女子高生が、納屋から発掘したR32に乗る話

エクシモ爺

文字の大きさ
285 / 296
冬は総括

ロールケーキとお尻

しおりを挟む
 「余計な動きって?」

 あやかんは、凄く食いついてきたよ。
 今のあやかんは、2つの動作をいっぺんにやっちゃってるんだよ。
 FFの場合、安定してるんだから、2つもアクションは要らないんだよ。
 だから、思い切って

 「思い切って?」

 逆ハンドル切るのをやめるんだよ。

 「ええーー! 無理だよ!」

 それじゃぁ、アクセル開度、そのままでいける? 私の経験上、そっちの方が難しく感じるけど。

 「ううっ……」

 FFの場合は、お尻が流れ始めたら、ハンドルはそのままでアクセルを戻してあげると、元の姿勢に戻るんだよ。
 原理で考えてみても分かるよ。ティッシュの箱を前から引っ張るのと、後ろから押してあげるのをイメージしてみれば、前から引っ張って、お尻が暴れても、強引に引っ張っちゃえば収まるでしょ。

 「確かに……」

 本能的に動いちゃうのは分かるんだけど、そこを押さえて理論で運転できるかが、冬道の基本なんだよ。

 「運転って、めんどいなぁ……」

 でも、これを乗り越えないと、あやかんはまた去年までと同じバス通学に逆戻りだよ。このまま一生バス通学だよ。

 「バス通学は、今年で終わりだろー!」

 いーや、分からないよ。
 あやかんがどこに進学するかは聞いてないけど、でもって、これが乗り越えられないあやかんは、次の進学先でも、またバス通学なんだよ。そして、また、デカい団地の次の停留所に当たってさ、朝バスに乗れない日々に逆戻りなんだよ。

 「綾香、かわいそ~」

 そうだね、燈梨。
 でも、その頃には私ら関係ないからさ、あやかんが1人困ってる姿を遠くで見守ってあげようよ……ぷぷぷっ。

 「なんでお前らは、私が困るの前提で話してるんだよ~」
 「あぁぁ、綾香、お気の毒だね~」

 さぁ、あやかん、一生バス通学になる前に、今日ここで頑張ろうよ。

 「お前ら、あとで覚えてろよ~」

 さて、あやかんも落ち着いたところで特訓再開だね。
 でも、原理が分かれば、あとは体を動かすのみだと思うよ。
 問題は、あやかんの身体が順応できるようになるかにかかってるんだよ。

 「難しいよ~」

 そうかな? 今はFFで運転覚えてから、FRの運転覚えるのが一般的だから、そっちの方が大変だと思うよ。
 だって、FFはただアクセル戻せば安定するのに、FRは更に2アクションいるからね。

 じゃぁ、早速走行開始だよ。
 そこで大きめにハンドルを切って、姿勢を崩してみよう。
 そう、そこだよあやかん! そこでハンドルは行きたい方向にしっかり切り込んで、アクセルを戻してやるんだ。
 そうすると、やがてお尻の感覚が真っ直ぐに戻ってくるから、そこでもう1回アクセルを踏んであげるんだ。

 「おおっ!!」

 ホラ、ちゃんと元に戻ったでしょ。
 これなら、やっていけるでしょ?

 「確かに、こうやって運転してやれば、お尻が流れても大丈夫なんだね」

 そうそう、基本はこれで大丈夫だよ。これならあやかんも、ほぼ大丈夫だね。

 「ほぼ?」

 そう、ほぼ。
 そして、これは最後の関門になるよ。
 どんな駆動方式のどんな車に乗っても、滑っちゃうときは滑っちゃうんだ。それを立て直す方法は、今もレクチャーしたんだけど、それでもダメな時って、あるんだよね。

 「そんなになったら、どうするんだよ!」

 あやかんはせっかちだなぁ、せっかちすぎると死ぬのも早くなっちゃうよ。
 それじゃぁ、これは行きつくところの話だから、駆動方式はあまり関係ないんだけど、立て直しがきかなくなった時は、発想の転換だよ。

 「発想の転換って?」

 ズバリ、スピンさせて止めるんだよ。

 「ええーーーー!?」

 あやかんはオーバーアクションだなぁ。
 でもって、これは基本だよ。
 立て直しがきかない時は、いかに被害を最小限で喰い止めるか、ここが重要になってくるんだよ。場合によっては壁や、他の車にぶつかって止める事だってアリなんだよ。

 「そうなのかぁ……」

 あやかんは深刻そうな顔して考え込んじゃったよ。
 どうして、あやかんはそういちいち深刻に考え込んじゃうんだよ。
 それを最小限に喰い止めるための特訓なんじゃないか。

 そして、私はこの訓練と言って思いつき、スターレットに3人で乗り換えた。

 「この車で、あそこ大丈夫なの?」
 「そうだよマイちゃん。これで真っ直ぐ走れるの?」

 あやかんと燈梨が次々に口にしたが、燈梨は自分の言葉を聞いて気付いたみたいだ。
 そうなんだよ燈梨、この車、真っ直ぐ走れないからこの訓練に使えるんだよ。

 「でも、どうやって進むの? さっきみたいじゃ、話にならないじゃん」

 燈梨、それには私なりの考えがあるんだよ。
 私は、コースの遥か手前の乾燥地点からスタートして、助走を充分付けた上でコースに突入した。
 予想通り、スターレットはそのままの勢いを維持して、コースを走り続けた。

 「やったぁ!」

 あやかんが歓声を上げた。
 私さ、ふと思ったんだけど、スターレットはスタート時に、物凄い駆動力が前輪に集中するからまともに走らないんだよ。
 だから、今みたいに乾燥してる地点があるなら、そこからスタートさせちゃえば、あとは普通に進むでしょ、スタート時みたいにタイヤで搔かなければ良いんだもん。

 そして、スピードが乗ったところで、アクセルをグッと踏み込んでみる。
 やっぱりだ! LSDが無いから、片方のタイヤが掻かなくなって、そっちに巻き込むようにスピンし始めた。
 でも、ここでアクセル抜いて立て直したら教習にならないから、敢えてアクセルは踏みっぱにして、スピンモードに突入するよ!

 「あああ~、あぶない~!」

 あやかん案外うるさいな、まるで柚月みたいだよ。
 私は、アクセルを抜くと、ロックするまでガツンとブレーキを踏んでリアタイヤをスライドさせると、今度はアクセルとブレーキを微妙なタッチでコントロールして、トン、トンと2アクションで見事にスピンしかかった円の中心に車を止めた。

 これが正しい止め方だよ。

 「凄い! マイちゃんの止め方、感動しちゃったよ!」

 そう? 燈梨にそう言われちゃうと私は嬉しいなぁ~、思わず抱きしめたくなっちゃうよ……って、抱きしめちゃお~、ぎゅうぅぅぅ。

 「あはははは……」

 あやかんも、今の軌跡を見て分かるように、最小限でしょ。
 走って来た方向を最外側に、ロールケーキみたいな軌跡で車を止めたんだよ。

 「おおーー!」

 これがベストな止め方だよ。
 いざ道路でこのラインを維持するのは難しいだろうけど、なるべくこれに近い軌跡で止まるんだ。
 ダメなのは、反対方向に巻き込んだり、外周が大きすぎる円を描くパターンね。

 「なんでダメなんだ?」

 あやかん、考えようよ。
 反対に巻き込んだら、対向車線に飛び出すだろー、それに、これ以上大きな円を描こうとすると、やっぱり対向車線にはみ出すし、それに、車線内に収まらなくて、崖から落ちちゃうよ。

 そうだよ、コツは、“絶対に、内側に巻き込んで止める”っていう、強い思いと、行き先をしっかりと目線で追う事。
 これは普段の走りにも言えるんだけど、行きたい方向を視線でしっかり追ってる人は、アクシデントがあった時も、なんとか上手く切り抜けられることが多いんだよ。
 科学的に実証されてる訳じゃないけどさ、それでも統計学的には言える事なんだよね。

 そして、巻き込んだ後は、アクセルとブレーキのコントロールで、とにかく内側へと向けていく動作をする事。
 怖いだろうけど踏みっぱなしはダメだよ。特にブレーキの踏みっぱは、タイヤがロックしてハンドルもブレーキも効かなくなる要因だからね。

 よし、分かったらやってみよう!
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

処理中です...