女子高生が、納屋から発掘したR32に乗る話

エクシモ爺

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冬は総括

疑惑とダッシュボード浮き

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 私がHIDキットを見つけた事から始まったライトに関する一連の騒動から数日後、すっかり穏やかな日常へと戻りつつあった。
 そうなんだよ。今までが車、クルマと、車関連の事ばかり起こりすぎてたんだよ。
 一体どこの世界のJKの日常に、車関連の作業が目白押しなんてのがある訳よ。異常なんだよ私らの日常はさ。

 だから、こういう穏やかな日常には、紅茶でも飲みながら優雅な午後を過ごしたいもんだよね。
 ホラ、私って英国式のトラディショナルな淑女だからさ。

 「マイ、言ってて虚しくならない?」

 なんだよ優子。虚しいのは優子のその擦れた心だろ。
 どうして優子は、そういつもいつも言う事がおじさんみたいなんだよ、10代のうちからそんなに人生を達観してると、これからの人生に希望が持てなくなって、30歳になる頃、人生やり尽くした……とかなっちゃうよ。

 「それよりもさ、ユズの動きがおかしいと思わない?」

 おや? 優子先生、自分が墓穴を掘って追い込まれてるからって、話題をさりげなく変えてみたね?
 え? 元々この話のために私に声をかけたんだって?

 確かに、そう言われてみると、今日の柚月は妙にソワソワしてるというか、なんかいつもと様子が違うんだよね。
 なんか時間が空くと考え込んだりしちゃってさ。柚月が考え事なんて珍しいんだよね、ホラ、柚月は考えるよりも行動ってタイプだからさ。

 よし、ちょっと声をかけてみよう……って、先生来た。ちょっと今日、来るの早くないか?

◇◆◇◆◇

 放課後、私が帰り支度をしていると、背後から声をかけられた。

 「マイ~、ちょっといい~?」

 あれ、柚月だ。
 そうだ、さっき優子と柚月の話をしてたんだっけ、6限の数学の事でいっぱいになってて、すっかり忘れちゃったよ。
 え、なに?

 「ちょっと~、手伝って欲しい事があってさ~」

 なに手伝うの? 力のいる仕事なら結衣にでも頼んでよ、一昨日、部屋の模様替えしたら、肩が痛くなっちゃったんだからさ。

◇◆◇◆◇

 なんで、柚月の家まで行かなきゃならないの?
 まさか、また道場の模様替えとかだったら許さないからね。

 「ち、違うよ~。コレなんだよ~」

 柚月が手に持ってるのって、ちょっと大きめの注射器に見えるんだよね。
 柚月ったら、まさか

 私はそう思うと、拳をぎゅっと握って
 バカぁっっ!
 と叫ぶと、鉄拳で柚月を貫いた。

 柚月はうずくまった後で、よろめきながら叫んだ。

 「痛いなぁ……なにするんだよぉー!」

 それはこっちのセリフだよ、柚月!
 前は私の聞き間違いだったけど、今度はポンプなんて出してきて、遂に本格的なのに手を出したんだね。
 それでネタは何使ってるの! シャブなの? マリファナなの? まさか、コカインになんて手を出してるんじゃないよね。

 とにかく、最初に警察に行った方が良いのかな? その前におじさんとおばさんに報告してから、家族で話し合った方が良いよね。
 おばさーーん、柚月が大変な事しちゃったんだよーー!!

 「やめろー!」

 ええーい、柚月、放せ、放せえーー!

◇◆◇◆◇

 なにぃ? ダッシュボードの浮きを直したいだってぇ?
 それと柚月がクスリをキメてるのと、何の関係があるってんだよ。

 「クスリなんて、キメてない~!」
 
 じゃぁ、なんで柚月は注射器なんて持ち歩いてるんだよ、クスリをキメてる以外の合理的な説明があるって言うの?

 「接着剤を~注入するのに使うんだよ~!」

 なんか、白々しい説明だな。
 大体、接着剤をどこに注入するって言うのよ。

 ……でも、この注射器。使い古された感も、クスリの粉のついてる感じも無かったし、あの後、柚月のパンツまで脱がせて調べたけど、パケとかも出てこなかったし、ホントに作業に使うのかな?
 いや、でも警察24時とかで見るとパンツの中か、お財布の中か、車の中ってパターンが多いから、まだ油断できないよね。

 「マイ~、なにしてるんだよぉ~」

 アンタが、クスリを隠してないか調べてるんだよ。
 私は、コンソールボックスの中や、シートの下を探りながら言った。

 「そんなこと、してない~!」

 信用できるもんか!
 興味本位で始めたLSDから、本格的なクスリに移行するってケースはよくある事だって、テレビでも言ってたからね。
 あ、ドアについてる地図ポケットと、助手席シートの背面のマガジンポケットも怪しいぞ……それからサンバイザーの裏とかね。
 ……まさか、柚月ったら、私がやってたサンバイザーの加工をヒントにして、サンバイザーの中身を抜いてクスリと入れ替えたんじゃ……。

 「そんなこと、してないってば~!」

 ……う~ん、サンバイザーもぷにぷに押して調べてみたけど、クスリが入ってる様子はないし、あとはグローブボックスの中か。

 「そう~、そこが浮いてるんだよ~」

 うるさい柚月、アンタへの薬物疑惑が晴れた訳じゃないの!
 まずはキッチリ柚月の周辺を1つ1つ、心を鬼にして長谷川平蔵で調べていって、話はそれからだよ!

 ……中にはクスリ本体はもとより、パケも無かったねぇ。
 でもって車検証入れの中に入ってる取説や、整備記録簿を抜いてるかもしれないっ……て、2つともあるなぁ。
 いや、テレビの探偵ドラマで見た事あるけど、本の中身をくり抜いて、中に銃やクスリを隠してるってのもあるんだった。
 そうだ、柚月はミステリーチャンネル見てるはずだから、この手のトリックはお手の物だよね。

 「私は無実だ~!」

 うるさいよ柚月、あくまでアンタは現段階では容疑者なの。
 容疑者のくせに、ぎゃんぎゃん吠えてるんじゃないよ。

 ……一応、モノは出てこなかったねぇ。
 取り敢えず、現段階では、ブツの所在は確認できなかったという事で、じゃぁ柚月、帰っていいよ。

 「ちょっと待て~!」

 なんだよ柚月、疑わしい行動をした上に、疑惑は晴れた訳じゃないから、謝罪なんてしないよ……それとも、ブツを出して自首しようって気になったの?

 「そんな物、持ってない~!」

 まだ、必死に否定するなぁ。
 まぁ、追い込む要素もないし、今日のところはこれで……。

 「待てってば~!」

 なんだよ柚月、私は誘われてもクスリなんてやらないからね。

 「違うってば~!」

 大体、ダッシュボードなんてさ、床に固定されてるステーや、ボディ本体に留めてあるんだから、浮いてくるわけないじゃん。
 ホラ、見てみなよ。後ろの席から見てみても、左右対称だし、全く浮いてなんかないじゃんか!

 「違うよ~! 全体の話じゃなくて、表面の話をしてるんだよ~!」

 表面って、何の話だ。

 「ココだよ~!」

 柚月が指をさした先を見ると、それは助手席の正面、グローブボックスの上辺りのダッシュボードの表面が、水膨れのように膨れており、明らかに見慣れた私の車との違いとなっていた。

 試しに手で押してみると、手で押さえてる間は、元に戻るんだけど、手を放すとまたぷく~っと、膨らんできた。

 どうやらこれを直そうって話らしい。
 

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