232 / 296
秋は変化……
私と相棒
しおりを挟む
朋美さんが、運転席にいる間に、マフラーの辺りに見入っていた唯花さんが
「この車って、結構手が入ってるけど、舞華ちゃんがやったの?」
と訊いてきたので
「いえ、これは兄貴が置いていった車なんです。親が、買うよりお金かからないから、コレ使えって……」
と答えると、唯花さんは、私の肩を抱くと言った。
「いいじゃん、いいいじゃん。貰えるものは貰っておけば! 私だって、最初は母さんのムーヴ貰って乗ってたよ。トモが横転させたけど」
「ええっ!?」
私が驚くと、唯花さんは更にケロッとして言った。
「しかもコイツ、人の車借りて、サイドターンの練習してこかしたからね。マジ信じらんないから」
「マジか?」
後ろにいた悠梨まで驚いていた。
「母さんは今でも『朋美ちゃんに車貸しちゃダメだからね』って、出かける前には必ず念押すくらいだからね」
「今、その話しなくてもいいじゃん!」
「いーや、ダメだね! 今日だって出がけに言われたんだからさ。トモはとんでもないことして、ウチの家庭をメチャクチャにしたんだからさ」
と、私らは初めて聞くが、当人たちには懐かしい話で、朋美さんをいじっていた。
次に柚月の車を見た。
「珍しいね。2ドアのGTS-4なんて」
と美咲さんが言って、みんな頷いていた。
「兄貴に探して貰ったら、1台だけあったんで、なんとか手に入ったんです」
と私が説明すると、フー子さんが
「情けない奴だなー、自分で探せないで、友達に泣き入れるなんてー」
と、柚月に嫌味を言い、次の瞬間
「フー子、人様の事にチャチャ入れるんじゃないの!!」
と、美咲さんに言われると同時に頭を叩かれて、唯花さんからお尻に蹴りを入れられていた。
「痛いなぁー、頭とお尻が割れたらどうするんだよー!」
「尻はそもそも割れてるぞ、風子のバカ!」
「アンタの脳天なんて、1回、割れちゃえばいいのよ! そしたら腐った脳みそ取り出して、イアンに売ってるベストバリューのお味噌と入れ替えてあげるから」
見事なまでに、唯花さんと美咲さんにツッコまれていた。
それを見ていて思ったんだけど、フー子さんと柚月は妙に感じが似てるんだよなぁ……、その失言大王なところとかね。
「しかし、珍しい色だね」
朋美さんが言った。
この色って、前期にしか存在してない色なんですよね。
その名も『グレー』だって、でも、ちょっとイメージ的に思い浮かぶグレーとは違うかな。
「青が混ざってるのが良いよね」
確かに。
グレーっていうと、どうにも真っ暗な感じになっちゃうんだけど、この青が良いアクセントになって、彩を加えてるんだよね、見た感じに。
でも、人気が無かったから消えちゃったんだろうね。
「2人共、前期なのなー」
そうですね……でも、ノンターボ勢は後期ですよ。
「『勢』って事は、1台じゃないんだ」
朋美さんが言った。
そうなんですよ、優子のが2000ccで結衣のが2500ccなんですよ。
「え? 私は、2000ccだお?」
「アンタの事じゃないよ、結衣ちゃんの事だよ。唯花と違って余計な『か』が入ってない、混じりっけない結衣ちゃんの事!」
「なんだよ、余計な『か』って~!」
唯花さんがボケて、朋美さんにツッコまれていた。
ホントにこのグループは、どこにいても誰かがボケて、掛け合いが多いな。
優子のGTSのところに来ると、唯花さんが騒ぎ始めた。
やっぱり分かる人には分かるマニアックさなんだよね。
「渋いね。R32と言うとターボみたいになってるのに、NAチューンってところがアナクロいよぉ」
「そうなんです。伯父さんの形見で、どうしても乗りたくて、マイと、ユズに手伝って貰って、解体屋にあったエンジンと載せ替えたんです」
「へぇ~、凄いね。幼馴染のために、エンジン載せ替え手伝ってくれてさ」
唯花さんと優子が話していて、後ろで朋美さんと美咲さんも、うんうん頷いてるよ。
そんなこと無いんですよぉ。なぁ、柚月……って、いない。もう1人の幼馴染はどうしたんだ?
「や~め~ろ~!」
あれ? あんな所でフー子さんと、プロレスごっこしてるよ。
楽しそうだから放っておこう。
こっちの4ドアは、結衣のGTS25で、つい最近入れ替えたばっかりなんですよ。
「入れ替えって?」
あ、美咲さん。実は、最初は2ドアの黒に乗ってたんですけど、夏の終わりに結衣が無茶して、木に激突して廃車にしちゃったんですよ。
それで、解体屋さんにあったATのGTS25に移植したのがこの車ってわけです。
ミッションと、タコ足とマフラーと、足回りかな……あ、オートスポイラーも移植したんだ。
「オートスポイラーって、70キロ以上になると自動で出てくるやつでしょ?」
あ、結衣が今、手動で出しましたよ。
美咲さんも、初めてだったらしくて、凄く珍しそうに眺めたり、触ったりしてたよ。
「2500ccも、そうそう見かけなくなってきたよな~」
「もう、最近はGT-RかGTS-tかで2極化してるよね」
唯花さんと朋美さんが話していたが、確かにそうなんだよね。
博物館でも話したけどさ、R30なんかも、もう既に当時の比率と逆転して
、最も少なかったRSの現存数が最も多くなっちゃってるしね。
「でも、凄くね。今ここって、RB26以外のR32のほぼ全エンジンが揃ってね?」
唯花さん、そうなんですよ。
CA18iからRB20E、DE、DETとRB25DEまであるんですよね。
これって、今の世の中じゃ、かなり珍しい事だって言われたことがありますよ。でもって、この辺は田舎だから、CA18は別として、まだ解体に回ってきてるんですけどね。
今度は、悠梨のR33だよ。
ウチらで、唯一のR33だからね、ちょっと稀少だよね。
あれ? オリオリさんが、妙に前にグイグイ出てくるね。
なんか、今まで後ろでみんなを見守ってたのに、意外だな。
「オリオリはね、お兄さんがR33のGT-Rに乗ってるんだか、乗ってただかなんだよ。だから、思い入れが強いみたいだよ」
唯花さんが言った。
そうなんだ、ちょっと訊いてみよう。
私は、悠梨のR33の運転席に座るオリオリさんを捕まえてみた。
「そうなのよ、兄貴が乗ってるんだ。R33のGT-R。さすがに、立場上、仕事の時や接待の時は、使わないけどね」
そうなんだ、まぁ、前に会った時の印象で車好きそうなのは分かってたけど、まさか、今でもR33のGT-Rに乗ってるとは。
「あれ? 舞華ちゃんは、兄貴に会った事、あるの?」
ええ。ウチの部に、向こうの教習所から打診があって、月一で1、2年生を対象に体験教習をやってるんです。
その打ち合わせに行った時に、1度だけお会いしたことがあります。
「あぁ、そう言えば兄貴が、隣の県の高校にある自動車部の生徒を呼んで、体験やって貰って助かってるって言ってたな。ちなみに兄貴、サボる時は大抵、あそこに詰めてるから」
オリオリさんは、色々とお兄さんの話してたよ。
アーケードゲーム機も好きで、会社で持ってる廃旅館に、趣味で集めたアーケードゲーム機を置いて、遊べるようになってるとか、前は180SXに乗ってたとか。
オリオリさんはお兄さんが好きなんだね。私は兄貴は嫌いだけどさ。
ちなみに、悠梨の家の近くのスーパーから、懐かしいレースゲーム買っていったのも、オリオリさんのお兄さんなんだって。
「兄貴が言ってたよ。あのゲーム、片手の数くらいしか残ってないお宝だから、思わず震えちゃって、言い値で買っちゃったって」
凄いなぁ、オリオリさんのお兄さんも、ウチの兄貴と同じ匂いがするね。
「同じじゃない? 兄貴もクルマバカだし、速くて上手い人間の情報に関しては、アンテナ張ってるから、舞華ちゃんのお兄さんの事なんて、知ってると思うよ」
オリオリさんは、懐かしそうにR33をあちこち眺めたり、触ったりしていたけど
「このダサいシートだけは、兄貴のとは違ったけど、基本的な味は変わらないから懐かしかった」
と、言っていた。
最近は、お兄さんは仕事が忙しくて、休みなしみたいな状態なので、会っても、お兄さんの仕事の合間とかになるらしい。
最後に、みんなと連絡先の交換をしたよ。
美咲さんが
