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夏は休み
燈梨と焼きとうもろこし
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■まえがき
今回の話で登場する、鷹宮燈梨は、他サイトで連載していた小説のヒロインです。
今後、登場するようになりますが、この後で触れられる経緯だけでも楽しめるようにしてあります。
──────────────────────────────────────────────────
私は、顔を上げて声のした方を見た。
そこには、髪の長さは肩より少し長めで黒っぽい茶髪で、顔立ちのすらっとした、美人系の顔立ちの女子がいた。
私は、この娘に見覚えがあった。
確か、以前にそこの教習所を見に行った時に、出会ったオリオリさんが連れていた娘だった。
私は、思わず
「あ、オリオリさんと一緒にいた……」
と、口に出すと、その娘は、一瞬驚いたような表情で、私と柚月を見た後
「沙織さんと、知り合いなの?」
と、訊いてきた。
私は、そこで気がついたんだ。オリオリさんは、沙織さんだから、オリオリなんだって事に。
そこで、この間、教習所で会って、サインを貰った事と、翌日、この近くの別荘で再会したことなんかを話したんだ。
そして、本題に戻って
「それで、私らに聞きたい事っていうのは?」
と訊ねると、彼女は、パンフを持って訊いてきた。
「この学校の人ですよね?」
うん、そうだよ。私ら3年生。
え? 車に乗ってるから、分かるって? そんな事ないよ、私は3年だけど、ここにいる柚月は、学校サボりの上で、赤点取りまくったから、まだ2年生だよ。
痛っ!
「マイ~、ウソつくなよ~!」
うるさいやい! 柚月なんか、身体ばかりデカくなって、精神年齢は、小学校低学年じゃないかー。1~2年遅れくらいの方が、バランスが取れるんだよ!
「あのっ!」
あ、ゴメンなさい。
それで、私らは、そこの生徒だよ。自動車部の部長と副部長。
「去年、同じ学年で、北海道から転校してきた女子に、心当たりありませんか?」
彼女は、真剣な表情で訊いてきた。
確か、去年って、4~5人、転校生いたよね。
私らの高校は、転校してくる生徒が結構多いのだ。理由は、越境通学を認めているため、通学困難を理由に、バイク通学をしたくて転校してくるのだ。
ただ、私のクラスには男子しか来なかったために、彼女の言う生徒には心当たりが無かった。
こうなると頼りは情報通の柚月だな。どう?
「確か~、優子の友達の中に、去年、北海道から転校してきた子がいたハズだよ~。お父さんの単身赴任について来たって子」
すると、それを訊いた彼女の表情は、ぱぁっと、明るくなり
「その娘です。名前は……」
と言いかかったのを、柚月は制して
「名前は、知らないんだよね~。直接の知り合いじゃないから~」
と言った。
でも、優子の友達なら、そんなに遠い間柄でもないから、私らに訊いたのは、間違いじゃなかったね。
「ところで~、あなた、誰~? 私らから情報を引き出すだけで~、その目的も言わないしさ~」
柚月が、鋭い目で彼女を見ると、彼女に顔をピッタリと近づけて言った。
人当たりの良い柚月が、ここまで他人に不信感をあらわにするのは、珍しいことだ。
それだけ、彼女からは、ただならぬオーラのようなものが出ている。確かに一方的に訊かれている事に答えていただけなので気がつかなかったが、彼女は誰なんだろう? そして、どうやってここまで来たのだろう?
