2 / 16
第一章 発端
2
しおりを挟む二人が所属しているのは正式な部ではなく、テニス同好会というサークル的な団体だった。
正式な硬式テニス部とは違い、こちらは軟式である。
硬式の方は県大会で上位に食い込む成績を誇るだけあり、かなり指導は厳しい。
片や同好会の方は、特に成績に拘ることもなくのんびりと活動をしていた。
顧問自体が、美術部と兼任と言うありさまだ。
学校が部活動を奨励していることもあって、正式な部でなくとも同好会程度の団体も認められていた。
だから生徒の八割以上が、何らかの部や同好会、サークルに所属している。
運動が苦手な鈴がテニス同好会に入部したのには、この顧問の存在が大きかった。
柴神晃彦、花﨑台高校の美術教師で年齢は三十二歳。
この柴神は、鈴の母親の弟であった。
小さかった頃は母親がそう言うのを真似て、鈴も十五歳も上の叔父のことを〝晃ちゃん、晃ちゃん〟と呼んでいた。
東京の美大を出た晃彦は、教師として地元に戻って来たのだ。
学生の頃色々とあったらしく、美大を出たのは二十八歳の時だったという。
晃彦の子どもの頃の話題は良く聞かされたが、高校生以降教師となるまでの情報はまったく知らされていない。
親類の間でも、その事はタブーのような雰囲気があった。
とにかく晃彦は、二十八歳で故郷である花﨑台高校の美術教師となった。
なんでも学生の頃にテニスの経験があるということで、同好会の顧問を兼任させられているのだという。
鈴は当初美術部に入るつもりだったのだが、このままではテニス同好会が廃部になってしまうと叔父の晃彦に説得され、渋々入部させられてしまった。
部としての条件が部員六名以上という決まりがあり、鈴が入学した時には同好会には四名しか在籍している人間がいなかった。
新年度において、五月中にあと二名の入部者がいなければ廃部となるのが決定している。
活動するのは自由だが、学校からの活動費が一切支給されなくなってしまうのだ。
もちろん正式な部室もなくなり、やっと一面だけ使わせてもらっているコートの使用も出来なくなってしまう。
五月のゴールデンウィークが過ぎても、入部者はいなかった。
叔父から散々説得された鈴は、小学校の時からの親友である夕香を伴って入部し、同好会を存続させるのに貢献したのだった。
そういう経緯もあり、入部当初から二人は一年生であるにもかかわらず丁寧に扱われた。
同好会の救世主なのだから、当然と言えば当然だった。
その後、入部者が三名増えた。
そのすべてが男子であったため、憶測ではあるが鈴か夕香を目当てのミーハー追っかけ入部であると思われる。
新年度になり部員の数も総勢十六名にまで増え、廃部の危機は去った。
鈴はこのタイミングで、当初から入部したかった美術部への転部を考えていた。
しかし夏休み以降の三年生が抜けた後の部長就任を、新学期早々に現部長の高岡から打診されてしまったために、いまに至るまで言い出せずにいた。
会の中にもこの事は知れ渡り、いまや次期部長として新入生からも見られている。
鈴が辞めてしまえば、親友の夕香も一緒に辞めてしまうだろうし、二人の追っかけ部員であろう男子共も辞めかねない。
そうなれば、所属部員は一年生だけになってしまう。
増々辞め辛い状況になり、鈴は焦っていた。
言うのならば夏休み中に告げねばならないが、状況が状況なだけに決心がつかないでいた。
今年は部員が増えたこともあり、久々に夏合宿をする事が決まっている。
美術部と合同ではあるが、テニス同好会としては七年ぶりとなるらしい。
その夏休みが、梅雨明けと共に目の前に迫っていた。
0
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる