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冬は総括
クイック感と読書感想文
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シート騒動もようやく片付いたね。
え? 言い出しっぺの結衣の作業はどうなったのかって?
何も言ってこないから、着々と作業は進んでるんじゃね? 結衣って、妙に秘密主義だからさ、こっちから訊かないと教えてくれなかったり、訊いても『秘密~』とか言って、教えてくれなかったりするんだよね。 マジ感じ悪いんだもん。
大体、洗濯や組み立ての工程もバッチリ見学してるんだから、自分で何とかしてくるつもりなんでしょ?
そもそも、リアを含めて本革シートに1人で交換してきたからね、結衣は。それを考えると、運転席だけのシート交換なんて余裕でしょ。
何か言ってくるまでは、基本スルーしておくのが、結衣と上手く付き合うコツなんだよ。
そんなある日、優子から車を来週まで交換して欲しいって言われて、今、交換してるんだ。
優子曰く、雪が降る前にどうしても1度、ターボ車の走りを味わってみたい、とかなんとか言うので、交換したんだよ。
スピード狂どもはすぐに『ターボじゃないとパワー不足で~』とか、『ノンターボは遅くて~』とか言うんだけどさ、別に決して遅い訳じゃないんだよね。
だって2000ccだよ、コレが遅いんだったら、これ以下の車はなんなの? 止まってるとでも言うのかな?
そんなこと言う奴らは、兄貴が前に乗ってたポルテにでも乗ってればいいんだよ。
兄貴曰く、あの車は『アクセルペダルの下に、コーヒーの空き缶入れて走ってるような遅さ』らしいよ。
兄貴って、一時、サーキット走行会荒らしって言って、近所の工場で営業車として使ってたアルトやミラの一番下のグレードを貰って乗ってた事があるけど、それよりも遅いって事みたいだよね、ポルテは。
そうそう、それで、優子のGTSはね、前に乗った時にも感じたけど、やっぱり私のタイプMとは、使ってる回転域を変えてやると、凄く楽しいんだよね。
タイプMはそこそこ飛ばすのであっても、4000回転あれば事足りるし、音の感じも5000回転辺りまでが一番揃ってるんだけど、このGTSはそこから上の域が一番楽しいんだよ。
5500回転を超えて7000回転くらいまで続く、ビートの効いた音がさ、スピードはそこそこでも、凄く“走ってる”って感じがしてさ。
柚月や優子は、音楽やってなかったから、興味持ってくれないんだけどさ、このビートの効いたビリビリした感じが、一番のエクスタシーなんだよ。
ターボのタイプMに、それが無いとは言わないよ。少なくとも同じ2000ccのターボであるシルビアよりはあるよ。でも、正直、ここまで突き抜けるような感じは無いんだよねぇ……やっぱり、この音とスピードのリニア感が、この車の魅力だよね。
ターボだとどうしても音とスピードに、リニア感が無くて、音が乗る前に、スピードが出すぎちゃってさ、どうにもその前にアクセルを抜かざるを得なくなっちゃうんだよ。
そうやって走らせてて、もう1つ気付いた事は、優子のGTSって、ギアチェンジの時にも、なんか分からないけど、凄く良い感じなんだよね。
こう、なんて言うんだろ“ゴクッ、ゴクッ”って感じに、ガチッとギアが入るっていうのかな? そんな感じで、節度感っていうのが正しいのかな? そういうのが結構あるんだよね。
「クイックシフターじゃないかな~?」
学校帰りにマックに寄ってその話をしたところ、柚月が言ったんだ。
なんか、優子先生は、最近学校が終わると、私の車に乗って山越えをしているのか、家のある方と正反対の方へと消えていっちゃってるから、今日は正解が分からないんだけどさ。
なんだい、その、くいっくしふたーってのは?
直訳するに、シフト操作を素早くするための装置みたいな意味かい?
「広義的には、それで良いかな~」
なんだよ柚月、柚月のくせに『広義的』なんて知的な言葉を使って、煙に巻こうってつもりか?
柚月は、小学4年生の夏休みの読書感想文で、インテリを気取って、大人の本を読んできてやるって言って、官能小説読んだ感想文書いてきて、柚月だけ、読書感想文の文集に掲載されなかったことがあるくせにさ。
「それは、どうでもいいだろ~!」
いやいや、良くないよ。
柚月という人間の真の姿を、世間にしっかり示しておかないと、こうやって、付け焼き刃のインテリっぽい言動に騙される人が出てくるかもしれないだろ?
「それで~、クイックシフトっていうのは~」
柚月、誤魔化そうとしてるね?
しかも、さっきはクイックシフターって言ってたのに、今度はクイックシフトって、呼称まで変わってるよ。
「いいの~! 呼び方は違っても同じ物なの~!」
まぁいいや、それで、そいつの説明とやらを聞こうじゃないか。
柚月の話によると、ギアチェンジをする際に、ゲート間の距離を物理的に縮めたり、フィーリングを良くしてシフト操作を素早くできるようにする物の事らしい。
ショートシフトっていう物もあるけど、ショートシフトの場合は、ゲート間の距離を実際に縮めている物やレバー比を変えてる物に限っての呼称になるから、広義的なクイックシフトって物には、フィーリングアップの物なども含まれてるって解釈が一般的らしい。
なんか、分かったような、分からないような、難しい説明だねぇ。
もっとかみ砕いた説明ってのは無いの?
「マイも、詳しく調べてみれば分かると思うけど~、これ以上やさしい説明って、出来ないよ~」
ところで、実際のモノを見て、柚月どう思う?
「恐らくだけど~、ショートシフト系なのかな~? なんか、確実にシフトストロークが短い感じがするんだよね~」
なるほど、優子の伯父さんって、兄貴たちの話を聞く限りは、こういうところに拘りそうな感じがするから、きっと、伯父さんが入れたものなんだろうね。
「私らで載せ替えた時も~、シフトレバーはそのままだったから~、恐らくそうだと思うよ~」
確かに、私らはエンジンは載せ替えたけど、ミッションは無事そうだったのと、ドナー車がATだったから、特に触らなかったんだよね。
「なんかさ~、優子の車のシフトを触っちゃうと、自分の車のやつが、妙に長くなったような錯覚に陥っちゃってさ~、困っちゃうよね~」
うーん、確かにそうだね。
自分の車が戻って来た来週は、ちょっと興醒めしちゃうんだろうなぁ……。
でもって、コレさ、どういう原理なの?
「バラして見たことが無いから、正確じゃないけど~、ストロークを縮めたものじゃないかな~」
どうも柚月曰く、ショートシフトにも2種類あって、H型になってるシフトゲートのストロークを縮めたタイプと、レバー比を変えて握りを短くする事で、ストロークを変えずにクイック感を出しているタイプに分かれるらしい。
「クイックシフトになると、レバー内のゴムブッシュの硬度を上げたり、ゲートのガッチリ感を強くして、遊びを少なくしたタイプも含まれるんだよね~」
そうなんだ。
そうする事によって、ミッション内部を痛めたりするリスクを回避できるんだって? なんで?
え? ゲートをショート化したり、レバー比を変えたりするタイプの中には、きちんとギアが入りきらなかったりするものも存在して、ミッションを壊すケースが結構あったのが、広義のクイックシフトが登場した背景だって?
なるほどね。
でも、今までは自分の車と家の車しかなかったから分からなかったけど、比較対象が出てくると、妙に自分の車が霞んで見えちゃう部分が出てくるなぁ……どうしよう?
妙に優子の車のシフトが羨ましく思えてきちゃったんだよねぇ……。
え? 言い出しっぺの結衣の作業はどうなったのかって?
何も言ってこないから、着々と作業は進んでるんじゃね? 結衣って、妙に秘密主義だからさ、こっちから訊かないと教えてくれなかったり、訊いても『秘密~』とか言って、教えてくれなかったりするんだよね。 マジ感じ悪いんだもん。
大体、洗濯や組み立ての工程もバッチリ見学してるんだから、自分で何とかしてくるつもりなんでしょ?
そもそも、リアを含めて本革シートに1人で交換してきたからね、結衣は。それを考えると、運転席だけのシート交換なんて余裕でしょ。
何か言ってくるまでは、基本スルーしておくのが、結衣と上手く付き合うコツなんだよ。
そんなある日、優子から車を来週まで交換して欲しいって言われて、今、交換してるんだ。
優子曰く、雪が降る前にどうしても1度、ターボ車の走りを味わってみたい、とかなんとか言うので、交換したんだよ。
スピード狂どもはすぐに『ターボじゃないとパワー不足で~』とか、『ノンターボは遅くて~』とか言うんだけどさ、別に決して遅い訳じゃないんだよね。
だって2000ccだよ、コレが遅いんだったら、これ以下の車はなんなの? 止まってるとでも言うのかな?
そんなこと言う奴らは、兄貴が前に乗ってたポルテにでも乗ってればいいんだよ。
兄貴曰く、あの車は『アクセルペダルの下に、コーヒーの空き缶入れて走ってるような遅さ』らしいよ。
兄貴って、一時、サーキット走行会荒らしって言って、近所の工場で営業車として使ってたアルトやミラの一番下のグレードを貰って乗ってた事があるけど、それよりも遅いって事みたいだよね、ポルテは。
そうそう、それで、優子のGTSはね、前に乗った時にも感じたけど、やっぱり私のタイプMとは、使ってる回転域を変えてやると、凄く楽しいんだよね。
タイプMはそこそこ飛ばすのであっても、4000回転あれば事足りるし、音の感じも5000回転辺りまでが一番揃ってるんだけど、このGTSはそこから上の域が一番楽しいんだよ。
5500回転を超えて7000回転くらいまで続く、ビートの効いた音がさ、スピードはそこそこでも、凄く“走ってる”って感じがしてさ。
柚月や優子は、音楽やってなかったから、興味持ってくれないんだけどさ、このビートの効いたビリビリした感じが、一番のエクスタシーなんだよ。
ターボのタイプMに、それが無いとは言わないよ。少なくとも同じ2000ccのターボであるシルビアよりはあるよ。でも、正直、ここまで突き抜けるような感じは無いんだよねぇ……やっぱり、この音とスピードのリニア感が、この車の魅力だよね。
ターボだとどうしても音とスピードに、リニア感が無くて、音が乗る前に、スピードが出すぎちゃってさ、どうにもその前にアクセルを抜かざるを得なくなっちゃうんだよ。
そうやって走らせてて、もう1つ気付いた事は、優子のGTSって、ギアチェンジの時にも、なんか分からないけど、凄く良い感じなんだよね。
こう、なんて言うんだろ“ゴクッ、ゴクッ”って感じに、ガチッとギアが入るっていうのかな? そんな感じで、節度感っていうのが正しいのかな? そういうのが結構あるんだよね。
「クイックシフターじゃないかな~?」
学校帰りにマックに寄ってその話をしたところ、柚月が言ったんだ。
なんか、優子先生は、最近学校が終わると、私の車に乗って山越えをしているのか、家のある方と正反対の方へと消えていっちゃってるから、今日は正解が分からないんだけどさ。
なんだい、その、くいっくしふたーってのは?
直訳するに、シフト操作を素早くするための装置みたいな意味かい?
「広義的には、それで良いかな~」
なんだよ柚月、柚月のくせに『広義的』なんて知的な言葉を使って、煙に巻こうってつもりか?
柚月は、小学4年生の夏休みの読書感想文で、インテリを気取って、大人の本を読んできてやるって言って、官能小説読んだ感想文書いてきて、柚月だけ、読書感想文の文集に掲載されなかったことがあるくせにさ。
「それは、どうでもいいだろ~!」
いやいや、良くないよ。
柚月という人間の真の姿を、世間にしっかり示しておかないと、こうやって、付け焼き刃のインテリっぽい言動に騙される人が出てくるかもしれないだろ?
「それで~、クイックシフトっていうのは~」
柚月、誤魔化そうとしてるね?
しかも、さっきはクイックシフターって言ってたのに、今度はクイックシフトって、呼称まで変わってるよ。
「いいの~! 呼び方は違っても同じ物なの~!」
まぁいいや、それで、そいつの説明とやらを聞こうじゃないか。
柚月の話によると、ギアチェンジをする際に、ゲート間の距離を物理的に縮めたり、フィーリングを良くしてシフト操作を素早くできるようにする物の事らしい。
ショートシフトっていう物もあるけど、ショートシフトの場合は、ゲート間の距離を実際に縮めている物やレバー比を変えてる物に限っての呼称になるから、広義的なクイックシフトって物には、フィーリングアップの物なども含まれてるって解釈が一般的らしい。
なんか、分かったような、分からないような、難しい説明だねぇ。
もっとかみ砕いた説明ってのは無いの?
「マイも、詳しく調べてみれば分かると思うけど~、これ以上やさしい説明って、出来ないよ~」
ところで、実際のモノを見て、柚月どう思う?
「恐らくだけど~、ショートシフト系なのかな~? なんか、確実にシフトストロークが短い感じがするんだよね~」
なるほど、優子の伯父さんって、兄貴たちの話を聞く限りは、こういうところに拘りそうな感じがするから、きっと、伯父さんが入れたものなんだろうね。
「私らで載せ替えた時も~、シフトレバーはそのままだったから~、恐らくそうだと思うよ~」
確かに、私らはエンジンは載せ替えたけど、ミッションは無事そうだったのと、ドナー車がATだったから、特に触らなかったんだよね。
「なんかさ~、優子の車のシフトを触っちゃうと、自分の車のやつが、妙に長くなったような錯覚に陥っちゃってさ~、困っちゃうよね~」
うーん、確かにそうだね。
自分の車が戻って来た来週は、ちょっと興醒めしちゃうんだろうなぁ……。
でもって、コレさ、どういう原理なの?
「バラして見たことが無いから、正確じゃないけど~、ストロークを縮めたものじゃないかな~」
どうも柚月曰く、ショートシフトにも2種類あって、H型になってるシフトゲートのストロークを縮めたタイプと、レバー比を変えて握りを短くする事で、ストロークを変えずにクイック感を出しているタイプに分かれるらしい。
「クイックシフトになると、レバー内のゴムブッシュの硬度を上げたり、ゲートのガッチリ感を強くして、遊びを少なくしたタイプも含まれるんだよね~」
そうなんだ。
そうする事によって、ミッション内部を痛めたりするリスクを回避できるんだって? なんで?
え? ゲートをショート化したり、レバー比を変えたりするタイプの中には、きちんとギアが入りきらなかったりするものも存在して、ミッションを壊すケースが結構あったのが、広義のクイックシフトが登場した背景だって?
なるほどね。
でも、今までは自分の車と家の車しかなかったから分からなかったけど、比較対象が出てくると、妙に自分の車が霞んで見えちゃう部分が出てくるなぁ……どうしよう?
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