柚月に詰め寄られた彼女は、若干狼狽したような表情を見せたが、意を決したように
「私の名前は鷹宮燈梨、18歳です。さっき訊いたのは、昔のクラスメイトで……その、会って謝りたいと……」
と、話し始めたが、そこで言葉に詰まってしまった。
私は、柚月と顔を見合わせた。この燈梨という娘を見ていて、ハッキリ分かるのは、この娘、訳ありだという事だ。
私は思った。こういう雰囲気の娘には、関わらないのが一番だ。しかし、話を訊いた段階で、私らは片足を突っ込んでしまっている。
しかも、彼女の目的の娘は、私らの同級生で、優子の友達だ。引き合わせるには、私らが一番適切だろう。
更に言えば、ひょんなことから、オリオリさんとも関わりを持ってしまったので、この燈梨という娘にも無関係とはいえない間柄だ。見捨てて行く訳にはいかないだろう。
私は柚月を見ると、柚月は頷いて、燈梨の肩を抱くと
「それじゃ~、お巡りさんたちが話を訊くから~、パトカーに乗って貰おうか~」
と言うと、助手席を開けて、私の車の後席に、燈梨を半ば無理矢理、乗せてしまった。
そして、私に
「マイ~、お茶かなんか買って来て~。ついでに、このパンフを売店のおばさんに渡してきて~」
と、しれっと頼んできた。
柚月ー! あんたね、言うに事欠いて、私をパシリに使う気?
「別に~、私はどっちでも良いよ~。でも、マイは、こういう訳ありの娘の相手、得意じゃないでしょ~」
確かにそうだ。
柚月が誰に対しても、オープンに接して、友人が多いのに対して、私のそれは一般的だ。
しかし、彼女は私に最初に声を掛けてきた、そして、以前に教習所で彼女を見かけた時、私は惹かれるものを感じたのも事実だ。
なので、渋る柚月をお遣いに行かせて、私はR32の運転席へと座った。
燈梨は、やっぱり美人系だ。
まだ可愛らしい感じが残っているが、あと数年もすると、美人へと完全に姿を変えるのではなかろうかと思う。
見ている私がコンプレックスを感じてしまうほどだ。今まで私の周りに、こういう娘、いなかったんだよね。だから、凄く感じてしまうオーラのような、そういうものに、私は惹かれてるんだと思う。
「あのっ!」
あっと、思わず見惚れて言葉を忘れちゃったよ。
ゴメンね。私は、沢渡舞華、もう1人は三坂柚月、2人共、3年生なんだ。
ところで、燈梨は、今日は北海道から来たの?
「え……いえ……」
なんか、歯切れが悪いよね、この娘。
夏休みに北海道から、転校した級友に会いに来たって訳じゃなさそうだよね。なんか、謝りたいって言ってたし。
大体、引っ越し先の住所も知らないし、ウチの学校にいるって情報も、どうも伝聞っぽいし、何を隠してるんだろ?
私は、意を決した。
まぁ、もし失敗したら、柚月にフォローして貰えば良いし、私があの時、思ったじゃん『お近づきになりたい』ってさ、だから、私のやり方でお近づきにならないと。
あのさ、燈梨。
「えっ!?」
なにがあったのか、話してくれないかな?
私も柚月も、関わった以上は、燈梨に喜んでもらいたいし、折角、こんな田舎くんだりまで来たんだから、楽しい思い出になって欲しいって思ってる。
だけど、さっきから燈梨を見ていて、ちっとも、楽しそうに見えないんだよね。一応、その燈梨が探してる娘の友達って、私と柚月の幼馴染で、仲の良い友達だからさ、そのつもりもなく連れて来て、燈梨と、その娘が仲違いするのを見せられても、後味が悪いだけなんだよね。
助手席側の後席に座る燈梨を見ると、下を向いて、膝の上に置いた手をじっと見つめているので、私は燈梨の手をぎゅっと握ると、燈梨を真っ直ぐ見た。
突然の私の動きに、驚いて逃げようとするが、2ドアの後席では、逃げ場が少なく、すぐに追い詰められてしまった。
私は改めて燈梨の手を捕まえて握ると、彼女の目を真っ直ぐ見て言った。
話してよ。じゃないと、帰さないよ!
燈梨は、意を決したようにこちらを見て、口を開いた瞬間、助手席のドアが開くと、柚月が入ってきて言った。
「お待たせ~! 焼きとうもろこし買ってきたよ~」
私は、今日、今、この瞬間ほど、柚月に殺意が芽生えた事はなかった。
今回の話で登場する、鷹宮燈梨は、他サイトで連載していた小説のヒロインです。
今後、登場するようになりますが、この後で触れられる経緯だけでも楽しめるようにしてあります。
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私は、顔を上げて声のした方を見た。
そこには、髪の長さは肩より少し長めで黒っぽい茶髪で、顔立ちのすらっとした、美人系の顔立ちの女子がいた。
私は、この娘に見覚えがあった。
確か、以前にそこの教習所を見に行った時に、出会ったオリオリさんが連れていた娘だった。
私は、思わず
「あ、オリオリさんと一緒にいた……」
と、口に出すと、その娘は、一瞬驚いたような表情で、私と柚月を見た後
「沙織さんと、知り合いなの?」
と、訊いてきた。
私は、そこで気がついたんだ。オリオリさんは、沙織さんだから、オリオリなんだって事に。
そこで、この間、教習所で会って、サインを貰った事と、翌日、この近くの別荘で再会したことなんかを話したんだ。
そして、本題に戻って
「それで、私らに聞きたい事っていうのは?」
と訊ねると、彼女は、パンフを持って訊いてきた。
「この学校の人ですよね?」
うん、そうだよ。私ら3年生。
え? 車に乗ってるから、分かるって? そんな事ないよ、私は3年だけど、ここにいる柚月は、学校サボりの上で、赤点取りまくったから、まだ2年生だよ。
痛っ!
「マイ~、ウソつくなよ~!」
うるさいやい! 柚月なんか、身体ばかりデカくなって、精神年齢は、小学校低学年じゃないかー。1~2年遅れくらいの方が、バランスが取れるんだよ!
「あのっ!」
あ、ゴメンなさい。
それで、私らは、そこの生徒だよ。自動車部の部長と副部長。
「去年、同じ学年で、北海道から転校してきた女子に、心当たりありませんか?」
彼女は、真剣な表情で訊いてきた。
確か、去年って、4~5人、転校生いたよね。
私らの高校は、転校してくる生徒が結構多いのだ。理由は、越境通学を認めているため、通学困難を理由に、バイク通学をしたくて転校してくるのだ。
ただ、私のクラスには男子しか来なかったために、彼女の言う生徒には心当たりが無かった。
こうなると頼りは情報通の柚月だな。どう?
「確か~、優子の友達の中に、去年、北海道から転校してきた子がいたハズだよ~。お父さんの単身赴任について来たって子」
すると、それを訊いた彼女の表情は、ぱぁっと、明るくなり
「その娘です。名前は……」
と言いかかったのを、柚月は制して
「名前は、知らないんだよね~。直接の知り合いじゃないから~」
と言った。
でも、優子の友達なら、そんなに遠い間柄でもないから、私らに訊いたのは、間違いじゃなかったね。
「ところで~、あなた、誰~? 私らから情報を引き出すだけで~、その目的も言わないしさ~」
柚月が、鋭い目で彼女を見ると、彼女に顔をピッタリと近づけて言った。
人当たりの良い柚月が、ここまで他人に不信感をあらわにするのは、珍しいことだ。
それだけ、彼女からは、ただならぬオーラのようなものが出ている。確かに一方的に訊かれている事に答えていただけなので気がつかなかったが、彼女は誰なんだろう? そして、どうやってここまで来たのだろう?