「今度、オリオリの別荘で、鍋パーティやるから、みんなも来てよ!」
と、早速誘ってくれた。
片付けをしながら、鍋パーティ、楽しみだね、とみんなで話していたけど、何故、その話の最中、燈梨が蒼い顔をしていたのかは、その時は分からなかった。
「この車って、結構手が入ってるけど、舞華ちゃんがやったの?」
と訊いてきたので
「いえ、これは兄貴が置いていった車なんです。親が、買うよりお金かからないから、コレ使えって……」
と答えると、唯花さんは、私の肩を抱くと言った。
「いいじゃん、いいいじゃん。貰えるものは貰っておけば! 私だって、最初は母さんのムーヴ貰って乗ってたよ。トモが横転させたけど」
「ええっ!?」
私が驚くと、唯花さんは更にケロッとして言った。
「しかもコイツ、人の車借りて、サイドターンの練習してこかしたからね。マジ信じらんないから」
「マジか?」
後ろにいた悠梨まで驚いていた。
「母さんは今でも『朋美ちゃんに車貸しちゃダメだからね』って、出かける前には必ず念押すくらいだからね」
「今、その話しなくてもいいじゃん!」
「いーや、ダメだね! 今日だって出がけに言われたんだからさ。トモはとんでもないことして、ウチの家庭をメチャクチャにしたんだからさ」
と、私らは初めて聞くが、当人たちには懐かしい話で、朋美さんをいじっていた。
次に柚月の車を見た。
「珍しいね。2ドアのGTS-4なんて」
と美咲さんが言って、みんな頷いていた。
「兄貴に探して貰ったら、1台だけあったんで、なんとか手に入ったんです」
と私が説明すると、フー子さんが
「情けない奴だなー、自分で探せないで、友達に泣き入れるなんてー」
と、柚月に嫌味を言い、次の瞬間
「フー子、人様の事にチャチャ入れるんじゃないの!!」
と、美咲さんに言われると同時に頭を叩かれて、唯花さんからお尻に蹴りを入れられていた。
「痛いなぁー、頭とお尻が割れたらどうするんだよー!」
「尻はそもそも割れてるぞ、風子のバカ!」
「アンタの脳天なんて、1回、割れちゃえばいいのよ! そしたら腐った脳みそ取り出して、イアンに売ってるベストバリューのお味噌と入れ替えてあげるから」
見事なまでに、唯花さんと美咲さんにツッコまれていた。
それを見ていて思ったんだけど、フー子さんと柚月は妙に感じが似てるんだよなぁ……、その失言大王なところとかね。
「しかし、珍しい色だね」
朋美さんが言った。
この色って、前期にしか存在してない色なんですよね。
その名も『グレー』だって、でも、ちょっとイメージ的に思い浮かぶグレーとは違うかな。
「青が混ざってるのが良いよね」
確かに。
グレーっていうと、どうにも真っ暗な感じになっちゃうんだけど、この青が良いアクセントになって、彩を加えてるんだよね、見た感じに。
でも、人気が無かったから消えちゃったんだろうね。
「2人共、前期なのなー」
そうですね……でも、ノンターボ勢は後期ですよ。
「『勢』って事は、1台じゃないんだ」
朋美さんが言った。
そうなんですよ、優子のが2000ccで結衣のが2500ccなんですよ。
「え? 私は、2000ccだお?」
「アンタの事じゃないよ、結衣ちゃんの事だよ。唯花と違って余計な『か』が入ってない、混じりっけない結衣ちゃんの事!」
「なんだよ、余計な『か』って~!」
唯花さんがボケて、朋美さんにツッコまれていた。
ホントにこのグループは、どこにいても誰かがボケて、掛け合いが多いな。
優子のGTSのところに来ると、唯花さんが騒ぎ始めた。
やっぱり分かる人には分かるマニアックさなんだよね。
「渋いね。R32と言うとターボみたいになってるのに、NAチューンってところがアナクロいよぉ」
「そうなんです。伯父さんの形見で、どうしても乗りたくて、マイと、ユズに手伝って貰って、解体屋にあったエンジンと載せ替えたんです」
「へぇ~、凄いね。幼馴染のために、エンジン載せ替え手伝ってくれてさ」
唯花さんと優子が話していて、後ろで朋美さんと美咲さんも、うんうん頷いてるよ。
そんなこと無いんですよぉ。なぁ、柚月……って、いない。もう1人の幼馴染はどうしたんだ?
「や~め~ろ~!」
あれ? あんな所でフー子さんと、プロレスごっこしてるよ。
楽しそうだから放っておこう。
こっちの4ドアは、結衣のGTS25で、つい最近入れ替えたばっかりなんですよ。
「入れ替えって?」
あ、美咲さん。実は、最初は2ドアの黒に乗ってたんですけど、夏の終わりに結衣が無茶して、木に激突して廃車にしちゃったんですよ。
それで、解体屋さんにあったATのGTS25に移植したのがこの車ってわけです。
ミッションと、タコ足とマフラーと、足回りかな……あ、オートスポイラーも移植したんだ。
「オートスポイラーって、70キロ以上になると自動で出てくるやつでしょ?」
あ、結衣が今、手動で出しましたよ。
美咲さんも、初めてだったらしくて、凄く珍しそうに眺めたり、触ったりしてたよ。
「2500ccも、そうそう見かけなくなってきたよな~」
「もう、最近はGT-RかGTS-tかで2極化してるよね」
唯花さんと朋美さんが話していたが、確かにそうなんだよね。
博物館でも話したけどさ、R30なんかも、もう既に当時の比率と逆転して
、最も少なかったRSの現存数が最も多くなっちゃってるしね。
「でも、凄くね。今ここって、RB26以外のR32のほぼ全エンジンが揃ってね?」
唯花さん、そうなんですよ。
CA18iからRB20E、DE、DETとRB25DEまであるんですよね。
これって、今の世の中じゃ、かなり珍しい事だって言われたことがありますよ。でもって、この辺は田舎だから、CA18は別として、まだ解体に回ってきてるんですけどね。
今度は、悠梨のR33だよ。
ウチらで、唯一のR33だからね、ちょっと稀少だよね。
あれ? オリオリさんが、妙に前にグイグイ出てくるね。
なんか、今まで後ろでみんなを見守ってたのに、意外だな。
「オリオリはね、お兄さんがR33のGT-Rに乗ってるんだか、乗ってただかなんだよ。だから、思い入れが強いみたいだよ」
唯花さんが言った。
そうなんだ、ちょっと訊いてみよう。
私は、悠梨のR33の運転席に座るオリオリさんを捕まえてみた。
「そうなのよ、兄貴が乗ってるんだ。R33のGT-R。さすがに、立場上、仕事の時や接待の時は、使わないけどね」
そうなんだ、まぁ、前に会った時の印象で車好きそうなのは分かってたけど、まさか、今でもR33のGT-Rに乗ってるとは。
「あれ? 舞華ちゃんは、兄貴に会った事、あるの?」
ええ。ウチの部に、向こうの教習所から打診があって、月一で1、2年生を対象に体験教習をやってるんです。
その打ち合わせに行った時に、1度だけお会いしたことがあります。
「あぁ、そう言えば兄貴が、隣の県の高校にある自動車部の生徒を呼んで、体験やって貰って助かってるって言ってたな。ちなみに兄貴、サボる時は大抵、あそこに詰めてるから」
オリオリさんは、色々とお兄さんの話してたよ。
アーケードゲーム機も好きで、会社で持ってる廃旅館に、趣味で集めたアーケードゲーム機を置いて、遊べるようになってるとか、前は180SXに乗ってたとか。
オリオリさんはお兄さんが好きなんだね。私は兄貴は嫌いだけどさ。
ちなみに、悠梨の家の近くのスーパーから、懐かしいレースゲーム買っていったのも、オリオリさんのお兄さんなんだって。
「兄貴が言ってたよ。あのゲーム、片手の数くらいしか残ってないお宝だから、思わず震えちゃって、言い値で買っちゃったって」
凄いなぁ、オリオリさんのお兄さんも、ウチの兄貴と同じ匂いがするね。
「同じじゃない? 兄貴もクルマバカだし、速くて上手い人間の情報に関しては、アンテナ張ってるから、舞華ちゃんのお兄さんの事なんて、知ってると思うよ」
オリオリさんは、懐かしそうにR33をあちこち眺めたり、触ったりしていたけど
「このダサいシートだけは、兄貴のとは違ったけど、基本的な味は変わらないから懐かしかった」
と、言っていた。
最近は、お兄さんは仕事が忙しくて、休みなしみたいな状態なので、会っても、お兄さんの仕事の合間とかになるらしい。
最後に、みんなと連絡先の交換をしたよ。
美咲さんが
「今度、オリオリの別荘で、鍋パーティやるから、みんなも来てよ!」
と、早速誘ってくれた。
片付けをしながら、鍋パーティ、楽しみだね、とみんなで話していたけど、何故、その話の最中、燈梨が蒼い顔をしていたのかは、その時は分からなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる