悪役令嬢(予想)に転生(みたいなもの)をした私のその後

ゆん

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69.トニトゥルス国編〔6〕

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「……そっか……ごめんなさい、フィーリアス」
「ううん。こっちこそごめんね。これだけは譲れないの……」

うぅっ! 歳下美少年にそんなウルウルしながら謝罪されたら、罪悪感が物凄ぉぉく胸を貫く……

「えっとね。今回フィーをわざわざ呼び出したのは、王家の魔法の事なんだ……実は、僕はフラーマが無い」

……っえ!?? 

あまりにもの衝撃の事実に、私は固まってしまった。
フラーマが無い、ということは、王族として魔法が行使できないということだ。

「ふふ。そんな顔しなくてもいいよ。ーーー僕はもう諦めているから。……僕は自分がフラーマを持たないからこそ、ずっと、魔法について密かに学んでいたんだ。トニトゥルス国の王家には、過去から受け継がれた色々な書物があるからね。知識として調べるだけでも楽しかったよ。それに、僕は2番目だから。兄上はちゃんとフラーマを有しているしね」

レェイはにこにこと笑いながら、あっけらかんと説明してくれる。

……でも……

王族として産まれたのにフラーマを持っていないって……

それは、どれだけ辛い事なんだろう……

レェイの心が分からずに、私はあっけらかんと話をするレェイをぼうっと見やった。

「……レェイは、本当に諦めているの? それがレェイの本心?」

私はついついレェイに聞いてしまっていた。

「……っ……! 僕の話はもういいよ。……ジルヴェール様の話をしないとね。僕は魔法が使えないけど、魔法について色々な書物を漁っていた。そこで、これはまだ誰も知らない事実だと思うんだけど……ジルヴェール様は、王位を兄上から奪ったのでしょう? 王家では、基本的に嫡子が後継になるはずだ。仮に嫡子がフラーマを有していなかったり、廃嫡されたりすれば嫡子以外が即位することもある。でも、ジルヴェール様のように、

「っどう言うことなの!?」

私はびっくりして、大きな声でレェイに問い詰めてしまった。

……ジルが即位したら、ジルは死んじゃうの……?

……なんで……

「継承権争いを行わない為に、王家は神々と盟約を交わしたはずだ。

「……でもっ! でも、ジルは……ジルは本当は王位継承権なんて欲しくなかったんだよ! 私が……私のせいで……」

私の頭はパニックになった。

……私が、私がジルに国王になって欲しいなんてお願いしたから……だから……

「っ! ジルヴェール様は、即位したくないの?」

何故かレェイが驚いたような顔をしている。

「……うん。ジルは王位継承権なんて欲しくないってずっと言ってた。トリスティン様、ジルのお兄様が即位すれば良いってずっと言ってたの。……私が……私が、ジルに即位して欲しかっただけなの……」

「……なんで、フィーリアスはジルヴェール様に即位して欲しかったの?」
「だって……ずっと、ずっとスペアの第二王子として隠れて暮らしていたジルが、本当は優秀なんだよって。国民に、この世界に知らせたかったんだもん……」

そう。全ては私のワガママだ。そのワガママがまさかこんな事になるなんて……

「……フィーリアスは……ジルヴェール様を認めて欲しいんだ……」

何故か昏い顔をしてレェイがそう呟いた。

「……フィーリアス。僕はもう少し調べてみようと思うんだ。だから、また明日もここに来て貰ってもいい? 一緒に書物を調べて欲しいんだ。何か回避の方法があるかも知れないし」

レェイは本当に心配してくれていたんだ! それなのに警戒して疑ってしまった自分が恥ずかしい……

「レェイありがとう! うん、まだハッキリ決まってないかも知れないしね! ジルは無理やり継承権を奪った訳じゃないしっ!」

私は気持ちが少し楽になった。まだハッキリしていない事をジルに報告するわけにもいかない。ジルはジルでトニトゥルス国の動向を探るし、私も私でレェイと魔法の歴史の勉強をして、ジルの命を救わないと!

