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七章(5)
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「……怪我は無い?」
そう言って美青年は手を差し出してきた。……近くで見ると、その顔の完璧さがさらに分かる。少し垂れている目は優しさが滲み出てる感じがするし、黄色……いや、この人だと金色と言った方が合っている……の瞳はキラキラと輝いて見えた。それに、スッと通った高い鼻、微笑んで美しく弧を描く唇。思わずぼーっと見惚れてしまって、少し遅れてから慌てて美青年の手をとった。
「あ、あの……魔物は……」
「ああ、全部ここに誘き寄せて一気に破壊したから大丈夫だよ。民家の被害を避けるために中央公園に集めたんだけど、君たちがいると思わなくてね……怖い思いをさせてしまったかな」
美青年は申し訳ない、と顔を少し悲しそうにした。そんな顔もまるで作り物のように完璧でかっこよくて、じっと見てしまうと、
「……す、ストップ!!ストーップ!!!」
ガイアが割り込んで来て、繋いでいた手を無理矢理離された。美青年はガイアを一瞬睨んだ……ように見えたが、今は少し悲しそうな表情をしている。
「……俺のリアに触るな!」
「ちょっとガイア兄様、初対面で失礼だよ」
「初対面じゃない!!」
ガイア兄様はこれまでに無いほど警戒している。……それに初対面じゃないって、昔この人と嫌な事でもあったのだろうか。
「実は君ともはじめましてじゃないんだよね、リア・ユークリウッド君」
ガイアを払い除けて話し出す美青年は、俺の側に跪き、俺は手をとられキスをされた。ガイアは「んなっ!?」と驚きで声をあげて固まっている。俺もびっくりして動けない。
「僕の名前はハイリヒ・ソール・エルデント。……この国の第1王子だよ。昔、ここで君に助けてもらった事があるんだ。……覚えていてくれてるかな?今こうして生きていられるのはあの時リア君が助けてくれたおかげだよ……あらためてお礼を言わせて。ありがとう」
そう言われて思い出した。彼は、俺が初めて治癒魔法を使ったあの時の……
「メッタ刺しにされてた子……!?」
俺が驚いてそんな事を言ってしまうと、美青年……ハイリヒは笑い始めた。公爵家の子だと思っていたので、王族だと知って驚いた。
「ふふふっ……!そんな覚え方されてるなんて……ひどいなあリア君!」
「えっ、あっ、ごめんなさい王子様……いや王太子様……?」
第1王子だしあんなに大量の魔物を一瞬で消したからただの王子じゃなくて王太子か……と思って「王太子様」と言うと、さっきみたいな悲しい顔をした。
「ハイリヒ・ソール・エルデントだよ。僕の名前は『王子様』でも『王太子様』でもない」
「じゃあ、エルデント様」
「王族みんなエルデントだよ」
にこにこにこにこ。笑顔の圧力。ハイリヒは「名前で呼んで」と言ってくるが、王族に対してそんな事はできない。なんだか恐れ多い。昔助けたと言っても、今回は俺達が助けられてしまったし。
「……は、ハイリヒ様」
「本当は『様』なんていらないんだけど……まあ良いや、これからもっと僕を知ってもらえばいいしね」
……なんだかとんでもない誤解をされている気がする……見た目はハイパープリティでも俺は男なのだ。第一王子は王様になるだろうし、いくら男でも妊娠できると言っても世間体的に言って妃は女だろう。こんなに好意を向けられても困る。
「あの、僕、男なんですけど……」
「? 知ってるよ?巷でも『麗しのユークリウッド家4兄弟』って噂になってるし」
そんな噂されているのか……ちょっと照れるな。っていや、そうじゃなくて。
「……あの……あからさまに好意を向けられても……僕は……えっと、その……」
「僕の気持ちに気づいてくれたのかい?それなら話は早い。リア君、君の事があの時助けてもらった時からずっと好きなんだ。……僕と結婚してほしい」
「え」
「は、はああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」
驚いている暇も無く、後ろからガイアの絶叫が聞こえてきて、それで現実に引き戻される。
「は、ちょっ、おま、お前えぇぇえ……!!!」
ガイアはハイリヒの胸ぐらを掴む。おいおいそいつ王子だぞやめろガイア。
「何かな?僕は正々堂々本人に伝えただけなんだけれど?……ねえ、16年間リア君に送った婚約願を無視し続けたガイア義兄様?」
「俺を義兄呼ばわりするな!!!」
ギャーギャー騒ぐガイアをするりと躱してハイリヒはまた俺の前に来る。こんな美形に言い寄られても困る。俺は金髪の美女と結婚するんじゃ!!!
「あの……」
おずおずと発言するレイヤ。
「ひとまず王城に戻りませんか?今騎士団長から連絡がきたんです」
レイヤの顔は真っ青だ。
「『魔王が復活した』……と……」
そう言って美青年は手を差し出してきた。……近くで見ると、その顔の完璧さがさらに分かる。少し垂れている目は優しさが滲み出てる感じがするし、黄色……いや、この人だと金色と言った方が合っている……の瞳はキラキラと輝いて見えた。それに、スッと通った高い鼻、微笑んで美しく弧を描く唇。思わずぼーっと見惚れてしまって、少し遅れてから慌てて美青年の手をとった。
「あ、あの……魔物は……」
「ああ、全部ここに誘き寄せて一気に破壊したから大丈夫だよ。民家の被害を避けるために中央公園に集めたんだけど、君たちがいると思わなくてね……怖い思いをさせてしまったかな」
美青年は申し訳ない、と顔を少し悲しそうにした。そんな顔もまるで作り物のように完璧でかっこよくて、じっと見てしまうと、
「……す、ストップ!!ストーップ!!!」
ガイアが割り込んで来て、繋いでいた手を無理矢理離された。美青年はガイアを一瞬睨んだ……ように見えたが、今は少し悲しそうな表情をしている。
「……俺のリアに触るな!」
「ちょっとガイア兄様、初対面で失礼だよ」
「初対面じゃない!!」
ガイア兄様はこれまでに無いほど警戒している。……それに初対面じゃないって、昔この人と嫌な事でもあったのだろうか。
「実は君ともはじめましてじゃないんだよね、リア・ユークリウッド君」
ガイアを払い除けて話し出す美青年は、俺の側に跪き、俺は手をとられキスをされた。ガイアは「んなっ!?」と驚きで声をあげて固まっている。俺もびっくりして動けない。
「僕の名前はハイリヒ・ソール・エルデント。……この国の第1王子だよ。昔、ここで君に助けてもらった事があるんだ。……覚えていてくれてるかな?今こうして生きていられるのはあの時リア君が助けてくれたおかげだよ……あらためてお礼を言わせて。ありがとう」
そう言われて思い出した。彼は、俺が初めて治癒魔法を使ったあの時の……
「メッタ刺しにされてた子……!?」
俺が驚いてそんな事を言ってしまうと、美青年……ハイリヒは笑い始めた。公爵家の子だと思っていたので、王族だと知って驚いた。
「ふふふっ……!そんな覚え方されてるなんて……ひどいなあリア君!」
「えっ、あっ、ごめんなさい王子様……いや王太子様……?」
第1王子だしあんなに大量の魔物を一瞬で消したからただの王子じゃなくて王太子か……と思って「王太子様」と言うと、さっきみたいな悲しい顔をした。
「ハイリヒ・ソール・エルデントだよ。僕の名前は『王子様』でも『王太子様』でもない」
「じゃあ、エルデント様」
「王族みんなエルデントだよ」
にこにこにこにこ。笑顔の圧力。ハイリヒは「名前で呼んで」と言ってくるが、王族に対してそんな事はできない。なんだか恐れ多い。昔助けたと言っても、今回は俺達が助けられてしまったし。
「……は、ハイリヒ様」
「本当は『様』なんていらないんだけど……まあ良いや、これからもっと僕を知ってもらえばいいしね」
……なんだかとんでもない誤解をされている気がする……見た目はハイパープリティでも俺は男なのだ。第一王子は王様になるだろうし、いくら男でも妊娠できると言っても世間体的に言って妃は女だろう。こんなに好意を向けられても困る。
「あの、僕、男なんですけど……」
「? 知ってるよ?巷でも『麗しのユークリウッド家4兄弟』って噂になってるし」
そんな噂されているのか……ちょっと照れるな。っていや、そうじゃなくて。
「……あの……あからさまに好意を向けられても……僕は……えっと、その……」
「僕の気持ちに気づいてくれたのかい?それなら話は早い。リア君、君の事があの時助けてもらった時からずっと好きなんだ。……僕と結婚してほしい」
「え」
「は、はああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」
驚いている暇も無く、後ろからガイアの絶叫が聞こえてきて、それで現実に引き戻される。
「は、ちょっ、おま、お前えぇぇえ……!!!」
ガイアはハイリヒの胸ぐらを掴む。おいおいそいつ王子だぞやめろガイア。
「何かな?僕は正々堂々本人に伝えただけなんだけれど?……ねえ、16年間リア君に送った婚約願を無視し続けたガイア義兄様?」
「俺を義兄呼ばわりするな!!!」
ギャーギャー騒ぐガイアをするりと躱してハイリヒはまた俺の前に来る。こんな美形に言い寄られても困る。俺は金髪の美女と結婚するんじゃ!!!
「あの……」
おずおずと発言するレイヤ。
「ひとまず王城に戻りませんか?今騎士団長から連絡がきたんです」
レイヤの顔は真っ青だ。
「『魔王が復活した』……と……」
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