アームの交換作業やる? あれはあれで、ネジが外れなくて大変だと思うけど。
「ついでだから、テンションロッドの交換もした方が、良いと思うよ」
優子が、ナイスパスなのか、地獄への引き金なのか分からない提案をして、結衣の退路をどんどんと断っていった。
じゃぁ、そうなったら、私と柚月は、タンク班ね。結衣と優子が足回り班って事で良いのね?
「私は、タンク班の方で良いかな」
悠梨? 作業班に合流するの? 外装は?
「取り急ぎの、エッセとノートが終わったから、急ぎの作業班に合流した方が良いと思ったんだけど、もしかして、お呼びじゃない?」
そんな事ないよ! そっちの作業に回ってた1、2年生も来てくれれば、結構作業捗るし。
見ると、悠梨は、結衣に見えないように、私たちに向けてウインクしていた。優子の秘密の作業に参加したことで、悠梨の中でも、何かが変わったのかもしれないかな。
もう、結衣も何も言い返せなくなって、担当は決定したね。
あとは、実際の作業だけど、結衣以外は、もう既に予行演習済みだしね。
どのみち、GTEは、ほとんど整備してないから、ブレーキとかも、この機会にやっちゃおうよと思うんだよね。
もう週末だから、部品調達は来週になっちゃうけどね。
よし、今日のところは解散しようかぁ……。
私と柚月は、週の活動の報告と、必要になった部品の報告などもあって、水野の所へと寄っていった。
「分かった。S14の登録は、早ければ来週内にできるという事だね」
水野に言われて、車庫証明は、何もなければ、月曜に上がる事、自賠責は既に取れたことを報告した。
「と、なると、早ければ火曜日だな。ところで諸君は、火曜日に、どうしても出ないといけない授業はあるのか?」
柚月と私は顔を見合わせて、特にないので、首を横に振った。
私ら、明日から学校に一切来ないとか、ならない限りは、卒業は確定だし、点数も問題ないしね。
すると、水野は思い直したように慌てた様子で言った。
「いや、水曜日にしよう。万全を期してな。水曜日はどうだ?」
私らの返答は同じだったので、水野は言った。
「では、水曜日の午前中で、車検場の予約は取っておこう。水曜日は、桜井君も連れて、3人で朝一で行ってきたまえ」
え? 朝一で検査場に行くの? 予備検場とかは?
「予備検は、1回受けて落ちてから行っても問題ないよ。1回で受かれば、ラッキーだしな。だから、前日は、S14に乗って帰って欲しい。ただし、臨時運行許可の車には、1人しか乗れない決まりなので、あとの2人は、自分の車にて行くように」
水野は言うだけ言うと、あとの報告には一切触れることなく終了となった。
まぁ、水野はああいう人だからね。どうせ、週明けになると、GTEのオーバーホールキットは、いつ来るとか、アームとかの件についても、人知れず、既に手配とかしてるんだろうなぁ……。
「どうせ、水野の事だから~、来週にはどうにかなるでしょ~」
柚月にも、そう言われてしまってるよ。水野さぁ、ホントにそれでいいのかぁ? と、たまに私は思っちゃうんだよね。
結衣みたいな部員もいるんだからさ、もう少しコミュニケーション取ろうよぉ、仮にも教師なんだからさ。
そんな事を思っていると、不意に柚月が言った。
「じゃぁ~、月曜日は、出張所にも~、一緒に行ってきて、仮ナンバー貰ってくるってこと~?」
そうだね。その方が効率的だよね。
それにしても、水曜日は陸運支局に朝一って、結構きつくね?
それに、仮ナンの車って、1人しか乗っちゃいけないのかぁ、すると、最低2台以上で行かないといけないって事だね。
「そうでなくても~、途中で故障するとか~、そういうアクシデントにも備えて、もう1台いた方が安心でしょ~」
そうか、あと、問題は、誰があのS14に前日乗って帰るか……かぁ。
私は柚月の方を見ると、柚月はいきなり構えの姿勢を取ると言った。
「私は、ヤダよぉ~。マイが部長なんだから、マイが行くべきだよぉ~」
あそ、そう言えば柚月さぁ、昨日、私のいう事に逆らったら、その場でパンツ脱ぐって、約束したよねぇ。
私はその場に立ち止まると、柚月に迫った。
「ううぅぅ~」
え? なんか嬉しそうだって? そんな事ないやい! 結衣、おかしくない? 私はこの部に対して、そんな意気込みなんかないからね。
単に、初代部長だっていう称号が魅力的なだけだから。
おおっ! 悠梨班、エッセの外装終わったの? 超イケてるじゃん! これってカッティングシートだけで仕上げたんでしょ?