「……フィーリアス達はずっと滞在する訳にはいかないでしょ? 時間が足りるかなぁ……明日、侍女達がいても調べられたらいいんだけど……」
「じゃあ、明日は私体調不良って事で早く寝室に下がって、なるべく早くここに来られる様にするね!」

どうせジルも体調不良の予定なのだ。私も体調不良って事にして、早めにこっちに来ればいい。

「フィーリアスは凄いね。どこでそんな考えするの?」

……なんか、ジルにも似た様なこと言われるけど、そんなに突拍子もない事じゃないと思う。

「……これ、もしかして魔法具?」

レェイがジルから貰ったアイリスクォーツのブレスレットを見て、尋ねて来た。

「うん? 魔法具? えっと、ジルが作ってくれたの」
「……凄い……それは失われた技術に近いものだよ。書物で読んだことはあるけど、実物を見たのは初めてだ……ジルヴェール様は独学でこれを?」
「……た、多分?」

えっ! これそんなに凄いものだったの? 確かに凄いお守りだけど!!
ジル様の高スペックに、改めて平伏す勢いだ。

「まぁ、とにかく、明日もよろしくね、フィーリアス」

レェイはにっこり笑って部屋から送り出してくれた。


♢♢♢


翌日、予定通りジルは調。私達3人はレェイにおもてなしされて、お茶会をしながらトニトゥルス国の木工細工品を見せてもらう。なんかカラクリ細工品もあって、すごく面白かった。

今晩のレェイとの調べ物の会のこともあって、私も体調不良を訴えて早めにお茶会から下がる。

「フィーリアス様、お加減は大丈夫ですか?」
「あ、あ、あの、ジルヴェール様にも連絡を入れておきますね」

……うぅぅ。エステラとマノンを騙しているのがめちゃ気が引けるよぉ~。でも、敵を欺くにはまずは味方からっ! ……ん? 使い方違うっ??

「ジルも忙しいだろうし、心配かけちゃダメだから言わなくていいからね」

……一応、マノンに釘は刺しておいた。まぁ。絶対報告するだろうけど……

ジルにはぜーーーったいにバレる訳にはいかないので、私は覚悟を決める。ジルのことが心配だしね、本当に……


「フィー、体調良くないって? 大丈夫?」

案の定、夕食を部屋で食べているとジルが寝室へとやってきた。
ジルが人払をしてくれる。

「うん。そんなに大したことないよ。やっぱり長旅で疲れが出たのかも。……それより、ジルの方こそ大丈夫?」

最後はコソコソとジルに話かける。ジルこそ体調不良のはずでしょう!? こっちに来ていいの!??

「うん。僕も体調不良だけど、愛する奥さんが体調不良なのに、黙って寝てるわけないでしょ。……一応、体調不良を押して来ている事にしているから」
「そっか、さすがジル様。ーーージルちゃんと食べてる?」

ジルの体調が心配になる。ジルは放っておくと無理するタイプだからね。

「……う。まぁ、病人がご飯を完食するのもおかしいからね……」

ほらね、やっぱり。ジルは私のことは過保護なのに、自分の事になると結構無頓着だ。

「ジル、こっちきて。はい、これ美味しいよ」

私はそれから、ジルにせっせとご飯を食べさせた。ジルは、私が口に運ぶご飯をとても美味しそうに食べてくれる。ジルが嬉しそうな顔をしてくれると私も嬉しくなる。
ジルと一緒に完食しちゃったけど、私の体調不良は大したことない設定だから大丈夫でしょう。

「そう言えば、ジルはどんな状況なの?」

私は若干コソコソしながらジルに聞く。この機会を利用して、情報交換をしないとね。

「……あまり状況は良くない……どうも、民の様子がおかしい。僕は明日も体調不良ということで部屋で休息する予定だから、フィーも無理しないように」

ジルがコソコソと耳元で囁いてくれる。

……耳元で喋られると、くすぐったくて笑いそうになるんだよね……

「私は、明日も多分レェイ様とお茶会になると思うよ。……グローム陛下とか、ラアド様を探った方がいい?」

私もお返しに耳元でコソコソと喋ってみる。

……ジルはくすぐったくないのかな……

「大丈夫、フィーは変な動きをしないでね」

ジルがまたお返しとばかりに、私の耳元で甘く囁く。
その囁きが甘すぎて、しかもくすぐったいし、私は顔が赤くなってしまった。
ジルを見るとちょっと微笑んでいるその顔から、わざとやっているのが分かった。

「……っ~~もう~ジル~っ!」
「ふふふ、ごめんごめん。フィーが可愛くって」

ジルは蕩けるような笑顔を向けると、私をいつものように優しく抱えてベッドに連れて行ってくれる。

「……フィー、愛してる……」

ベッドに私をそっと座らせると、私を抱きしめながらジルが耳元で囁く。

「……私も、愛してる……ジル……」


愛するジルの命を救わないとっ! 私の心はその想いに支配されていったーーー


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