柚月に詰め寄られた彼女は、若干狼狽したような表情を見せたが、意を決したように
「私の名前は鷹宮燈梨、18歳です。さっき訊いたのは、昔のクラスメイトで……その、会って謝りたいと……」
と、話し始めたが、そこで言葉に詰まってしまった。
私は、柚月と顔を見合わせた。この燈梨という娘を見ていて、ハッキリ分かるのは、この娘、訳ありだという事だ。
私は思った。こういう雰囲気の娘には、関わらないのが一番だ。しかし、話を訊いた段階で、私らは片足を突っ込んでしまっている。
しかも、彼女の目的の娘は、私らの同級生で、優子の友達だ。引き合わせるには、私らが一番適切だろう。
更に言えば、ひょんなことから、オリオリさんとも関わりを持ってしまったので、この燈梨という娘にも無関係とはいえない間柄だ。見捨てて行く訳にはいかないだろう。
私は柚月を見ると、柚月は頷いて、燈梨の肩を抱くと
「それじゃ~、お巡りさんたちが話を訊くから~、パトカーに乗って貰おうか~」
と言うと、助手席を開けて、私の車の後席に、燈梨を半ば無理矢理、乗せてしまった。
そして、私に
「マイ~、お茶かなんか買って来て~。ついでに、このパンフを売店のおばさんに渡してきて~」
と、しれっと頼んできた。
柚月ー! あんたね、言うに事欠いて、私をパシリに使う気?
「別に~、私はどっちでも良いよ~。でも、マイは、こういう訳ありの娘の相手、得意じゃないでしょ~」
確かにそうだ。
柚月が誰に対しても、オープンに接して、友人が多いのに対して、私のそれは一般的だ。
しかし、彼女は私に最初に声を掛けてきた、そして、以前に教習所で彼女を見かけた時、私は惹かれるものを感じたのも事実だ。
なので、渋る柚月をお遣いに行かせて、私はR32の運転席へと座った。
燈梨は、やっぱり美人系だ。
まだ可愛らしい感じが残っているが、あと数年もすると、美人へと完全に姿を変えるのではなかろうかと思う。
見ている私がコンプレックスを感じてしまうほどだ。今まで私の周りに、こういう娘、いなかったんだよね。だから、凄く感じてしまうオーラのような、そういうものに、私は惹かれてるんだと思う。
「あのっ!」
あっと、思わず見惚れて言葉を忘れちゃったよ。
ゴメンね。私は、沢渡舞華、もう1人は三坂柚月、2人共、3年生なんだ。
ところで、燈梨は、今日は北海道から来たの?
「え……いえ……」
なんか、歯切れが悪いよね、この娘。
夏休みに北海道から、転校した級友に会いに来たって訳じゃなさそうだよね。なんか、謝りたいって言ってたし。
大体、引っ越し先の住所も知らないし、ウチの学校にいるって情報も、どうも伝聞っぽいし、何を隠してるんだろ?
私は、意を決した。
まぁ、もし失敗したら、柚月にフォローして貰えば良いし、私があの時、思ったじゃん『お近づきになりたい』ってさ、だから、私のやり方でお近づきにならないと。
あのさ、燈梨。
「えっ!?」
なにがあったのか、話してくれないかな?
私も柚月も、関わった以上は、燈梨に喜んでもらいたいし、折角、こんな田舎くんだりまで来たんだから、楽しい思い出になって欲しいって思ってる。
だけど、さっきから燈梨を見ていて、ちっとも、楽しそうに見えないんだよね。一応、その燈梨が探してる娘の友達って、私と柚月の幼馴染で、仲の良い友達だからさ、そのつもりもなく連れて来て、燈梨と、その娘が仲違いするのを見せられても、後味が悪いだけなんだよね。
助手席側の後席に座る燈梨を見ると、下を向いて、膝の上に置いた手をじっと見つめているので、私は燈梨の手をぎゅっと握ると、燈梨を真っ直ぐ見た。
突然の私の動きに、驚いて逃げようとするが、2ドアの後席では、逃げ場が少なく、すぐに追い詰められてしまった。
私は改めて燈梨の手を捕まえて握ると、彼女の目を真っ直ぐ見て言った。
話してよ。じゃないと、帰さないよ!
燈梨は、意を決したようにこちらを見て、口を開いた瞬間、助手席のドアが開くと、柚月が入ってきて言った。
「お待たせ~! 焼きとうもろこし買ってきたよ~」
私は、今日、今、この瞬間ほど、柚月に殺意が芽生えた事はなかった。
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