凄いよ! 元のオレンジもさ、ちょっと冴えない感じの色合いだったけど、この灰色のカッティングだと、互いに主張が均衡してて、嫌らしくないよ。それでいてさ、後ろのドアが、チェッカーフラッグ模様になってて、レースカーって感じだよー! これって、外装だけなら、ウチが優勝じゃね?
よし、S14の整備も終盤か、ミッションオイルの交換もやりたいけど、なんか、水野がペール缶で買ったらしいんだ。
それが届くのが、月曜日らしいから、今日は昨日買ったライトのバルブと、ワイパーのゴム交換だね。
ワイパーのゴム交換は、結構楽勝だよね。
普通は、ワイパーゴム交換くらいの軽作業から入っていくのに、ウチは、ブレーキのオーバーホールの方が先なんて、なんちゅう部だろうね?
じゃぁ、1、2年生のみんな、説明するね。
ワイパーゴム交換の注意点は、失敗すると窓を割っちゃう可能性があるから、必ず厚めの雑巾を用意する事だよ。
まずはアームを立てて、ブレードをアームから引き抜く、ブレードの根元にボタンがあるから、押しながらアームの根元の方に向かって引っ張ると抜けるからね。
そしたら、アームの先端を、雑巾でぐるぐる巻きにして、そっと、ガラスの上に戻しておく、ここで、うっかりして、雑巾を巻かない状態で、アームを立てっ放しとかにしておくと、なんかの拍子に、アームが倒れたらガラスを直撃して割れちゃうからね。フロントガラスが割れると、修理代は余裕で10万円くらいするからね。
そして、ブレードについてるゴムを引き抜くんだけど、ゴムをよーく見ると、引き抜く方向が分かるからね。
そう、ブレードの爪が引っ掛かってるゴムの溝の、長くなってる方向に向かって引き抜くんだよ。そして、逆の要領で取りつけていくんだ。ちなみに、古くなったゴムの中に入ってる鉄芯は、配線を室内に引き込む時なんかにも使えるから、みんなも自分の車を持った時、いくつか持ってた方が良いよ。
よし、これでワイパーゴム交換は終わった。
あとは柚月に任せて、私はS14班から離脱して、GTE班のヘルプに入るよ。
どう? 結衣、優子。
浮きサビは大半削り落としたから問題なしか、アームとかを、どうするかって?
アームに関しては、交換できるものはして、無理なところは、サビ転換剤塗って、処理するしかないね。
私さ、思うんだけど、1回ショック外して、サスの取り付け部分の辺りまで、サビ落としとサビ止め作業やった方が良いと思うんだよね。
あの、サスの取り付けの隙間とかに、なんか隠れてるサビがありそうでさ、ここまできたら、やっちゃった方が良いと思う。
……そして、私は、ある1点をに目が行った。そして、思わず言っちゃったんだけど、その時の声のトーンが、思いの外、低くて、みんな驚いちゃったらしいよ。
「タンク、降ろしちゃおうよ」
「ええっ!?」
結衣が、物凄いトーンで驚いた。
そして、すぐさま、私に喰ってかかってきた。
「何言っちゃってんのよ、マイ、あれって燃料タンクだよ?」
「分かってるよ」
「分かってるって……どんだけ重くて、大変な作業だか分かってるの?」
「ある程度はね」
結衣は、はぁ~っと、重いため息をつくと言った。
「大体、外してどうするのよ!」
結衣さ、ネットで見たけど、R32と、S13系の燃料タンクの直上は、タンクに隠れてサビが進行してるケースが多いらしいよ。その上で、この車は表面サビとは言え、あれだけサビてたんだから、きっと、タンク外したら、同じようにサビてると思うんだよ。
今、ここで、タンク降ろすの億劫がって、それ以外を処理しちゃってさ、半年後にタンクの所が腐って抜けたら、今日までの作業が勿体無くね? 私が言ってるのはそういう事だよ。それにさ、もしタンクの上もサビ酷かったら、タンクも交換しなくちゃ……だしさ。
「ううっ……」
ここまで理論立てて言うと、結衣は何も言えなくなるのは知ってるんだ。だから、理論武装の上で臨んだんだけどね。
「私は、やらないからね!」
結衣ったら、我儘言い始めちゃったよ。だからツンデレは困っちゃうね。
……だったら、アームの交換作業やる? あれはあれで、ネジが外れなくて大変だと思うけど。
「ついでだから、テンションロッドの交換もした方が、良いと思うよ」
優子が、ナイスパスなのか、地獄への引き金なのか分からない提案をして、結衣の退路をどんどんと断っていった。
じゃぁ、そうなったら、私と柚月は、タンク班ね。結衣と優子が足回り班って事で良いのね?
「私は、タンク班の方で良いかな」
悠梨? 作業班に合流するの? 外装は?
「取り急ぎの、エッセとノートが終わったから、急ぎの作業班に合流した方が良いと思ったんだけど、もしかして、お呼びじゃない?」
そんな事ないよ! そっちの作業に回ってた1、2年生も来てくれれば、結構作業捗るし。
見ると、悠梨は、結衣に見えないように、私たちに向けてウインクしていた。優子の秘密の作業に参加したことで、悠梨の中でも、何かが変わったのかもしれないかな。
もう、結衣も何も言い返せなくなって、担当は決定したね。
あとは、実際の作業だけど、結衣以外は、もう既に予行演習済みだしね。
どのみち、GTEは、ほとんど整備してないから、ブレーキとかも、この機会にやっちゃおうよと思うんだよね。
もう週末だから、部品調達は来週になっちゃうけどね。
よし、今日のところは解散しようかぁ……。
私と柚月は、週の活動の報告と、必要になった部品の報告などもあって、水野の所へと寄っていった。
「分かった。S14の登録は、早ければ来週内にできるという事だね」
水野に言われて、車庫証明は、何もなければ、月曜に上がる事、自賠責は既に取れたことを報告した。
「と、なると、早ければ火曜日だな。ところで諸君は、火曜日に、どうしても出ないといけない授業はあるのか?」
柚月と私は顔を見合わせて、特にないので、首を横に振った。
私ら、明日から学校に一切来ないとか、ならない限りは、卒業は確定だし、点数も問題ないしね。
すると、水野は思い直したように慌てた様子で言った。
「いや、水曜日にしよう。万全を期してな。水曜日はどうだ?」
私らの返答は同じだったので、水野は言った。
「では、水曜日の午前中で、車検場の予約は取っておこう。水曜日は、桜井君も連れて、3人で朝一で行ってきたまえ」
え? 朝一で検査場に行くの? 予備検場とかは?
「予備検は、1回受けて落ちてから行っても問題ないよ。1回で受かれば、ラッキーだしな。だから、前日は、S14に乗って帰って欲しい。ただし、臨時運行許可の車には、1人しか乗れない決まりなので、あとの2人は、自分の車にて行くように」
水野は言うだけ言うと、あとの報告には一切触れることなく終了となった。
まぁ、水野はああいう人だからね。どうせ、週明けになると、GTEのオーバーホールキットは、いつ来るとか、アームとかの件についても、人知れず、既に手配とかしてるんだろうなぁ……。
「どうせ、水野の事だから~、来週にはどうにかなるでしょ~」
柚月にも、そう言われてしまってるよ。水野さぁ、ホントにそれでいいのかぁ? と、たまに私は思っちゃうんだよね。
結衣みたいな部員もいるんだからさ、もう少しコミュニケーション取ろうよぉ、仮にも教師なんだからさ。
そんな事を思っていると、不意に柚月が言った。
「じゃぁ~、月曜日は、出張所にも~、一緒に行ってきて、仮ナンバー貰ってくるってこと~?」
そうだね。その方が効率的だよね。
それにしても、水曜日は陸運支局に朝一って、結構きつくね?
それに、仮ナンの車って、1人しか乗っちゃいけないのかぁ、すると、最低2台以上で行かないといけないって事だね。
「そうでなくても~、途中で故障するとか~、そういうアクシデントにも備えて、もう1台いた方が安心でしょ~」
そうか、あと、問題は、誰があのS14に前日乗って帰るか……かぁ。
私は柚月の方を見ると、柚月はいきなり構えの姿勢を取ると言った。
「私は、ヤダよぉ~。マイが部長なんだから、マイが行くべきだよぉ~」
あそ、そう言えば柚月さぁ、昨日、私のいう事に逆らったら、その場でパンツ脱ぐって、約束したよねぇ。
私はその場に立ち止まると、柚月に迫った。
「ううぅぅ~」
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